作品タイトル不明
コメット⭐︎キングダムコンペ ジェットブーツの能力
夜、牢屋の中で私は呟く。
「レディ……セット!」
その言葉に私の両足が金属質なブーツに覆われる。
「ふむ、よっと!」
シャコンッという音と共に足の裏からローラーが飛び出した。
「やっぱり収納式にしたのは正解だったね」
コメットキングダムで手に入れた能力はもちろん、このローラーブレードだ。ローラー部分を収納式にしたので普通に歩くこともできる。
「そしてぇ……ゴー!」
スーッと体が前に進む。
ローラーが自動で回転して直立の姿勢から漕がずに進む事も可能なのだ。今は室内だからスピードは出していないが、本気を出せばもっとスピードも出せる。
しかし、自走式はエネルギーを消費する事にした。使わなければ回復するようにしている。
エネルギーを大量消費して少しの間、ジェットで浮くことも出来る。
よし、ジェットブーツと名付けよう。
「でも乗りこなすには少し練習が必要だね……」
だけどこれで機動力の確保には成功したんじゃないかな? 仮にまた追いかけられたとしても早々追いつかれる事はないでしょ。
「よし、散策ついでにブーツの練習をしよう」
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ただいま屋敷の散策中。
ジェットブーツの性能はというと
「悪くないね」
何よりあのペタペタ音のする足音がないのがいい。ローラーで進んでいるとはいえ静かなもんだ。
まぁ自走式はエネルギーを消費しちゃうから連続して使い続けることはできないんだけどね。
スキマからスキマに移動する位なら気軽に使える。
走るより断然速いしね。
日々の散策のお陰でこの屋敷の構造も何となく分かってきた。あの豚貴族は領主館とか言ってたか?
領主……つまり豚貴族の事だろうが、この領主館は豚貴族の住処兼領主の仕事場って所だろう。夜に出歩いている人間といえば執事とメイド、これは夜勤ということだろう。
あと最近は兵士が多くなった。これはたぶん領主館で豚貴族が襲われたからだろう。
「ちょっと動きにくい……殺されるくらい我慢しろよ豚貴族」
昼はあんまり出歩いてないから分からないけど、他にも事務員、この場合は文官かな? なんかもいるはずだ。
見つけた部屋に関しては、執務室っぽい所。これは複数あった。文官の仕事場だろうね。恐らく豚貴族の言っていたスパイもここに含まれるんじゃないかな?
あとは休憩室っぽいんだけど……ここはあんまり近づかない様にしている。夜勤の人間が休憩している事が多いからね。
下手をするとスキマから出られなくなっちゃう。
食堂と調理場。ここは私の憩いの場。あんまり人は来ないし食べ物もある。大学の食堂に似ている。領主館で二ヶ所見つけた。
よく分かんない豪華な部屋。たぶん……応接室。客人が来た時の話し合いをする場所だと思う。
その他にも洗濯場やリネン室なんかもあったけど面白いもんじゃなかったかな。
倉庫は面白かったよ。いい物が見つかったらスキマにぶち込んでる。
領主館の広さ自体は私の通っていた大学ぐらいかな。
何度か領主館以外の施設に通じる道を見つけたけど、手は出していない。まずは領主館を自由に動ける様にしたいからね。
「おっと、見回りの兵士だ」
スキマにヌルっと隠れてやり過ごす。二人組の兵士だ。本当に多いな。
「おい、知ってるか?」
「なんだ? 面白い話でもあるのか?」
「この領主館な……出るんだってよ……」
「はぁ? でるってまさか」
「そうそう、コレだよ」
兵士の一人はおどけた様にポーズをとる。
「はは、そりゃあ恐ろしい。こないだは第三被服工場の夜勤が老人の霊見たとか言ってたぜ」
「ははは、何処にでもある噂話だよな」
そんな噂話をしながら兵士は通り過ぎていった。
「あ〜、幽霊の噂ねぇ……人が集まる場所にはそう言った噂話が広がるのが常よね」
うん、そうだ。きっと噂だよ。
決して私のせいじゃない……よね?
「もういいかな?」
よっと、上手く隠れられたけどこう巡回が多いんじゃ大変だよ。
早いところ領主館をスキマで埋め尽くさなきゃね。
「前回は玄関ホールの近くまでスキマを設置したんだったね」
ちょっと遠いけどジェットブーツを使えばすぐだ。本当に役にたつ能力になってくれてうれしいよ。でも能力スロットが埋まっちゃった。スリットは外せないし、探偵ファーマルは言語理解で情報収集に必要。あとはジェットブーツ……と。
今はスーパー妖怪殲滅2は外してある。あれは妖球を作る能力だからね。暇な時にでも付け替えて生成しとけばいいでしょ。
「でもあと少しだと思うんだよねぇ……」
というのも、いままでゲームをプレイして私が能力を手に入れてきたお陰だろう。
私の【超越者】としての力が増す感覚があるんだ。ゲームの能力じゃない。大元の方ね。
ヤンキー神が扱える様になれと言っていた根本の力。
これが増えればセットできるゲームを増やす事もできる。
「出来るんだけどねえ」
ちょっと考え中。実は超越者の力が増えるなら試してみたい事があるんだよね。
領域の外に携帯ゲームを持ち出すことかできないかなってね。牢屋の中がヒマなんだよ。
「お、曲がり角発見! ブーツの練習に持ってこいだね!」
廊下をジェットブーツで走行中に曲がり角を見つけたので、体を内側に倒してドリフトをする。
無理に勢いよく押し付けたりしなければ床に傷は付かないから安心してほしい。
素晴らしいコーナーリングで曲がると、その勢いのまま壁を走る。コレはブーツの能力で、勢いがあれば少しの間だけ重力を無視できるからだ。ゲームでもこれくらいの壁を走ったりできたしね。
そのまま、壁を蹴って側転。再び床を走り出す。
ふむ、このブーツは扱いは難しいが、慣れれば慣れるほど複雑な動きができそうだね。
いいじゃない。しばらくはブーツでトリックを決める練習でもしようかな。
直線の廊下をジェットブーツで自走させる。
「楽ちん楽ちん」
もちろん自分で漕いでもいいんだけどね。こんな風に漕がずに自走させてもいい。
自走させるのは楽だよ。
まぁこの時の私は調子に乗っていたんだと思う……。
「あ、やべ……」
前方の廊下から二人の兵士が向かって来るのが見える。
「どうする? 今から隠れる?」
だが無情かな……ブーツは自走を進めていて兵士はみるみる近くまで来ていた。
「あぁ……ダメだこりゃ……」
こういうのは慌てて逃げるからいけないんだよ。なるべく刺激しない様に平静を保って何気ない表情で通り過ぎよう。
「……………………どーも…………」
体をなるべく動かさずに、なにか? と言いたけげな表情で横を通り過ぎてやった。
大丈夫だよね? 追って来てない?
「うっし! 乗り切った!」
ガン見されてたけど追ってはこない。
「「ぎゃああああああ!! 出たああああ!!」」
の、乗り切った!! 後ろから何も聞こえてない!!
ちょっと暗闇で体を動かさずに並行移動してただけだから!
聞こえてないったらない!!