軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ニコイチダンジョン

どーも私です。

ダンジョンでのアルバイトでボチボチ資金が潤沢になって参りました。

そろそろ此処を出て行っても構わないと思われるのですが、残念ながら外の様子が分からないので、雪の状況がどーなってるのか分かりません。

「ま、いつでも出ていけるんだからいいんだけどね」

「……そのうち上がどうなってるか確認すべき」

そだねぇ。

感覚的にまだ寒そうな感じはあるんだよね。

当初の目的だった豚貴族の情報も、イマイチ知ってそうなヤツがいねぇし……。

総ダン長なら知ってる可能性があるかも……とか思ってたけど、さすがにあの強面筋肉スーツに聞く勇気はねぇわ。

しかも『小悪魔』にいい印象を抱いていないどころか、名前を聞いただけでビリビリ空気を震わせるほど憎んでらっしゃる。

いや、私らが何をした! 別にこっちだってなりたくて勢力になってんちゃうわ!

なんつったけかな……そうだ勢力管理局とかいうヤツらに小悪魔って認可されたとか……。

「申請取り消しとかできねぇかな……」

「……ムリだろ……ほとんど犯罪歴」

んふふ、上手いこと言うね。資格なら消せるかもしれないけど、犯罪歴だったら消せないもんね。

ま、どちらにせよ様子見だわ。

そんな会話をする私は今、牢屋のソファーで仰向けになりながら、携帯ゲームをピコピコしてます。やっぱりゲームの携帯化は暇つぶしに最適だね!

幼女ちゃんは反対側のソファーでパイプ端末を弄っているね。彼女も牢屋生活を満喫しているようでなにより……。

携帯ゲームをプレイしながら牢屋の外にチラリと視線をやると、人工ダンジョンの皆様が話し合いをしておられる……お仕事お疲れ様です。

「キシシ……ようやく、視察が終わりましたね」

「オホホ、疲れましたわね……」

キツネ顔と高飛車女が、疲れた顔ながらも晴々とした表情で言う。

ふ〜ん、総ダン長の視察終わったんだ。まぁ無事に終わったとは言えんわな……空港での出来事が衝撃的だったし。

その後のことは牢屋に籠ってたから、私達には詳しく分からないけど総ダン長は帰ったらしい。

よしよし、私たちを恨んでいる総ダン長がいなくなったと言う情報は、私的にも朗報だね。

「これでようやく『戦争』の続きができますね」

「ええ、何の憂いもなく貴方の所と争えますわ」

二人のダン長の言葉に、会議室の空気がピンと張り詰める。

二人の後ろに控える幹部達も、交戦的な笑みを浮かべて相手幹部と視線を交わしていた。

『戦争』の始まり……楽しみかのように昂揚する二つのダンジョンは、まるで獣の舌なめずりを思わせる。

お互いがお互いを獲物だと認識する。

「キシシ、楽しみですねえ〜。ベアリングダンジョンを吸収するのは……」

キツネ顔が胡散臭い笑いで目を細め、近い将来に思いを馳せる。

「オホホ、そんな事を言って……自分のダンジョンがなくなったからと副ダン長の仕事をサボるのは無しですわよ?」

高飛車女が上から目線で勝つのは自分だと宣言する。

「キシシ、こちらの台詞です。貴女の判断力と、一瞬で構築を計算するセンスは何者にも変え難い……」

「オホホ、貴方の精密な構成技術はワタクシの下で活用するのが相応しいですわ……」

どうやら戦争の結果で、負けた方が吸収されるらしいね。そして勝った方は、負けた方を副ダン長にして自分の部下になる約束なんだね。

それで二つのダンジョンは争ってるワケか〜。

やる気満々って雰囲気だね〜。

いやぁ……ほんと……。

「キシシ!」

「オホホ!」

コイツら 滑稽(こっけい) でウケるわ。

「キヒヒッ……」

――――――――――――――――――――――――

「……」

「……」

長髪幼女の不安を掻き立てるような笑い声は、妙に耳に響いて会議室に溶け入る。

会議室が静寂に包まれる……。

全員の視線は、牢屋の中でダラリとソファーに寝転びなから静かに笑い声を上げた長髪の少女に向けられていた……。

「……なにが…………おかしいんですの?」

高飛車女……ベアリング班ダン長が眉間に皺を寄せて、ニヤニヤ笑う少女を睨む。

「おっと……」

長髪幼女は思わずと言った顔で、自分の口を片手で隠す。

そして口を押さえたまま視線をコチラに向けると、押さえきれないように目がニィイイと笑みの形に変わった。

「いえいえ、お話中失礼したッスねぇ。どうぞ続けてくださいな……」

「……」

「……」

イラつき……。

二人のダンジョンの 長(おさ) の心に芽生えたのは、明確なイラつきだった……。

少女のニヤニヤと馬鹿にするような声が、無性に腹立たしい。

自分たちの事を馬鹿にしたと感じたから?

自分たちのやっている事を無駄だと言われたようだから?

あるいは……『隠していた本心を見透かされた』と感じたから……。

「私も聞きたいですね……何か……面白いことがありましたか?」

ウルペース班ダン長は、いつもの胡散臭い顔を真顔にして長髪幼女に問いかける。

その言葉に長髪幼女の目はニュイ……と細められ、手の下の口が更に笑みを深めた事を知らせてきた。

……その顔に……少しだけ背筋が冷えた……。

でも、聞かずにはいられなかった。

本心を悟られたのか……不安になってしまったから。

「アヒャッ…………いぃえ〜誤解ですよぉ。ただの幼女の思い出し笑いじゃないですかぁ……ね?」

「……お答えなさい」

高飛車女が、痺れを切らしたように乱暴な口調で問い詰める。そこで後ろに控えていた幹部の一人が、高飛車女の肩を止めた。

「ダン長……子供の言う事です。落ち着いてください」

「……」

高飛車女は悔しげに唇を噛んでうつむいた。

長髪幼女の態度に怒りを感じているのはダン長の二人で、幹部はその様子に戸惑っているようにも見える。

「出来ればでいいです。何を感じたのか教えていただいても宜しいですか?」

キツネ顔は務めて冷静そうに幼女に問いかけた。

「…………ん〜〜、別に私……人工ダンジョンの皆様に恨みなんてないし、むしろ間借りさせてもらって感謝してるんですよぉ……そんな人工ダンジョンさんに失礼なこと言えないな〜って」

「構いません」

「そうですか? まぁ大家さんがそう仰るなら、仕方ないッスねぇ。お詫びにお答えしますわ…………アンタらさぁ。戦争してんだって?」

口を隠していた手が退けられる。

下からは予想していたように三日月の口が姿を現した……。

「二人とも……いや、幹部さんたち合わせて十二人か。全員がさ…………」

「『どっちが勝ってもいいと思ってるよねぇ?』」

「……」

再び静寂……ダン長の二人は嫌なものを見たように顔を歪めた。そして、幹部達は気まずそうに視線を床に落とす。

それは、幼女の言葉が当たっている事を知らしめた……。

「……違う、私たちは」

「そうですわ。ワタクシたちは……本気で――」

「ほぉ〜ん〜きぃ〜でぇ〜?」

長髪幼女はダン長の言葉を遮って、体をソファーから起こす。

「アンタらの関係アレに似てんだ。試合に出た事ないスポーツサークルのチームメイト。試合に出たことがないから不安なんだ。それを忘れる為に『お前の技術は凄いね』『いやいや、お前の技術も一級品だね』……褒めたんだからお前も褒めろって暗黙の了解の馴れ合い……」

「…………」

「本当は自信がないのを『胡散臭い仮面』と『高飛車な態度』で誤魔化してさぁ。でも自分は長に相応しくないって思ってるんだよなぁ?」

長髪幼女の例えはよく分からないが……馬鹿にされている事だけは分かった。

「……私達が 長(おさ) の器じゃないと言いたいのですか?」

「アヒャ! 知らねぇッスよ。私はダンジョンの専門家じゃないんだ。長の器なんて知りませんよ。でも……これは分かりますよ。器じゃないと思っているのは、アンタら自身だ」

ニヤニヤ笑う少女に……二人の長は顔を真っ青にしたあと、ギリギリと幼女を睨みつけた。それは少女の言葉が正解なことを物語っている。

隠していた本心、幹部たちにバレたくなかった真実……。

自分はダン長の 器(うつわ) じゃない……。

「……その辺で」

静寂を止めたのは一人の幹部、若造だ。

彼はダン長と牢屋の間に体を割り込んで、会話を止めようとする。

「んふふ、私はお世話になっている大家さんに言われたから、善意で思った事を伝えただけなんですけどねぇ」

「分かっています。だからその辺で……」

「そッスか。分かりました。なんで自信がないのかは知りませんけどね」

長髪幼女は肩をすくめて、またソファーに寝転ぶ。

「…………あぁ、そうか。オバケ姉ちゃんの言葉でわかった」

ボソリと呟いたのは白髪幼女の方だ。

白髪幼女は天井を見上げながら、ギョロリと目だけを向けてくる。

「……おまえら……もとは一つだな?」

「一つ? どーいうことだい幼女ちゃん」

「……コイツらのダンジョン……にてた」

「あぁ、ショッピングモールなスタッフルームのこと?」

「……うん。そして……」

そして白髪幼女はパイプ端末からダンジョンマップを浮かべる。

「……コイツらが争ってる緩衝地帯……滑らかすぎるんだよ」

確かにダンジョンを区切る線が他の場所と比べて直線に近かった。

「……元はコイツら、一つのダンジョンだったのを無理矢理二つに分けたんだ。だから一緒になることに抵抗がない」

「なるほどね。……似てるわけだ」

小悪魔二人の言葉に、全員が視線を逸らして苦い顔をした。

「その辺で……」

「オッケー。もう口を開かないので睨むのやめてね」

やがて、高飛車女が怒りを食いしばるように吐き捨てた。

「もういい! 気分が悪いわ! こんな牢屋がある所で話し合いなんて出来やしない!」

「そうですね。次からはお互いの本拠地から映像で話し合いましょう。私も不愉快だ」

そう言って会議室を出て行った。

「あらら、怒っちゃった。言えって言われたから言っただけなのにね〜」

「……言い方じゃない?」

――――――――――――――――――――――――

はぁ〜い、どーも私です。

人工ダンジョンの皆さんを不本意ながら怒らせちゃって五日が過ぎましたー!

怒らせても飯は運んでくれるから律儀だよねー!

ところでさぁ……

「……アンタらなんで居んの?」

「……」

「……」

ええっと、目の前にはキツネ顔と高飛車女の二人がいるんだよね。

「もう来ないんじゃなかったんスかねぇ? ……というかさ」

「……」

「……」

「なんで牢屋に入ってんの?」

う、うん。

なんかね。牢屋の隅っこで体育座りしてんだよねコイツら……。いやまぁなんとなく分かるんだけど。

「負けた負けた負けた負けた……」

「あの時と一緒だ……」

えと、なんか……負けてダンジョン乗っ取られたらしいよ、この二人。

んで、牢屋に入れられたらしい……。

「いや、同じ牢屋に入れんなよ。別で作れや……」

えー、本日より。

私のお家に二人の同居者が増えました……。