軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ショッピングモールなスタッフルーム

「「うぉおぉおぉおぉ!!」」

ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャ!!

馬鹿みてぇなスピードの板の上で、幼女二人がひたすら手漕ぎポンプがごとく交互にガッシャンガッシャン!

ただし湧き出るのは水じゃなくて、溢れる様に湧いてくるスピードだけどねー!

「はいぃ!! どぉおーーも私でぇええすッ!!」

「……ぬぅォォォオオオオ!!」

ガシャガシャガシャガシャ!!

「幼女ちゃーーん!! いま若造兄ちゃんいなかったーー!?」

「……いたぁあああ!! たぶんおいこしたーー!!」

あ、やっぱアレ若造だったか。ま、ええやろ!

平型トロッコの上でレバーシーソーを交互に漕ぐことで溜まるエネルギーを用いてスピードを増しております。

うむ! なかなかいい感じじゃない?

「はぁはぁ、幼女ちゃん! エネルギーが結構溜まったからそろそろ止めようか!」

「……はぁ……はぁ……わかった」

「モードチェンジ! 『箱形トロッコ』!」

平型トロッコが光り輝き、箱形の金属トロッコに変形する。

「ふぃ〜、疲れた。後は自走で十分だろ」

「……つかれた」

変形したミニチュアトロッコに座りながら私は息を整える。ふむ、中々の効率でエネルギーが溜まるじゃないか。

本来ならさっきみたいに漕ぎながら車体を走らせる方が効率いいみいだけど流石に疲れるわ。

急いで逃げたりする時は、走らせながら漕いだ方がスピード出そうだね。

もしかしたら車くらいのスピードは出てるんじゃない? と言うかこの車体の低さでスピード出すと結構怖いな。

「……面倒だけどスピードはけっこうでるね」

「でしょ? エネルギーが溜まればこんなふうに座ってるだけでいいしね」

それにこのライド遊具の能力はそれだけじゃないぜ。

「……ここは、なに入れるところ?」

そういって幼女ちゃんは、自分の前にある収納みたいな所をパカパカする。車のグローブボックスみたいな感じね。

「あ〜それねぇ……あまりやりたくないけど、お金」

「……かね? なんでよ……」

う〜ん、まぁね。

ぶっちゃけ、スピードに関する最終手段というか。

いざという時の保険だよ。ほれ、アーケード筐体といったらお金を直接ぶち込むじゃん。

だからそれを能力に組み込んだ。感覚的には課金かな。

● 制限 ライド遊具に現金を入れることで能力を一時的にバーストさせる。

この能力の奥の手とも呼べる最終手段だ。

お金を消費することで性能を爆発的に向上させることができる! ……まぁでも分かるよね。

「……つかいたくねぇ〜」

「いや、ホントね。一応付けたけど逃げたりとかマジでヤベェ時のエネルギー変わりだと思って……出来れば使わない方向で……」

お財布が塩漬けされたナメクジの如く溶けるからね!

付けたはいいものの、使わないに越した事はない。

けど、ゲームと相性のいい制限だし一応念のためね。

ちなみにぶち込む金額が多ければ多いほど性能は上がる……なんて恐ろしい機能を付けてしまったんだ私は……。

「ふぃ〜、到着! で……いいんスかね幼女ちゃん?」

「……ん、ここ」

長い長い直線通路の先に現れた厳重そうな扉。

その前で私と幼女ちゃんはトロッコを降りる。

「……まえはここで引き返した」

「と言うかキミ、よくここまで自分の足で来たね」

ライド遊具だから短時間で来れたけど、子供の足でここまで来て引き返すとかヤベェなこいつ……。立体マップの能力で大体の距離は分かってたけど、実際に移動すると結構な距離あったよ。

「ほれ、ライド遊具置き去りもどうかと思うから、幼女ちゃんが持ってて」

そう言って私はトロッコに手を当てる。

そして次の瞬間には、トップが車の鍵のような形のネックレスに早変わりだ。

「……ん」

幼女ちゃんは片手で受け取ると、首に巻いて服の中に押し込む。その際、彼女の付けていた別のネックレスが目に入った。

「うわ、何そのネックレス。趣味ワル!」

「……オメェが渡してきたネックレスだろ」

幼女ちゃんは顔を引き攣らせて『マジかコイツ』みたいな目で見てくる。

悪い悪い、軽い冗談じゃん。

幼女ちゃんが私のスキマに入るための『悪魔のネックレス』だね。

「似合ってるよ」

「……もしかしてケンカ売られた?」

幼女ちゃんは肩をすくめて厳重な扉に手を這わせる。

扉から歯車型の魔法陣が浮き出て、それを幼女ちゃんが解くとシュ……と扉が開いた。

ふむ、魔術施錠か……。一応このくらいなら私のスキマの能力でも通れるね。スキマは生成に時間掛かるから解いてもらった方が早いけど。

いざという時はスキマの方が逃げ隠れ出来るから、良し悪しだね。

その後は何枚かの魔術施錠扉を超える。

「厳重だこと。こういうの見ると、何か隠されてるのかってワクワクするよね」

「……いや、隠されてるのコッチ側だし」

「はは、そりゃそうだ。隠された側から開かれるって世話ねぇな」

「……よそのダンジョンに通じてるから硬く閉ざすのも仕方なし……それに『アレ』もあるしね」

アレ……あれね。

たぶん幼女ちゃんが言ってんの、会議室にあった扉から通じてた『玉』のことだよね? 結局あれ何なんだろうね。

たぶんダンジョンにとって大事なもんだろうけど。

三つ目の魔術施錠扉を超えた先にあったのは暗い通路。明らかに一般スタッフが入って来ないような施設の裏側といった通路だ。

そこをテクテクと進む、そしてその先にあったのは立ち入り禁止のテープが貼られた二本のポール。

私達はそれを潜って見渡した。

「ほむ、ショッピングモールの正面玄関って感じ?」

「……ぬ。けっこう広いな」

今は夜なせいか薄暗いけど見た目にはそんな感じ。

大理石のようなテカテカツルツルの床に、天井が高くて広い空間。エスカレーターがあって吹き抜けの広場から上階層の通路が見える。

まさに無人のショッピングモールだ。

ちなみに私達の出てきた立ち入り禁止通路は、目立たない脇にある感じ。なんかトイレの入り口みてぇだな……。

「なんつーか……結構オシャレね」

緩衝地帯しか見てなかったからそう感じるのかね。何と言うかこう、余裕があるって感じ?

機能全振りで見た目に拘らない緩衝地帯に比べて、明らかに『遊び』を感じる。

緩衝地帯が裏側でコッチが表側ってこと? いやいや、そもそもここはスタッフルームという裏側だろ。

「……なんか違和感。そもそもアレ……どっちの持ち物だ? なんで緩衝地帯にある?」

幼女ちゃんがボソリと呟く。

「ふぅむ、高飛車女側もこんな感じなのかね? こんどアッチも見てみたいね」

「……どちらにせよ先ずはコッチ。あっちはマップの情報が少ない」

そう言って幼女ちゃんは、パイプ端末から若造マップを浮かび上がらせる。そして、そのマップで自分たちの居場所を特定しているようだ。

「あ、もしかして高飛車女側のダンジョンって情報ない?」

「……うん、これをコピーしたのは若造のマップだから……むしろアイツが幹部だから緩衝地帯の通路とか記されてるんだと思う」

そりゃそうか、一般職員が 緩衝地帯(立ち入り禁止区域) のマップとか見れるワケねぇわな。それだと情報管理がガバガバ過ぎるわ。

まぁ何にせよ、今日のところはコッチだね。

「さぁ、探索しようか!」

「……むぃ!」