軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暖かい拠点

皆様こんにちは、どーも私です。

えー、三つ編みちゃん宅から華麗に飛び立ちましたる私なんですが――。

「うぇ〜ぃ! 引き上げるよ〜!」

今は雪積もる崖の下に垂らした縄をひたすら引き上げております……。

「……んせ、んせ」

引き上げる縄の先にいるのは、我らが白髪クソガキの幼女ちゃん。

私の垂らした縄をシャカシャカ元気に登ってきておりますね。

えーはい、なんでこんな事しているのかというと、簡単に言うと……まぁ迷ったよね!

「寒みぃなおい……」

いやね、三つ編みちゃん宅から出てこれからどーする? って話になったんだよ。

幼女ちゃんの意見としては『他区域に移動する』のがいいんじゃねって事らしい。理由としては言わずもがな、『町長亡霊デュラハン事件』で目立った私達が追われているからだね。

時間が経って落ち着いただろうけど、絶対ぇ探し回られてるから、いつまでもセッテ区域にいちゃマズいわな。

んで他の区域に逃げて、豚貴族の領地に関する情報を探すと……うむ、ちと厳しいかもしれんけど、これしか方法も無さそうよね?

そいで人目を避けて他区域に脱出する方法をさがしてたんだけどさぁ……。

「山ばっかやねん」

「……みわたすかぎり雪景色」

『人目を避けて』ってのが良くなかったね!

もともと三つ編みちゃん宅ってさ、自然豊かで家同士が離れてる 長閑(のどか) な高級住宅街だったわけよ。こう、金持ちが別荘建ててる感じのさぁ。

つまり森や山に囲まれてたのね。そんな場所から人目につかないよう進んだら、いつの間にか山に入ってたっぽい。

「ナチュラルに遭難したわ!」

「……おぼえた……遭難は気づいたときには手遅れ……」

雪が積もってるのも良くない……全部同じ景色だし目印になりそうな物も雪に埋もれてらぁ!

「うむ、何もねぇな……」

「……クソゲーのパズル」

あー、ミルクパズルってやつね。ははは、上手いこと言うね笑えねぇよ。五千ピースくらいのやつやらすぞ。

ま、高い位置から見渡せば何か見えんじゃね? って思って崖を登ってみたんだけど結果はご覧の通り……。

「ふぃ〜、一旦休憩ね。マミィ〜のシチューでも食うか」

「……うむ」

何はなくとも腹ごしらえ、こんな時は飯を喰うに限る。飯さえ食ってりゃなんとでもなるよ。

「……?」

「どした幼女ちゃん?」

とか思ってたら幼女ちゃんが不思議そうな顔をしてキョロキョロし始めた。

「……なんか……聞こえない?」

「うんぅ? 別に……いや、聞こえるね。なんの音だこれ?」

微かに聞こえる『キィィイン……』という音……。

そんな音が遠くの空から聞こえる。

あえて言うならジェット機が飛ぶような音なんだけど、どこを見渡しても飛行船なんて飛んでない。

そもそも、この世界の飛行船は割と静かだ。

「……あれ」

幼女ちゃんが目を細めると空に向けて指を指す。

そこには彗星のように青い光が遠くの空を飛んでいた……。

「なんだあれ? 横に飛ぶ隕石?」

音はドンドン大きくなる……。遠いのか近いのかもよくわからんけど飛行船みたいにデカいって感じでもねぇな……。

やがてその青い隕石は、ドンという空気を叩くような破裂音を鳴らして、その場で円を書くように一回転すると忽然と姿を消した。

「変なもんみたね……UFOみたいな消え方し――」

いつの間にか……

私達の目の前に『男』が立っていた……。

「……」

ポケットに両手をつっ込んで、ガラの悪そうな姿勢で景色を眺めていた。

寒い時期にも関わらず、ジャケットの両手は捲られていて包帯が巻かれている。けど怪我をしている訳ではなさそう。

そんな男は私達の存在に気づいてないのか、鋭い目で景色を見渡すと、まるでパーキングエリアで一息つくような感じで首を回した……。

「……あぁ?」

そこで初めて私達の姿が視界に入ったのか、不愉快そうに眉間にシワを寄せる。

「……」

幼女ちゃんの口が引き攣るのが分かった……。

まさかなんだけど、もしかしてこの包帯兄ちゃん……さっきの『青いUFO』だったりする?

え? 飛ぶのコイツ?

う、うん。だとすると、この『包帯ジェット機野郎』……関わっちゃいけない化け物じゃね?

思考はそこまでだった……。

「「ッ!!!!」」

遅れてきたようなドンッ! という空気を叩くような音と衝撃。バタバタと私達の服が激しく 靡(なび) いたかと思うと、崖下からか空からか……とにかくどの方向か分からないけど――。

「「うひょぉおあああぁぁぁ…………」」

私達は暴力的な突風によって、巻き上げられた雪と共に――

「おわぁーー!! 何だ何だナンダァ!!」

空に吹っ飛ばされた……。

――――――――――――――――――――――

猛吹雪の後の山。

今は止んでいるようだが、絶え間なく叩きつける雪が山の木々にも積もり、枝葉を重くしていた。

そんな重くなった枝が耐えきれなくなり、ドサドサと雪を落とす。

その落ちた雪は古い木の亀裂にも降り注ぎ『スキマ』を覆い隠した……。

「「にゅぅううぅん……」」

そして亀裂のあった近くから、『二人の幼女』がうつ伏せで積雪の前に放り出される。

「ぎゃあー! 寒い寒い寒い!」

「……オバケ姉ちゃん! はやく、はやく家を作って!」

「スキマ! スキマはどこだ! あークソ! スキマが無くなって放り出された!」

「……はよ作れ!」

二人の幼女は凍えながらワタワタと走り回る。

「一面雪景色! スキマがねぇよこんにゃろう!」

「……どうすんの!?」

「移動! 移動します! なんかこう隙間が多そうな場所に」

――――――――――――――――――――

腰まで埋まった雪を掻き分けてズリズリ移動。

ふと後ろを振り向けば、さして距離は進んでない模様……。雪山舐めてましたハイ。

全然進まんぞコレ……。

「うへぇ〜、どーすんべコレ」

「……とにかく進むしかない。さいわい雪は止んでる」

私と同じように雪を掻き分ける幼女ちゃんが、そう答える。それもそうね。それにしても――

「あの『包帯ジェット機野郎』……私達を吹っ飛ばしやがって、次にあったら文句言ってやるからな」

「……やめとけ」

考えるのはあの包帯の兄ちゃんのことだ。

幼女ちゃんは雪を掻き分けながらも、私の言葉に返答する。

「……あれヤバいぞ。たぶん私達を吹っ飛ばしたの……敵対の意思すらない」

「というと?」

「……そのままのいみ。あれは移動しただけ。飛んで来たんだよ……私達は包帯ジェット機野郎が着地した地点にたまたまいただけ……」

「そらヤバい……」

私達は遅れてきた風圧に吹っ飛ばされた虫って事か……。まぁ確かに敵対しない限り近寄らない方が身のためだね。

もっとも近寄ってきたのはあっちだけどな!

しかし、生身でジェット機みたいな速度で飛ぶ存在とか、化け物極まってんな。だから嫌なんだよこの世界の住人はよぉ!

人間なんだから飛ぶなよ! 当たり前のことすらできねぇのかボケが!

「ま、怪我しなかっただけマシかね」

不幸中の幸い、吹き飛ばされた時にセットしていた能力が良かった。私達は崖登りの直後で縄で繋がってたからバラけることもなかった。

そして【飛ぶ能力】で翼を出して幼女ちゃんを回収。他人を運べる性能じゃないから回収のみだったけど、追加で【ジェットブーツの能力】を使用して、ジェット噴射。

これで落下の勢いを弱めた。そして深く雪の積もった地面に落下と……。

うむ、無事で良かったは良かったんだけど、更に深い山の中に吹っ飛ばされた気がしないでもないね……。

「……」

そして後ろを振り返ればさして進んでいない状況ね。

「あーヤメだヤメ! やってられるかこんなもん」

「……どーすんの?」

私は領域畑を直径二メートルほどに小さく作成。

「はいギューとね!」

領域エネルギーを作成して周りの雪を退かす。

そして現れた地面に座り込んだ。

「はい休憩!」

「……これが出来るなら最初からやれよ」

「貴重なエネルギー使うんだって……」

領域エネルギーって貴重なのよ? ダンジョン作らなかったらマイナスにしかなんねぇし。

「……休憩はいいけど、このあとどーすんの?」

「あー……一応考えはあるから大丈夫よ、ほれ、雪玉作る能力あったでしょ? アレで移動しよう」

アレね。【吸着ボールを生み出す能力】のことね。あれに二人で入ってゴロゴロ転がしながら進めば問題ないっしょ!

もっともあと数時間は【私の領域】に入れないから付け替えできないんだけどね。だから休憩よ。

「ん? お……これは」

地面に座ってダランと足を伸ばしたら、最近感じた感覚が私に知らせてくる。そうか、領域畑を作ったからか……。

地面に目を向けると、幼女ちゃんに伝える。

「幼女ちゃん、下に人工ダンジョンあるよ」

「……」

幼女ちゃんは私の言葉を聞くやいなや、体から黒い霧を出して地面に潜り込ませる。

「…………あるね」

「でしょ? まぁだからなんやって話だけどね」

「……」

幼女ちゃんは、白目を黒く染めながら地面を見下ろす。

「……あっち」

そして、雪壁の一方向を指差した。

「あん? 何がッスか?」

「……あっちからダンジョンに入り込める」

「入り口があんの?」

なら雪の中進むよりいいか? いやでもモンスターとかいたらどーするよ?

「……いや、入り口じゃない」

そういって幼女ちゃんは雪を掘り始める。

う〜む、彼女にも何か考えがあんのかね?

まぁ、そう言うことなら少しくらい領域エネルギーを使ってもいいかな。

私は幼女ちゃんの言う方向に領域畑を伸ばして雪を退かし、二人が通れるくらいの通路を作る。そして二十メートルくらい進んだところで幼女ちゃんが立ち止まった。

「……ここだ」

ただの地面にしか見えないけど……。幼女ちゃんはそこで再び地面に黒い霧を潜らせ、天然コアを取り出す。

「なにしてんの?」

「……この間、 母(はは) ぁの人工ダンジョンを乗っ取った時に、少しだけ解析をして分かった事がある」

「ほぉん?」

「……人工ダンジョンを乗っ取るのは普通じゃ出来ない。ダンジョンのエネルギーが邪魔をする……」

やがて、幼女ちゃんの触れていた地面がブロック状にカチカチと移動する。

「……でも人工ダンジョンは『繋ぎ目』がある。たぶんダンジョンを拡張しようとすると元あった場所との繋ぎ目が発生しちゃうんだ」

やがて、そこには子供なら通れそうな小さな穴が出来ていた。

「……そしてその『繋ぎ目』は出来た時にヒビみたいに細かく広がる……繋ぎ目なら少しだけ干渉できるはず」

「その穴、人工ダンジョンに繋がってんの?」

「……うん、ここから入って張り巡らされた『繋ぎ目』を移動する」

「へぇ……雪山を歩くよか建設的だね。マミィ〜のダンジョンでも似たことできるの?」

「……いや、あそこは小さかったし、なによりあの女の作り方が上手かった。今でもあそこじゃ無理だね。でも雑に作られたここならできる」

そういって幼女ちゃんは穴の中に入っていった。

私も後を付いて穴に入る。お、あったけぇ! 風がないだけでもかなり過ごしやすいな!

幼女ちゃんはカチカチと地面をブロック状にして進む。後ろを見てみると、同じようにカチカチと通ってきた場所が塞がっていた。

ふむ、穴を開けたら広がりっぱなしってワケじゃなさそう……。

「 光滅玉(こうめつだま) 。行き止まりとかないよね?」

「……だいじょうぶ、繋ぎ目は何処かに繋がってるはずだから」

暗くなったので灯りを出して進む。

やがて斜め下に進んだ時点で光が差した……。

「「おわ!」」

そして私達は滑り台のように下に落下する。

「……いてて」

「あたた……無事に空間に出られたね」

床にドシャリと落ちた私達は、頭を振る。

「「「「「「「…………」」」」」」」

「あ、どーも……」

「……お、おじゃましてます」

そして、なんか会議室のような場所で、十人くらいの大人たちに無言で見られていた。

「……」

「…………どう言うことですか?」

やがてキツネ顔をした男が、目の前に座る高飛車そうな女に言う。

「…………こっちの台詞ですわね。そっちの関係者でしょう?」

「違いますが?」

「「……」」

やがて二人は、怪訝な顔のまま、ゆっくりと揃って私達に指を向けた。

「「……ID照合」」

『パイプ端末、該当なし』

「「……」」

二人の男女はスー……と大きく息を吸い込んで叫んだ。

「「く、曲者だー!!」」

そしてその場にいた大人に速攻で取り押さえられた私達は、その場で牢屋に入れられた。

「拠点ゲットだね!」

「……ぬ、助かる。雪山より断然マシ……」

「「なんだコイツら……」」