軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【Vertex】 バーテックス

どーも私です。

今回ついに私も携帯ゲームに手を出すことにしました。

初めに宣言しておきましょう。

この能力アップデートは……

「ただの『お遊び』ですわ……」

はい、つーことでね。

まぁ、ゲームを携帯化……つまり携帯ゲームにするって言っても大したことはないんだよ。

いつも『私の領域』内でやってるゲームを、外で出来るようにするだけ。

領域を持ち出してるワケじゃないから特に凄い効果もない。

「利点があるとしたら……二つかな?」

一つは、暇を潰せる事!

んふふ、それだけです……。そもそも豚貴族の領主館にて、牢屋の中が暇だったから考えてたバージョンアップだからね。

二つ目は……まぁ、これが実質一番の利点かな……。

『いつも通りゲームリソースが生み出せる』

はい、説明していくよ〜。

外でゲームが出来る。なるほどなるほど、単純な話だね。

今までに作った私の能力で、完全にお遊びに極振りした能力が幾つかある。

まずは

Sea frame シーフレーム

【水槽を表示する能力】

牢屋の中で暇だろう幼女ちゃんの為に作った、水族館の水槽を表示するだけの能力だ。

そのほかに

VRリズム剣豪

【踊る能力】

なんてのもある。運動不足の幼女ちゃんの為に作った能力だね。

……よく考えりゃ、あの子の為の能力多いね。まぁいいや、私も楽しんだし。

とにかく、これらのゲームはあらかじめ私が領域内でプレイしたゲームを、能力として外で遊べるようにしたものに過ぎない。

対して今回のアップデートであるゲームの携帯化は、領域内でやってることと変わらない。

だから外でゲームをしながら、能力を作る為のリソースを確保できるワケだね。

「まぁ、なんでも無制限にゲームが出来るってのも、無理がありそうだね……」

制限を付けるか……。

●持ち出せるゲームは一本のみ。

●付け替えは領域内で行う。外で付け替えはできない。

こんなもんかな?

領域内で予め携帯ゲーム化させといて、外でも出来るようにする……と。

正直言うと、本当に役に立たない能力だと思うよ。

でもいい暇つぶしにはなるからね。

アレだよユーザビリティ? 合ってるかはしらんけど……。

「んじゃさっそく! 何のゲームを携帯化するか、探して行きましょうかね!」

――――――――――――――――――――――

「……」

「……」

カチカチ……カチカチカチカチ……。

スキマの中で両手に持ったゲーム機をカチカチさせてる……どーも、私です。

いいね。

クッション引いてうつ伏せでゲームするってのもオツなもんよ。

「……」

「……」

そして、チラチラとコチラをうかがっている幼女ちゃん。お、なに? ……私のやってる事気になるかぁ〜い?

目の合った彼女にニィイイ……っと笑いかけると『うわ、めんどくさ……』って顔された。

カチカチ……チラ? カチカチ……チラ?

どや? 気になるやろ? 気になるやろ? ってやってたら、ため息吐いて口を開いた。

「……はぁ、なにやってるの? オバケ姉ちゃん……」

「あ〜バレちゃったか〜。しょうがないな〜。説明しちゃうぜ!」

「……チッ」

舌打ちよくない……。

「ゲームだよ!」

「……そぅ、がんばって」

「待て待て待て待て、最後まで聞け。パイプ端末弄りに戻るんじゃねぇよ」

「………………それで?」

よしよし、正座してよく聞けよ? オマエにも関係あるからな!

んじゃココからは、今回選んだゲームを紹介するか。

【Vertex】 バーテックス

「ジャンルとしては……『ストラテジー』だね」

「……ストラテジー?」

「簡単に言うと、戦略を立てて資源や物資をヤリクリしながら勝利を目指すゲームかな?」

「……わからん」

まぁ、ストラテジーって言っても幅広いからね。

アクションのように直感的な操作をするタイプのゲームじゃねぇから、口では説明し辛いんだよ。

「ほんじゃ、ホイッと」

私は手に持っていた携帯ゲームを消して、幼女ちゃんに見やすいよう大きなモニターを浮かべる。

うん、別に携帯ゲームだからって携帯型にしなくてもいいよ。要は外でゲームプレイするって能力だから。

画面には自分の拠点を示す 旗(フラッグ) があり、それを中心に色分けされた領地が広がっている。

「これがプレイヤーである私の『種族』の領地。これを広げて他の種族と競い、勝利を目指すゲームだね」

「…………ふむ」

面倒臭そうな表情から、興味を示し始めた幼女ちゃん。よしよし、何となくこういう画面ってワクワクするよね。

ストラテジーには代表的に、

RTS【リアルタイムストラテジー】

TBS【ターン制ストラテジー】

に大まかに分けられる。

前者(RTS)が、ドンドン時間と共に移り変わる戦況に対応するタイプ。タワーディフェンスなんかに多いかな?

対して、後者の(TBS)が行動順番なんかが決まっているタイプ。ボードゲームに近いかな?

時間を気にせずジックリと考えられるね。

【Vertex】 バーテックスはこっちのパターン。

オーソドックスなターン制ストラテジーである。戦略シミュレーションだ。

決められたターン数で、自分の種族を一位にする事が目的となっている。

「んでねぇ、このゲームなんだけど対戦プレイできんだよね」

「……いいじゃん」

よし掴んだ! ガッチリ彼女の興味を引けたようだ。

ちょっと不安だったんだよね。

年齢のわりに賢い幼女ちゃんだけど、ストラテジーは結構複雑な事が多いからね。

初めに興味を引けなけりゃやる気が継続しないのよ。

まぁ、この【Vertex】 バーテックスも例に漏れず複雑なゲームだ。しかも DLC(ダウンロードコンテンツ) を盛り盛りにしてるから複雑さ倍ドン!

「まぁ、分かりやすいチュートリアル完備だから、まず対戦の前に幼女ちゃんにはコッチをやってもらおうかな?」

そして画面を幼女ちゃんに向けてチュートリアルを起動すれば……彼女はコントローラーを握ったまま、ピクリとも動かなくなった。

「あれ? どうした幼女ちゃん?」

「…………………………わからん……」

「だからチュートリアルをね」

「……そうじゃなくて…………『文字』が読めない」

ん? …………ん?

「……」

「……」

しまった……。私がこの世界の文字を読めないように、幼女ちゃんが私の世界の文字を読めるワケねぇよ。

ストラテジーゲームで文字が読めないって致命的だわ。

「さて、今回はご縁が無かったと言う事で……」

私はモニターを両手で押し潰して、ポケットに仕舞うポーズを取ると、その手を幼女ちゃんにガッシリと掴まれた。

そして思っクソ恨めしい顔で睨んでくる。

「……ここにきてソレはねぇぜ」

「あ、やっぱり? しかたない、ちょっと外に出ようか」

私はため息を吐いて、スキマからクローゼットに出る。そしてクローゼットから飛び降りると、三つ編みちゃんの部屋の中央で腕を組んだ。

さて……文字が読めない。まぁぶっちゃけ言うと、何とかなるんだよね。

カラクリは領域畑による『ゲームリンク』と

『探偵ファーマルの事件簿〜ゼブラノーツの足跡〜』

【言語理解の能力】

これを活用する事。

言語理解の能力を領域畑でリンクさせることにより、一時的に領域畑内で翻訳する事ができる。

ただし……領域エネルギーをバッチリ消費するんだよね。

もともとただの遊びだぜ? そんなもんに貴重な領域エネルギーを消費したくねぇよ……。

んでもなぁ……。

幼女ちゃんをチラリと見てみれば、期待した目を向けてくる。言えねぇよなぁ〜。嫌だってさぁ……。

しゃあねぇ、実験と割り切るか。一本のゲームに限って能力を行使すれば消費はそんなにないだろ!

――――――――――――――――――――――

「つーことで、チュートリアルは終わったかい?」

「……うむ、だいたいは」

大体でいいよ。基本さえ分かれば後は実践みたいなゲームだから。もちろん私も大体だ! 分からんところはゲーム中に読めばいいんだよ。

【Vertex】は、そこんところ親切にできてる。

「よっしゃやんべ!」

「……覚悟しろ……絶滅させてやる」

いい度胸だ。まずは最小マップで小手調べ。

「っと、その前に……いい事思いついちゃった」

「……?」

ゲームリンクだよ。領域畑内に限定するけど、このVertexをゲームリンクすれば、視覚的に面白い事ができるね。

私は開いたクローゼットに飛び乗って、幼女ちゃんに笑いかける。

「幼女ちゃんは、そうだね……おねぇちゃんの机の上が領地だよ」

「……のればいいの?」

幼女ちゃんは、椅子から三つ編みちゃんの机に飛び乗る。私達は向かい合うようになった。

「じゃ行くぜぇ〜……ゲームリンク!」

部屋にVertexのフィールドが、ホログラムのように広がる。

そして、私の座るクローゼットに黒い 旗(フラッグ) がドンッとブッ刺さった。その旗には、長髪のシルエットにコウモリの羽の長髪幼女マーク。

続いて、幼女ちゃんの座る机に白い旗が刺さる。

その旗には白髪のシルエットに、手に玉をもった白髪幼女マークが描かれていた。

「……ふぉおおお!」

幼女ちゃん大興奮。

机から身を乗り出して、自分の領地である田畑を耕しているミニチュア農民を目を輝かせて見ている。

はっはっは、どや! 凄いやろ。

精巧に作られた大地や、そこに住まう生物たちが、常に動く。

もともとこのゲームは、こう言った細かい部分がよくできてるからね。言っちまえばVRみたいなもんだよ。

さぁいざ! 勝負!

そしてガチャリと開く部屋のドア……。

「「「………………」」」

ドサリと手に持ったカバンを落とす三つ編みちゃんの姿があった……。

「ついに……」

三つ編みちゃんは膝をついて天井を見上げると、疲れたような声で呟いた。

「私の部屋に……大地が広がっている……」

乾いた顔の三つ編みちゃんの顔には、表情がなかった。

ご、ごめん。ビックリさせたよね?

害はないから……ゲーム画面を床に設置してるだけだから……。

「あ〜うん、おねぇちゃんや……遊び終わったらお片付けするッスよ」

「オモチャじゃないんだから」

「……オモチャだよ」

「え? オモチャなの?」

せやで。

「そそそ、ただのゲームだよ。この部屋を一時的にゲーム盤に変えてるだけだから」

「なにその現象!? 私の部屋、取り返しのつかない空間になってない!?」

見せかけだけやから気にすんな。

そんな事よりさぁ……

「ゲーム始める前で良かったよ」

「え?」

混乱している三つ編みちゃんに、ニッコリと笑ってやる。

――――――――――――――――――――――

斯くして……

クローゼットを領地とする――長髪王国

机を領地とする――白髪皇国

ベッドを領地とする――三つ編み帝国が出揃った。

ベッドには三つ編みシルエットの青い旗がブッ刺さる。

「どーいう状況!?」

「あれ? チュートリアルは終わったッスよね?」

「終わったけど!?」

「飲み込み早いッスよぉ」

んじゃ始めるよ。

さて、まずこのゲームの初期に確認することは『種族特性』。今回はランダムで選んだ。私の種族は、ほほぅ『モグラ』か!

……いや『モグラ』ってなに!?

あ〜これ、ダウンロードコンテンツで追加された種族だな。

ええっと最初にもってるモグラの種族特性は……農地繁栄。なになに? 農作物の成長速度にプラスと道路整備に追加資源ね。

「内政タイプだなこりゃ……」

種族には最初に一つ種族特性というスキルが付いている。そして種族ツリーを解放していくワケだ。

スキルは領地で起こるイベントや、同盟国から貰ったりと様々な方法で入手できる。

「二人の種族はなにかな?」

幼女ちゃんは……アンドロメディア?

う〜む? 多分これもダウンロードコンテンツで追加された種族っぽいね。たぶん化学スキルに強い種族だろ。

三つ編みちゃんは……蛮族。

蛮族ねぇ……たぶんバリバリの交戦タイプ種族だな。

開示情報は不明。

種族スキルはプラスだったりマイナスだったりするから、勝利の為に知りたいんだけど。

スパイや取引で相手の情報を開示させないと分からないんだね。

「まずは斥候を使って周りを探索するか……」

私の操作するキャラクターが領地の外に向かい、不明だった場所が明らかになる。

お、近くに鉱山とエッセンシャルポイント発見。

エッセンシャルポイントは様々な施設のこと、今回は古代遺跡のようだ。古代遺跡は発掘することが出来るし観光資源にも有用。

よし、出だしは順調。

ここは押さえておきたいな。

ドンッと古代遺跡に長髪フラッグがブッ刺さり、私の領地を示す色に変わる。

「うわ、別の種族がいた!」

おっと、三つ編みちゃんが他の種族と接触したみたいだね。近くに別の種族が湧くとかツいてないね。

そしてドーンという音と共に表示させる全体サマリー。

『不明な種族が滅びました』

「……」

「……」

「……」

はい? 早くね?

マップが開示されてないから分からないけど、何処かで種族が滅んだらしい……。

見えないけどマップを何となく見渡したら、幼女ちゃんと目が合う。

そして二人して、三つ編みちゃんに視線をやれば、彼女は視線を逸らした。

「おねぇちゃん? もしかして……やった?」

「……あ〜あ」

「違うの。『オオカミ』の種族が私の領地に入り込んだの。だから滅ぼさなきゃ私が危なかったんだよ……」

おねぇちゃんマジ蛮族。

これ種族特性で交戦しないとマイナス掛かるスキル引いてんな……。近寄らんとこ。

「あ、接収した領地で農場ゲット……」

通常、攻め込んだ領地の住民は反発するんだけど……たぶん恐怖政治のスキル積んでんな……。

――――――――――――――――――――――

「種族特性が! 種族特性が私に戦えと言ってくるの!? しょうがないの!」

三つ編み帝国が止まらねぇ!!

どんどん他種族を滅ぼしてやってくる。

だけど快進撃もココまでだ!

「エレファント種族と同盟成立ッス! 来たら挟み撃ちだからな!」

「……バイオテロ……キサマの農場を遠距離攻撃」

私達だってただ指を咥えてたワケじゃない!

「うぅ、仕方ない。しばらくは内政に注力するよ」

ようやく三つ編み帝国の進撃が止まった。

武力だけで勝てると思うなよ。

――――――――――――――――――――――

そして最終的な結果は……

「負けたわ」

「……まけた」

「ボロボロだよ」

はい、勝利者なし……。

いや、正確にいうと『ガイノーズ』という種族の一人勝ちだった。

このガイノーズという種族。もちろんダウンロードコンテンツの種族だ。ただし、プレイヤーが選べない種族だ。

ある程度ゲームが進行すると現れる侵略者的種族で、かなりの強敵。

ドンドン削られる領地に、私達は一時同盟を結んでガイノーズに挑んだが……しょせん初心者の集まり。

滅ぼされて終わった。

「あ〜、ガイノーズ強すぎ! 途中から現れたのに文明三個分進んだ武器とか反則だろ!」

「……毒がきかない。かたい。むり」

「私の最強の兵士が」

結果は全滅だったけど。

ま、まぁ楽しかったんでないかい?

機会があれば別のゲームにしようかね。

次は協力プレイだね。

――――――――――――――――――――

白髪幼女は、スキマの中で横になりながら自分の手を開く。

そこには緑色の指輪。白髪幼女がチューニングして他者の意識を誘導する指輪……。

「……ふむ」

彼女は、その指輪を握りしめる。

そして軽く振った。

ーーリ……ンリ……ン…………リ……ン………………リ…………………………ン…………

鈴の様な音はかすれ、弱々しい音を辛うじて奏でる。

「………………ふむ」