軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

いんふぉめ〜しょん

「……ッ」

「……どうしたのオバケ姉ちゃん?」

「来た……かなぁ?」

「……パリピ? 霊媒師? ……それとも」

「うん」

私はモニターを浮かべて、侵入者にズームアップする。

三人組の男たちは、頑丈そうなお揃いのブーツを履いて、ポケットの多いジャケットを着込んでいる。一人は大きなリュックサックを背負っているが、中身はマトモに入って居ないのかペッタンコだ。

そして……全員が何かしらの武器を下げている。

ふふふ、今度こそ間違いないようだね。

「冒険者だよ」

やったー、本物の冒険者が来店してくれたぞー!

はいはい、いらっしゃーい!

よく来てくれましたねぇ〜。サービスしますよぉ〜シャッチョサーン!

お金がない?

なぁに、心配しないくても大丈夫! ウチは三千円ポッキリ! いやいや、心をポッキリ折ってくれるだけで満足しますからぁ〜。

え? 心ポッキリも嫌? 仕方がないなぁ〜。

リピートしてもらう為に赤字覚悟で、満足して帰ってもらおうかな!

「……顔がうるさい」

「だまれ白髪」

まぁ実際の話、心をポッキリ折るようなことしちゃったら、冒険者が寄り付かなくなっちゃうからしないけどね。

ふむふむ、どうやら目的があってゴーストタウンに来たってワケじゃなさそう?

家への帰り道とか? それとも、この土地の噂を知らない他所から来た冒険者なのかな。

そもそも、目的を持って来る場所じゃないんだよね、このゴーストタウン。

うん? リュックサック背負ってるヤツが渋い顔してるから、悪霊の噂を知らないってワケじゃないみたいだね。

あ〜なるほど……音声繋いで会話を盗み聞きして分かったけど、どうやら、コイツらダンジョンの帰りで、このゴーストタウンの反対側に拠点があるから、通り抜けをしようとしてんだね。

なんにせよ、冒険者が来てくれたことには変わりない。キミらをダンジョンのリピーター係に任命する!

「……今回はどーするの?」

お、気になっちゃう? そうだよね、今回は幼女ちゃんにも色々と手伝ってもらったからね。

でもね……

「何もしないよ」

「……」

ふふ、納得いかない顔してるね。

「勘違いしちゃダメっすよ。私たちが直接出向いて何かするんじゃないってこと。いいかい? これからダンジョンに冒険者をたくさん来てもらうつもりなんだけどさ」

「……うん」

「その度に、私たちが出張ってちゃ過労死しちゃうよ」

「…………たしかに」

そう、ダンジョンを作った理由の一つは、『自動化』がしやすいと思ったからだ。

「その為に幼女ちゃんには、色々とやってもらったんだよ」

「……あぁ、コレってそういう……」

そう言って幼女ちゃんはポケットから、一つの宝石を取り出す。

幼女ちゃんの持っている宝石は、この世界で『魔石』と言われる物だ。ダンジョンで敵を倒したり、宝箱に入ってたりする宝石で……いろんな物に使われているらしい。

「お、そろそろだね。観察してみようか」

――――――――――――――――――――――

「しかし、本当に人がいねえな」

「ああ、なんかこの街に住んでいた住民の一部が、突如狂っちまったって話だぜ」

「なんだそりゃ? 呪いでも蔓延したのか?」

前を歩く二人の冒険者が陽気に会話をしているが、後ろのリュックサックを担いだ男が、苦い顔で口を挟む。

「いや、呪いじゃなかった」

「あん? なんか知ってんのか?」

「専門家が機材で調べたらしいんだ。でも何も反応はなかった」

「じゃあ、たまたまだろ」

「違う、俺の知り合いも狂った一人だった。最初は女にフラれて気落ちしているだけだと思ってたんだ。でも実際に会いに行って考えが変わった」

「……何だったんだよ」

「狂い方が尋常じゃなかった。いきなり暴れ出したり、かと思ったら怯えだす……女にフラれたにしちゃ普通じゃない」

「……」

「この街で狂ったヤツらは、みんな同じ症状だそうだ。今では、ここに住むのは国で禁止されている」

「噂だろ?」

「そうそう、現に立ち入り禁止にもなってねえし」

「明確な原因が不明だから、立ち入り禁止に出来なかったという話だ」

「じゃあ何か? 悪霊の仕業とでも言いたいのか?」

「まさか、そこまでは言ってねえよ。でも何かあるとは思ってる」

「はは、そりゃ怖い」

さして信じてもいない声色で、寂れた街の角を曲がった男は、ピタリと足を止めた。

「……どうした?」

「……あぁ、もしかしたら悪霊の正体……分かったかもな」

「?」

立ち止まった男の視線の先には、ヒビの入った地面から、淡く光る魔法陣が浮き上がって居た。

「嘘だろ……こんな街中に、ダンジョンがあるってのか」

その魔法陣には三人とも見覚えがあった。

ダンジョンに入る為の転移陣と同じだ。

「珍しすぎんだろ……まさかダンジョン化かよ」

「良かったな悪霊の仕業じゃなくて。ダンジョン化にともなう異常現象だったようだぞ」

「別に悪霊なんて信じてたワケじゃねえよ」

「どうする? 国に報告するか?」

「面倒臭えけど、発見の報奨金も出るからな」

「するしかねえだろ」

「……ちょっと入ってみようぜ」

「お、いいね。手付かずのダンジョンとかロマンあるわ」

「……マジで言ってんのか」

「出来たばかりのダンジョンだろ? 大したコトねえよ。それに……ホラよ。この転移陣に強制力なんてねえよ」

剣を提げた冒険者は、魔法陣を足で突きながら笑う。

こちらの意思がなければ、そもそも転移すらされない安全性の高いものだ。

これが、コチラの意思を無視した転移陣なら凶悪だと判断できる。

リュックサックの男は、仕方がないとばかりに顔を振る。こうなってしまったら止まらないだろうなと。

「安心しろよ。少し様子をみたら帰るから」

そう言って、転移陣に起動の意思をみせると、魔法陣は光り輝く。

「……あんま変わった気がしねえな」

光が収まって目を開くが、辺りは変わった様子がない。依然と寂れた街が続いているだけだ。

「本当にダンジョンなのか?」

そんな疑問が口を出た瞬間、ピロンという音に三人が目を見合わせる。

そして、各々が持つ腕に巻いたパイプ端末に、示し合わせたように視線をやり、口を引き攣らせた。

「人工ダンジョン?」

「……いや、これは特殊ダンジョンだろ」

「特殊過ぎるだろ……」

パイプ端末には通知が来ていた。

そこには……

【いんふぉめ〜しょん】

【ようこそ、ここはダンジョンです】

――――――――――――――――――――

「おしおし、ちゃんと通知は行ったみたいだね」

私のダンジョンにおける、目玉のシステムだよ。

ほら、私のダンジョンには『条件の達成』システムあるじゃん。侵入者が指定した条件をクリアするコトで、感情エネルギーにボーナス入るやつ。

前回は、幼女幽霊が捕まらずに逃げろとか、宝石を集めて扉に嵌め込めとか指示してたんだけど、イチイチ説明するのは大変。

そこで考えたのがコレ!

この世界は、文明の未発達な世界じゃないんだ。

だからあるよね? スマホに似た機械の『パイプ端末』がさぁ。

私のダンジョンにおける説明不足を、パイプ端末を用いて『インフォメーション』をアプリとしてお届けするんだ。

イメージ的にはアレだよ。

スマホゲームの『お知らせ』

ゲームを起動したら出るでしょ?

でもさ、私ってこの世界の文字とか読めないワケよ。

一応【言語理解の能力】と領域畑をゲームリンクさせて、強制的に翻訳することは出来るけど……。

「かなり、感情エネルギーを持っていかれちゃう」

当たり前だよね。元々の能力の効率が悪いから、感情エネルギーで補っても効率が悪い。

だから……幼女ちゃんに頼ることにした。

幼女ちゃんに、こう言う『言葉』を頼むって丸投げすることで、その部分を節約したんだ。

そして幼女ちゃんが持っていた魔石に、彼女がプログラムしてインフォメーションを書き込んでもらったんだ。

そんなこと幼女ちゃんに出来るのかって話で言えば……出来る!

もともと、幼女ちゃんは魔力を見て解除することができるよね。でも、ソレって彼女の能力の一側面でしかない。

実際は、どんな機能なのか解析も出来るし、改変もできる。

言わば凄腕のプログラマーみたいなモンなんだ。

彼女自身に、魔術プログラムの知識はないんだけど、能力を使って結果だけを作り出すことは出来る……らしい。

「というか出来るかどうか聞いたら、出来るって言われた……」

なんか、自分のパイプ端末を解析してたんだってさ。

凄いね解の巫女。こいつ売ったらいくらになるんだろね!

まぁ、いいや。

私のやることは、幼女ちゃんの作ったインフォメーション魔石を感情エネルギーで無理矢理繋げて、侵入者のパイプ端末に届けるだけ。

ま、インフォメーションの中身は私が決めてんだけどね。

――――――――――――――――――――――

「おい、どうする? ダンジョンがパイプ端末に干渉してくるなんて聞いたことねえぞ」

「面白そうじゃねえか。許可してみようぜ」

「……正直、ダンジョンに意思がありすぎて不気味だぜ……」

パイプ端末に許可を出したところで、不都合があるとは思えない。それに、店などでも似たような事はある。

だが、それをダンジョンがやってくるのは聞いたことがない。

「なんか、ダンジョンのアプリが入ったな……」

「この項目は……地図?」

「歩いたところがマッピングされるのか。クソ! なんか気持ち悪いけど便利だ!」

ご丁寧に地図には、入り口のマークも記してある。

ダンジョン内で迷っても、容易に脱出出来ると言うことだ。

――――――――――――――――――――――

ダンジョンに冒険者を呼び込むにあたって、何を重視すべきかなぁと思って、負け犬に聞いたコトがあるんだよ。

ダンジョンに求めるコトって何? ってさあ。

そしたら一言、『安全性』だって。

なるほど、って思ったよね。

だからまず私は、マップを配布することにした。

マップを見れるゲームなんて、いっぱいやってきたからね。

許可の下りたパイプ端末を軸に、マップを開放していくシステムを送り込むことにしたんだ。

出入り口もマッピングされるから、安全性も伝えられるでしょ!

もっとも、私の能力に攻撃力なんてないから、危険なんて作れないんだけどね……。

――――――――――――――――――――――

「おい……流石に帰らねえか? マジでおかしいぞ、このダンジョン」

「何言ってんだよ。こんな面白いダンジョンねえだろ」

「そうだぜ。わざわざマッピングをパイプ端末がやってくれるんだぞ。バカ高いマッピングアプリを買わなくても済むんだ」

はしゃぐように歩みを進める仲間の後ろ姿に、リュックサックの冒険者はため息をはいて呟く。

「……なんか、不気味なんだよな。このダンジョン」