軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

子供には不可能なゲーム

どーも私です。

まったく動こうとしねぇ地蔵と化した幼女ちゃんを何とかするために、ゲーム探しをする事にしました。

「まあ気持ちは分かる」

動かないって言うよりは、安全地帯から無理に動いてハリウッドメガネに捕捉されるのを恐れてるんだろうね。

動く必要がねぇなら動かないでジッとしているのが賢い。少なくとも、もう少し距離を稼がない限り安息の日々は遠いからね。リスクは少ない方がいい。

逃亡者としては好感が持てる程の警戒心だ。私としても幼女ちゃんの心構えがシッカリしているのは助かる。

彼女は優先順位を正しく理解しているんだ。えらいね!

現状に嘆くだけでピーピー泣いてる子供だったら、私は諦めて別の、それこそもっと消極的で私にとって不都合な行動をとっていただろう。

「……子供の思考としてはどうかと思うけどさ」

まぁ、こんな子供に残酷ともいえる状況を割り切っている幼女ちゃんに、私からのプレゼントだ。

「子供の運動ってのは、遊ぶ事だろうからなぁ!」

覚悟しな! 楽しく運動させてやるわ!

今回やろうとしているゲームのジャンルは、何となくだが目星が付いている。ゲームセンターとかで見た事あるだろ?

「『音ゲー』だよ」

ふふ、ゲーセンで踊ったり叩いたりしてるヤツだね。

いい運動になりそうじゃろ?

音ゲー、もしくはリズムゲーと呼ばれるジャンルだね。

今回は遊びに特化した能力になるだろう。水族館の水槽を映し出すシーフレームと同じで、能力としてのリソースは安くなるはずだ。

「ほんじゃ早速、ゲーセンの筐体から当たってみるかね」

ほぅほぅふむふむ、どうやらゲーセンの筐体としては楽器演奏の音ゲーが主流みたいだね。

「試しにどれか一個プレイしてみるか……まずわぁ〜コレ!」

にゅい〜ん……と地面から音ゲーの機械が生えてくる。せっかくだから領域内もゲーセンぽくしようか。こういうのは雰囲気が大事よ。

『ラッパーラッパーAC』

「……なるほど?」

なにが、なるほどなのかと言われても……うん。ラッパだわ。モニターの付いた筐体の前からコードが伸びていて粗末なラッパに繋がってる。

「え〜っと、流れてくる記号に合わせて、三つあるラッパのボタンを押す訳か……」

え? ボタンって三つしかないの? ラッパが出せる音って三音だけ? んな事あるかよっ! 本物のラッパなんてよく見たことねぇけど!

いや……まぁ、ゲームだし……。簡略化されてんだろうね。本物みたいに複雑な操作だったらゲームやってねぇで本物やれやって話だし。

あくまでラッパを吹いてるって気分にさせる音ゲーってことなんだろ。実際に口をつけて吹くわけでもないし。

んでやってみた結果……

「……地味」

うん地味。

結局のところ、操作はボタン三つとラッパの先端をクイッと上げる操作だけ……。

分かってる……分かってるよ。音ゲーであんまり複雑にしても仕方ないってさ。でもさ……爽快感やラッパを演奏している感覚がないんだよ。

「妙に選曲がラップ曲に偏ってるのもなぁ……」

ラッパとの相性が良くない気がする……。

あ、これラッパとラップを掛けてんのか。それでラッパーなのね。

「ダジャレのために選曲の幅狭めてどーすんだよ……」

まぁ評価としては……『惜しい』かな。厄介な事に全く面白くないこともない。もっとラッパ吹いてる気分にさせてくれたらよかった。

「よく考えたらあんまり体を動かさないゲームだねコレ……」

本質を見失っちゃいかんよな。

次のゲーム行きましょ。

『タンバリズム』

ほほぅ! タンバリンの音ゲーか!

操作としては、『タンバリンを叩く』『タンバリンを振る』の二種類。単純だね。

そしてこのゲームの売りは、プレイしながら自分の姿が見えること。モニターには、備え付けのカメラにより私の姿が映っていてる。そしてモニター内の私に向かってリズムバーが向かってくるので、そこにタンバリンを向かわせてアクション。

そうする事によりあたかも踊りながらタンバリンを叩いているかのような爽快感が得られる。

いいじゃんいいじゃん。面白れぇよ!

これは早くも当たりを引いたか? いやいや、まだあるはずだ。探してみよう。

『スライディングandステップ』

お、今度は足を使っての音ゲーか。

正面モニターとは別に、足元のステージにもモニターが設置してある。光ってる足元のモニターを、ポイントごとにタイミングよく踏む感じね。

そしてこのゲームは、『踏む』だけじゃなくて『なぞる』というアクションも加わる。床のモニターに光の線が表示されたら、踏んで線に沿って足でなぞるんだ。

よっしゃ! これも面白そうじゃん!

とりあえずやってみよ!

「ゼェハァ……ゼェハァ…… ゴホゴホッ!! 」

ひ、ひぇ〜……。し、死ぬ……。

なんちゅう運動量だ……。

五分後、私は筐体の前で仰向けになり息をするだけの死体と化していた……。

キツイ……これはカナリきついぞ。

もともと運動量の多いゲームなのは分かる。だが、それとは別に……。

「小さい体じゃ間に合わねーよ……」

ステップする場所に移動するには、大人の体なら一歩でも、子供の体じゃ走って移動しないといけない。そして次のポイントが遠かったら再びダッシュ。なにこの高速シャトルラン……。

このゲーム……子供がやることまったく想定してねぇな……。

ゲーム自体はよく出来てて面白い。

だけど、どーしようもなく子供には厳しいゲームだわ。

「……」

一歩も動く気になれず、視線だけで正面モニターをみると、スコアは散々なものだ。

「……ゲーム筐体を小さくするかぁ」

それならハンデなしだ。

いや、仕方ねぇよ。無理だもん。子供の身体じゃ届かねーんだからよぉ。別に私の身体能力が悪いって訳じゃないよ。年相応のはずだ。

この世界基準じゃ怪しいけどな。だって幼女ちゃん、私より足が速かったし。

「う〜ん……」

筐体を小さくする……かぁ。別に良いんだけど……

「ちょっと癪だよね」

大人用に作られたゲーム機。

子供だけでは乗れない船。

子供には届かない扉……。

大人ならオトナなら子供だからコドモだから?

子供は何も出来ないんだから、大人しくオトナに付いてなさいってさ。

「ハハ、ウケる」

親から引き離したのはオトナだろうがよ……。

普段ならこんな事思わない。

ただ……少しだけ、このゲームで幼女ちゃんの事を考えてたのがいけなかったのかもしれない。

子供だから諦めて白旗を振る。

それが小さい体で精一杯、生き抜こうとしている幼女ちゃんに対して失礼な気がした。

「ま、それとゲームとは関係無いんだけどね。ハハハ……」

笑いながら深呼吸をひとつ。そして瞳を閉じた。

私は仰向けのまま、両足を軽く上げる。

「レディ……セット……」

シャコンという音と共に、私の両足がメタルで金属質な物で覆われジェットブーツが起動する。

「ミュージックスタートッ!」

ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ!

筐体が起動して体全体に響くような重低音のイントロが始まる。

シュイーーーーンと両足のジェットブーツが空回りを始める。

私は目を瞑ったまま動かない。

そしてイントロの終わりに差し掛かり、目をカッ! と見開いた。

片方のカカトを軽く床でコンッと小突けば、回転の反動が凄まじい勢いで下半身に掛かる。車にでも撥ねられたかのような動きで足が天へと跳ね飛ばされた。

ブレイクダンスのような動きで上空に投げ出された私は、頭を下に、足は回転の勢いで竹とんぼのように舞いあがる。

そして体を捻った私は、空中で上下を入れ替え片足で着地した。

ズンッ! 着地と同時に光る足元。

そのままキュルキュルとジェットブーツが回転し、片足をあげたまま、私は目にも止まらぬ速さで移動した。

上げたままの足を振り下ろせば、ズンッという音と光る足元。

私の運動能力は子供らしく、この世界では低い。

ただし、それはジェットブーツを使わなかった場合だ。

ジェットブーツを使用した状態の私は、スピードだけならこの世界の一般人を凌駕する。

立っている足元から弧を描くような光の線が描かれる。その線に沿ってジェットブーツを走らせれば、キラキラというエフェクトと音で成功した事を知らせてきた。

後方の床に次のポイントが現れる。

大人なら足を一歩、大きく伸ばせば届く距離のポイントに対して私は、ジェットブーツと床の摩擦を利用して宙返りのトリックを決める。

ズンッ!! 着地と同時に輝くポイント。

曲が進むにつれ、テンポとステップが複雑さを増す。

足を起点に円を描く輪っかの光が床に描かれる。

大人なら、軸足を起点にコンパスのように円を描く動きをするのだろう。

それを私は床に片手を付き、全身を伸ばす事で届かせる。そして片手を軸に光の円に沿ってジェットブーツを走らせた。

ギャリギャリと回転した私はそのまま、逆立ちをしてプロペラのように足を開き次のポイントへ着地。

ジュリリリン! と煩いくらいのクリア演出。

曲も大詰め。

床に五芒星の光が映し出される。

高速で滑り抜ける私は、最後に筐体の柱を蹴り上げクルクルと宙を舞い

ズンッ!

……五芒星の中央に着地した。

そしてニィイイと馬鹿にするように嘲笑う。

「……perfect」

筐体が紙吹雪や花火のエフェクトで完全クリアを伝えてくる。

この世界だろうが前の世界だろうが同じ考えだ。子供だから出来ない。子供は守られるしかない。子供は弱い。

グダグダ喧しいんだよ……。

「はっ! ガキを舐めんな世界!!」

私たちを完全に潰してからほざいてろ。