軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

世界の壁を壊しました。ヤンキーに怒られてます。

ピーマンを半分に切って中のワタを取る。切ったピーマンの内側に付いてるタネと薄い膜。よく分からんこの部分をひたすらに指で取っていく。栄養が豊富らしいが肉詰めには邪魔だ。何個も何個もピーマンのワタを取っていく。

……はて、私はなんでこんな事しているんだっけ?ふとそんな疑問が頭によぎった時だった。

「テメェ……随分とふざけたマネしてくれたじゃねぇか……。どう落とし前つけてくれる」

なんか金髪ロン毛ヤンキーに胸ぐら掴まれてるんですけど……。

「ほぎゃー!! なんですか! ちょ、離して下さいよ。てゆーかここ何処っすか!?」

「うるせぇ!黙れ!消滅させんぞ!」

ガンつけてくるヤンキーこぇぇ……。挨拶感覚で殺害予告ですよ。てかこのヤンキーなんでこんなにブチギレてんの? 肩でもぶつけちゃったかな? ヤンキーのデリケートな肩が折れちゃいましたか?

と、示談から慰謝料請求の流れまで想像したところで辺りの異変に気づいた。

「なに……ここ……」

真っ白な部屋だった。胸ぐらを掴んでビキッとか効果音の鳴らしてそうな表情のヤンキー。そして周りは白い空間。あ〜うん。よく分からんけど普通じゃないわ。

「えーっと……」

「ふん、ようやく正気を取り戻したかよ」

そう言ってつまらなさそうにヤンキーは私を白い床に放り投げた。

「おいテメェ。状況分かってるか? ……いや分かってる訳ねぇか」

面倒くさそうに髪をかき上げるヤンキー。しかしすげぇイケメンだなこのヤンキー。ヤンキーの様子を見るに、このヤンキーは私と違ってこの状況を理解しているらしい。改めて辺りを見渡してみるが、やっぱり白い。白くてわりと大きな空間だ。

「まさかここは!」

なるほど漫画でよくあるパターンだ。

私の閃きに驚きの表情を見せるヤンキー。

「分かるのか?」

「デスゲーム中っすね!」

「ちげーわ! なんだその発想!」

「この空間から脱出できるのは一人だけ! そう、殺し合いをして生き残ったほうが!」

「……別に俺はそれでもいいんだぞ?」

「すんません。冗談す。説明お願いします」

ヤンキーこぇ〜よ。

なんかこのヤンキー、神様みたいなもんらしい。

「ウケる」

「うるせぇ! 消滅させんぞ。お前の感覚で近いモノが神なだけだ。もしくは農家」

「なにその二択! 随分ランク下がりましたね」

まぁなんとなくこの空間が普通じゃないのは分かる。

「俺は複数の世界を問題がないよう循環させて、エネルギーを収穫してんだよ。お前の考える神様ってのが世の為、人の為みたいな見返りを求めないモノだとしたら違う。俺は俺の為にやっている。だから農家だ」

「はぁ……まぁ何となく分かりましたけど。なんで私は連れてこられたんですか?」

「……それはな」

あ、ヤバい。怒りが再燃してそう。神のコメカミがビキッた。

「テメェが世界の壁をバリバリ破ってくれたからだよ! 世界を循環させてエネルギーを収穫してるって言っただろ! メチャクチャじゃねぇか!」

「ひぃい! し、知らないっすよそんな事!」

どうやら私はヤンキーがセッセと耕した畑を荒らした害獣らしい。私はしばらくヤンキー神の眼力に震えていたが、ヤンキーはため息を吐いて睨みつけるのをやめた。

「チッ、分かってるよ! 別にお前に悪気があったわけじゃねぇ」

「えへへ、ゆ、許してもらえるんすかね?」

「…………」

卑屈な私の態度にちょっとイラっとしているようだ。

「それにしても私が世界の壁を壊したって、どういうことですか? そんな事出来ないと思うんですけど」

「あ〜まぁそうだな。普通だったら俺のような存在でもない限り別次元を観測し、干渉する事は出来ない。ことの起こりは俺の感覚でも遠い場所で膨大なエネルギーが生まれたことだ。そのエネルギー自体に意識なんてものも無かったんだが、本当にたまたまだな……遠くの次元のお前と感応しちまったんだ」

「うぇ!?」

「普通はあることじゃねぇ。だが起こった。結果お前の意識は膨大なエネルギーと融合し膨張、そして収まり切れなくなった意識は次元の壁を突き破り、更にその向こう側も突き破り始めた」

もしかしてアレか? 私がさっきピーマンのワタをバリバリ取ってたと思ってたのは次元の壁だった?

「そしてなおも膨張を続けたお前は、俺と同じような存在になっちまった。俺と同じ……ここは仮に次元の外側を干渉出来るモノ、超越者とでも言うか。俺も焦った。超越者と化したお前の暴走を押さえ込むのは骨だからな。超越者同士は干渉が難しいんだ」

「ご、ご迷惑をお掛けしました」

私はいつの間にか神になっていたらしい。

「まぁそれでも何とかお前の力を封印し、ようやくお前と会話ができるようになったというわけだ」

「えっと、それでこれから私はどうしたらいいんですかね? もう帰っていいですか?」

「あ〜無理だな。現在お前のいた時空は凍結して復旧中だ」

「マジっすか。明日大学があるんですけど。まぁ私がいなくなって悲しむ人間もいないんで帰らないのはいいんですけどね」

「どちらにせよ。すぐには帰せねぇよ。復旧もいつになるか分からん。それにそんな義理もねぇ」

なんせ畑の害獣ですからね。

「それなら私はどうすればいいっすかね? 復旧のお手伝いとか?」

「本当なら消滅させたいんだが、超越者となった以上完全に消滅させるのも大変だ」

めっちゃ消滅っていうじゃん! ヤダよ!

「かといって今の状態で復旧を手伝わせるのも無謀だ。実質一択だな。今のお前に超越者としての力は扱えねぇ。だから力がお前に馴染んで上手く扱えるようになり封印がいらなくなるまで、別の世界に放り込むことにする」

「べ、別世界っすか?」

「その世界で力が馴染むまで過ごしてろ。んで力が馴染んで上手く超越者の力が扱えるようになったら復旧を手伝わせる。それでいいな」

拒否権は無さそうだなぁ……。悪気が無いとはいえ壁を壊したのは私なんだろうし。元の世界も時間止まってるっぽい。すぐに帰れないならしょうがない。