軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フリーダム伝説

「そこからは早かった。今思い出しても、なにをやってたのかさっぱりわからねぇが・・・ただ、ひたすら強かった」

堂々と正面から乗り込み、冒険者だと名乗りを上げ、人をおちょくっているようにしか見えなかった。

「俺の作戦は人の残虐性を使った時間稼ぎだったが・・・そんなもんは必要なかった。S級冒険者にかかれば、そこらの賊なんざ指先一つで倒せるんだからな」

「なにが・・・あったんですか?」

「なにがあったんだろうな?」

「そこが重要ですのよ⁉」

「見てたはずなんだが、な。見た目の重装鎧に怯むかと思ったが、そんなこともなく、煽られた賊は当然のように襲い掛かってきた」

本人はこれでもかってぐらい鎧を着こんでるからいいが、もしやられたらその後は俺達だ。

どうするか・・・思う、間もなく。

「襲い掛かった賊が指先で触れられただけで吹っ飛んだ。何メートルもな。それを見て、ビビって止まる奴と構わず突っ込む奴。触れられたのは突っ込んだ奴。吹っ飛んだのはビビった奴。”てめぇのせいで仲間が飛んだぞぉ~?” そう突っ込んできた奴を煽って、人差し指の先でつついて笑ってやがった」

つつくたびに周りの奴らが宙を舞い、次第にヤジや怒号が飛び交った。

恐らくはなにかの魔法なんだろうが、

「むやみやたらに突っ込むくせに被害は周りにしか出ねぇせいか、賊の方もどんどん目的が変わっていった。あいつらを殺せ、あいつを殺せ、あのバカを止めろ、早く誰か呼んで来い。気付けば、町の入り口に、そぐわねぇ奴らが並び立ってた」

どんな魔法なのか、少なからず居たはずの町の住民にも、周りの街並みにも被害は見当たらず、目的の相手だけ引っ張ってきやがった。

「出てきた賊の頭は、魔法なんぞ使わずに正々堂々決闘といこうじゃねぇか。ただし、俺は人質を使うけどなぁ? ってなことを言った」

「どこが正々堂々ですの⁉」

「賊として、なら・・・正々堂々、かも」

「それは・・・まぁ、そうかもね」

「自由を自称してても騎士だ。迷う素振りも見せねぇで受けてた。最初の相手は傭兵崩れ。それなりに雰囲気があった。それに対して、どこからか投げて寄こされたのは小さな丸盾。どうやら、それを使えってことらしい」

「それを使えって・・・盾だけ?」

「あぁ。だが・・・皮肉なことに、その騎士の得意技はシールドバッシュだった。それはもう、見事なもんだったよ。相手の傭兵崩れだって修羅場はくぐってきただろうに、お構いなしに殴りつけてた。相手が踏み込むタイミングで、相手より早く踏み込んで叩く。単純で基本的なことだが、誰がどうみても重いだろう鎧を着て、よくもまぁそんなことが出来るな、と」

一瞬でも躊躇えば出遅れ、効果は著しく落ちる。そんな技だ。

それを、受けてから反撃するための重装甲を着込んで行うなんてのは、限りなく無駄なこと。

だってのに、

「それほど時間も経たねぇうちに傭兵崩れは降参した。賊の頭はそれはもうお冠だったが、対峙して嫌というほど理解させられたんだろう。どれだけふざけて見えても、勝てる相手じゃねぇ・・・ってな。その後も、幹部っぽいのが何人か出てきたんだが・・・最初の傭兵崩れが一番マシだったな」

どいつもこいつも、ふざけた酔っ払いにおちょくられるだけおちょくられて、盾で殴り倒されていった。

「いい加減、我慢の限界だってことで、賊の頭が人質を盾に騒ぎ出した頃には・・・戦えそうな奴は姿を消してた。それでも、人質でどうにかしようとして・・・だがそれも、俺達を案内した兵士が騒ぎの間に同僚や仲間を集めていたおかげで、難なく制圧できた」

たくさんの人間を巻き込んで行われるはずだった賊の討伐は、一人の騎士の手によってあっけなくも終幕を迎えた。

救われた人々はその騎士に大いに感謝し、盛大な祝宴を開いた。

「その時に聞いたんだ。何者だ? ってな」

「そ、それで帰ってきた答えが・・・?」

「そう。”おれぁ自由騎士‼ 冒険者をやってる。人はおれをフリーダムって呼ぶぜ? おかしいよなぁ?”つって、笑ってやがった」

それを聞いた時のクライフの顔は今思い出しても笑える鉄板ネタだ。

「嘘だ‼ 父上が自由騎士は立派な人物だと言っていた‼」

「嘘もなにも、あったことを話してるだけだ。俺だって疑わなかったわけじゃねぇが、チャード集合国の正式印証なんざ、あの時初めて見たしな」

チャード集合国。

南の霊峰を超えた先にある冒険者が生まれた国。

7つの集落が身を寄せ集めて出来たこの国には、略式と正式、2つの印証がある。

正式は7つすべての集落の印証が押されて完成するもの。

略式は4つ以上の集落の印証が押されたもの。

ギルド職員になった今でさえ、正式印証を見ることは滅多にない。

それだけで、十分な証拠になる。

「なにより、フリーダムはあの時、チャードを代表して皇王様に謁見に来てたんだ。俺に見せたのはその時に出しただろう証明書の控えだぞ? 普通そんなもん見せるか? と思うが、それぐらいふざけた奴なんだよ。あれは」

長い思い出話になったが・・・なにが言いたかったかって言うと、

「だからお前が本当に、あのふざけた自由騎士・フリーダムに憧れてるっていうんなら、ここのおっさんが洒落で作ったバリアントアーマーなんてむしろ、笑って受け入られるだろう? ってことだ」