作品タイトル不明
続々―――!?!?!?
『おや、どちらさんかね?』
2つの衝撃がこの身を貫く。
返事があった事実に脳が、その内容に心臓が。
『―――、・・・・・・ッ‼‼』
なにを言えばいいかすら、導き出せない。
進むべき道に壁が降ってきて生き埋めにされたかの如く、すべからく言葉は枯れ果てる。
俺には名前がなかった。
自分の名前も、この人の名前も。
『・・・どうしたの?』
少し遅れて、悲嘆していたところを置き去りにされた少女が追い付く。
そしてその顔が、自然と項垂れた視線へと映り込んだ。
『これは・・・、可愛いお嬢さんじゃないか。2人はどういう関係かな?』『すごい! またしゃべれるひと! おにぃちゃんがみつけてくれたの⁉』
俺はそんな簡単な問いにさえ、なにも返せなかった。
『どうしたの? おにぃちゃん・・・? しゃべれなくなっちゃった?』
『ここに居ると、しゃべれなくなってしまうのだな?』
『そうだよ! おじぃちゃんはここでなにしてるの?』
『さて・・・忘れてしまったな。お嬢さんはどうだ? なにか、覚えているだろうか?』
『わたしは・・・おにぃちゃんをさがして・・・・・・でも・・・』
不安に視線を彷徨わせる少女にしゃがみ込み、同じ目線の高さで訊く。
『ふむ、そっちの失礼な態度のおじさんとは違うのだな?』
『おじさん・・・? おにぃちゃんはおにぃちゃんだけど、さがしてるのはほんとうのおにぃちゃんだから・・・』
『そうか。まだお兄さんか、儂からすれば随分と歳をとったように見えるのだがな』
その言葉には違和感を覚えずにはいられなかった。
なぜならその物言いは、若い時の姿を知っていなければ出ないはずの言葉だからだ。
『爺さんッ!』
『はっはっは! 多少は丁寧になったんじゃないか? まだまだ失礼なままだがな。昔、教えてやっただろう?』
『礼儀は己を映す鏡・・・、だろ?』
『覚えておるのなら、実践しなければ意味が無かろう? 親しき中にも礼儀あり、じゃぞ』
立ち上がりながら見せる悪戯にほくそ笑むその表情を、ぶん殴りたくなるのはきっと、この爺が悪いに違いない。
けれど、
『しってるひと?』
『・・・・・・そのはずなんだ』
自信がない。
思い出せないからだ。
『そんなことより、儂にはお主に聞きたいことがある』
『・・・なんだよ?』
『なにをしに、こんな所へ来たのだ?』
真っ直ぐと向けられた視線には、もはや他に入り込むものなどなく。
悪戯を楽しむような雰囲気も、携えていた笑みさえも消え失せていた。