作品タイトル不明
ふてい
勢いよく壁を突き破る土竜。
なぜ⁉ 脳内がこの言葉で埋め尽くされそうになる。
だが、こんな状況で思考停止なんざしてられねぇ。
近くに居たフェリシアとエリックの腕を掴んだ瞬間。
バキンッ‼‼ 耳に刺さる嫌な音。
土竜の突進は辛うじて躱した。しかし、その巨体が消えるわけじゃねぇ。
俺達が立っていた足場は砕け、中空に放り出される。
「手を掴め‼」
必死に叫んで促す。
生憎と俺の両手は既に埋まってるからな。
手を広げ、身体を開けば、近付ける・・・はずだった。
この割れ目には強く吹き下ろす風がある。
本来、身体に受ける風の量を増やせば、滞空時間は延びる。
だが、今は逆に―――。
広げたそれぞれの手が触れ合えたのか、確認するより早く、闇に呑まれる。
「アンナ‼」
近くに居ながらして、掴む余地がなかった手の主を呼ぶ。
「大丈夫よ。フェリシアの手を掴んだわ。それとクライフも。たぶん無事」
「剣を伸ばしてくれて助かった。けど、ちょっと手が冷たいな」
軽く不満を漏らすクライフに、文句を言うなとアンナがピシャリ。
「私のことも忘れないで欲しいねぇ」
そんな中、名前を呼ばれなかったジーナの声が上から降って来る。
「忘れちゃねぇが、手も見なかった気がするな」
「ちょっと目を掻いていてね。光線を撃つとしばらく目が痒くなるんだ」
「そりゃ悪かったな」
しょぼしょぼと言い訳をするジーナに強く言うのも憚られ、他の話題へ。
「土竜の声が遠ざかってくな」
「重さの違いと風の影響か、声が遠ざかるのが早いな」
「あぁ。これじゃ、さっきフェリシアと話してた測定法も使えそうにねぇ」
「そもそも土竜が地面に着いたとして、音がするのでしょうか?」
「ベシャッ! みたいな音じゃ聞こえないんじゃない? 声が途切れたら~っていうのも、無理そうだし」
なんてことをアンナが言ってる間に、土竜の声が途切れる。
単に聞こえなくなっただけか、それとも・・・・・・。
「頃合いを読んで探知を使うしかないんじゃないのかい? 空振りも致し方なしだろう」
まだ目が痒いのか、覇気の欠けた声で提案するジーナ。
下手に躊躇って大惨事なんてのはごめんだからな。
土竜の声が聞こえなくなった以上、ここで使うべきだろう。
最大出力で探知を発動する。
幸いなことに、地面と思しき反応はない。
ただし、地面の代わりになるような反応ならあった。
おかしな点があるとすればそれは、その地面もどきが動いてるってとこだ。
「土竜の他にも―――・・・・・・」
なにかが居るぞ‼ そう口にしたはずだ。
だが、無音。
さっきまで吹き降ろし、耳にまで届いていた風音すらない。
代わりに、視線が合う。
剣の先を掴んで落ちる親友と。
目を見開いて、直ぐに下を向く。
そこには、あり得ねぇほど速く動くイーターの群れ。
蠢くってよりは、流れるって表現が正しい。
壁から壁へ。
夥しい数が、恐ろしい程に、同じ速度で。
まるで血の如く流れていく。