作品タイトル不明
よそう
「全員無事だな?」
壁伝いに降りる中、爪先までがどうにか収まる程度の足場に身を寄せ合う。
狭苦しいが、ここまで居心地が悪けりゃ逆に安全だ。他の生物でも活動に困るだろうからな。
「土竜の様子はどうだった?」
最後に降りてきて、安否を確認するクライフへ訊く。
無事については見ての通りだ。
「崖際まで追って覗き込んできたけど、そこまでだったよ。縄も上部は切ってある。あんまり関係はないだろうけど、一応な」
「そうか、下からじゃ暗くてそこまでは見えなかったな。砲竜も追ってきてはねぇはずだが、覗き込んでたか?」
「いや、砲竜の姿は最後まで見なかった。あの場に居たのが全部だったんじゃないか?」
「どうだかな。土竜の数でさえ、あれで終わりかどうかもわからねぇのに、希望的観測はできねぇよ」
「そういえば言ってたな。土竜があの数の砲竜を食べきれるかどうか」
「あぁ。3匹でも余るだろう数の砲竜。しかも、内2匹は喰う前に死んだ。あの土竜が規格外だったとしても――・・・だろ?」
「けど、他に土竜が居るなら――」
「増援があったはず・・・」
奪うように言葉を紡ぐが、当然のようにクライフも首肯する。
あれだけ叫んで暴れまわってりゃぁ気付かないはずがねぇ。
だが、増援は来ず。
それにしては餌となる砲竜の数が多い。
なんとも言えねぇな。
「偶々だった可能性はないか? あるいは保存していたか」
「偶然は否定できねぇな。俺達はここの生態系を知ってるわけじゃねぇし。ただ、保存だけはねぇな」
「何かわかったのか? あの暗闇と極限に近い状態で」
「意識してたからな。つっても、結果的にだが」
見えないなら他に頼る。
どこぞの盲人に倣ったわけじゃねぇが、どうしたってそうせざるを得ねぇ状況ってのはある。結果として、自然と聴覚や嗅覚が鋭敏になっていた。
「臭いがしなかっただろ? いくら竜種だっつっても人間ほど器用じゃねぇ。生で食うのが主流な環境で、加工の技術なんぞを持ち合わせてると思うか? 例えこの寒さでも、血肉が凍るほどじゃねぇ。特に砲竜も竜種で、且つこの環境下で活動できてるんだぞ」
「体温が高いか適応のために魔法を使ってる・・・と考えればそうか。それらが無くなった時には反動が来る。いや、待った! 飛べない程度に痛めつけるだけでも、食料としては保存できるんじゃないか?」
「特別、音もしなかっただろ? それこそ声は隠せねぇぞ。同胞が来たのに鳴き声1つ上げねぇなんざありねぇ」
「確かに。でも臭いか・・・・・・巣穴特有の獣臭というか、そういうのもなかったよな?」
「排泄臭もな」
「それっておかしいよな?」
「あぁ。砲竜を食ってるわけだからな。そっちの分だって無きゃ嘘だ」
「直前は血に交じってだけど臭いがあった」
会話から逃走間際の記憶を引っ張り出した様子。
だからこそ疑問が残り続ける。
「途中には他の道もあったんだ。その奥がそういう場所だったとか・・・」
「可能性だけならな。俺達が選んだ行き止まりさえ、どういう場所なのかも知りようがねぇのに、そう言ったところでな」
各部屋の機能どころか、間取りの全容すらわからねぇんじゃ意味がねぇ。
「最悪の状況だとどうなるんだ?」
「さっきの土竜とその仲間と、ついでの砲竜が下で待ち構えてるかもな」