作品タイトル不明
着差
ドゴンッ! と、少なからず響く音。
ガラガラと壁だったものが剥がれ落ちていく。
ヒューと上から降っていた風切り音が、ヒュゴォ! と目前のものとなる。
誰も予測なんぞしてなかったが、風が壁を破ったアンナを攫う。
前のめりになっていたところへ、急激に吹き込んだ風が流れに戻るために吹き戻したんだ。
壁から剥がれ落ちた塊は、音を立てて落ちていった。
そう、壁の向こう側は奈落。
俺達が降りた割れ目と同じような光景が、暗がりに広がっていた。
咄嗟にアンナと腕を絡める―――だが、
「重い! もたねぇ‼」
「うっさいわね‼ 踏ん張って‼‼」
アンナの怪力だから扱えてるだけで、あの大剣は重すぎる。
融合強化を使ってさえも、保持できそうもなかった。
遅れて。大きな株でも抜くみたいに、クライフ達が俺の腰を掴む。
「うぉおおおおおおっ⁉⁉ お、重いぃぃ‼‼」
背後からも同じ感想が届く。
”失礼にもほどがあるでしょッ‼‼”という抗議の声は、ゴォゴォ降り続く風に飲まれる。
いよいよ身体が立ってるのか寝てるのか、わからなくなりそうになった頃、アンナが大剣を壁に突き刺す。
重さから大分と解放された瞬間に、今度は後ろへ引っ張り戻される。
ドシンと尻からいったのはクライフ達だ。俺は片手で壁を掴んでたせいか、壁に叩き付けられることになった。
なぜか先端に居た奴だけが、ふわっと着地して難を逃れていやがったが、まぁいいさ。
「危なかったわね‼ まさか、こっち側にも穴が開いてるなんてね!」
「・・・風の音で気付くべきだった。地下に居る自覚が足りてなかったな」
「落ちなかったんだ。今はそのことに安堵するべきじゃないか?」
「そう言いたいとこだけどね。そんなことより、楔と縄。あるわよね?」
「ああ、直ぐに取り出すよ!」
「急げよ? フェリシア結界を頼む。エリックとジーナは援護しろ!」
ババババという羽音は、まるで怒りを運ぶように。
「ギュオオオオオオオオオオオ‼‼」
体中から血を流し、しかしてそれらを憤怒で蒸発させているような。
赤い気炎を纏った土竜を中心に、何匹もの砲竜が随伴してやがる。
お互いの姿が見えるか見えないかの間合い。
即座に動いたのは土竜。
目にも留まらねぇ速さで舌を伸ばしてくる。
幸いに狙いは俺だった。
斜め前へ、沈むように踏み込んで走り出す。
クライフが前に居なくてよかった。
受けて戦える状況じゃねぇからな。下手に受けようもんなら押し出されて終わってた。
なにより足を止めると、伸びた状態の舌を振り回されたり、最悪砲竜から狙い撃ちにされる可能性もあった。
その点、俺は避けるしか能がねぇからな。
言ってる間に砲竜の魔力が収束し始める。
その砲口は当然ながら俺以外にも向いている。
防ぐ手段はない。
少なくとも俺には。
「ジーナ‼」
「まったく、高く付くよ? 私のコレは、特別だからね!」