作品タイトル不明
探し出して決せよ5
理論や理屈を実践したところで、その通りに行くかといえばそうでもねぇ。
俺の精神操作の真似事は、目論見とは違った結果を引き出した。
狙ったのは仲間全員との連結。魔力で繋がる感覚を共有することで、並ぶ兵達を手足の如く、俺の身体の延長として俺の意思で使おうと考えた。
だが、現実はどうだ?
繋がる感覚は得られたものの、手足を動かすような繊細な感覚は無い。
それどころか、仲間全員ってところにも問題があった。
こういうとあぶれた奴が居るのか? と思うかもしれねぇが、逆だ。
仲間どころか、敵まで含めた正真正銘。”全員”と感覚を共有する羽目になった。仲間外れが居るとするなら、敵の指示役になるだろう。
喜ぶべきか、それとも悲しむべきか。全体を薄ぼんやりと眺めている感覚。それが肌にへばりつくような・・・言葉にしづらいが不快感は確かにあった。
その中でも飛び抜けて不快に感じたのが害意だ。つまりは人を攻撃しようという意思。それを感じると体内で虫が蠢くような感覚に襲われた。
実際に虫に皮膚を食い破られ、体の内側に入り込まれた経験なんざねぇが、そうとしか言えないような不快感。
その原因を突き止めたのは全体の動きを止めた直後だ。
繋がるような感覚を得た瞬間、俺がまず初めに感じたのがこの気持ち悪さ。吐き気を催すほどの不快感に思わず手を口に当てたほど。
そこからすぐに兵を動かせるかを確認した。
つっても、具体的にどうすりゃいいかはわからなかったんで、あくまでもそうしようと思ったぐらいだ。
気持ちの悪さを打ち消そうとする免疫とでも言えばいいのか、なにをどうするか――なんて詳細を頭に書き上げるより早く、兵達は自発的に組みついてくる敵を引き剥がしていた。
そうするごとに吐き気は減っていき、敵と味方の間に線が引かれる頃には、不快感の正体に気付いたってわけだ。
そうすりゃぁ後は簡単だ。
不快に感じた瞬間にその感覚を払い落とせばいい。
こう、手でサッと払うようなもんだ。
その想像が現実の兵を動かした。
感情なんてもんが混ざり込む余地がねぇほどに素早く。
そうやって何度も繰り返していく内に、感覚は研ぎ澄まされ、冴えていく。
膜のように覆われていた薄ぼんやりとしたソレは。
身体の内側に入り込み、虫のように食蠢きくらいついてきたソレは。
俺が不快だと断じ、払い落したソレは。
正しく―――・・・・、感情と呼ぶべきものだった。
俺が間違っているんだろうか?
機械的に。混ざり込んでは邪魔になると排斥したソレこそが、不快感の真の姿。
初めはスライムのような不定形の魔物のように感じた。
次はイナゴやバッタのような虫に。
そして削ぎ落していくうちに人の手の形だと思うようになり。
最後には線と線になった。
この2つの線は交わらない。どこまでも並行で、動くこともない。
2本の間に毛羽立つのは静電気。
繋ぐこともなく、掛かるともない、伝わるはずのないの感情。
その予兆を察知した瞬間に迎え撃つ。
一番近い位置から、決してその幅を変えないように打ち据える。
そんな想像が、現実として兵を動かし、敵を退け始める。
それはどこか遠くにいる誰かの怯えを表すようで、その感情さえ不快に感じた。
見開く眼に映るのは壁だった。歪んだ壁だ。
けどコイツらは一直線に並んでいる。
歪んでいるのは空間の方。恐らくはその先に―――・・・。
哀れなのは仲間外れにされ、何もわからないまま喚き倒す敵の指示役か。
並ぶ壁の先に、そいつはいない。