作品タイトル不明
覚悟して撃てよ4
高さが3Mもあれば、塀というより壁と言って差し支えのねぇもの。
上が空いてたって、そのことに気付けるのは一握りだ。
実際に、この状況で看破される確率は0に等しい。
いや、等しかった。
想定していた状況が間違ってさえいなければ―――・・・。
それぞれの通路を角で仕切る。
そうすることで、十字路は丁字路へ、丁字路は曲がり角へ、曲がり角は行き止まりへと変貌する。
この中で疑問に思うことがあるとするなら、行き止まりになった通路だが、見上げたところで壁に近すぎるが故に切れ目に気付くことはないだろう。
それ以外となると、遠くからこの壁を視認した場合だが、それもほとんど不可能だ。
理由はこの”建造物に囲まれた路地裏”の狭さにある。
そもそもが狭い通路だ。遠くを見る余裕も、空を見上げる意味もない。
なにより、足元だけが広く上部が出窓のような存在で圧迫されている空間や、その逆。足元に荷物などが置かれて踏み場が狭くなっている場所もある。
普通、これだけ視線を散らされる環境なら、視認性の悪い上空を遠目から見ようなんざ考えもしねぇはずだ。
だから、時間が稼げると・・・そう思っていた。
だがしかし、
「――ッ⁉ ジェイド! リミア! ケイ! 注意しろッ‼ 外側に敵が集まってるぞ‼‼」
そう時間を置かず、ケチった結界の外側に気配が集まる。
しかもそれは折り重なるように・・・まさか、階段を形成してるのか⁉⁉
注意を促してから数分ほどの間を置いて、壁の頂上に手が掛かる。
覗いたのは指先、更に腕から肘。それを支点に、ずるずると這い上がって来る敵。その恰好が兵士のそれである以上、追手であることは明白だった。
エイラ、ケイト、リミア、ヨハンはそれぞれ。よじ登る敵を魔法で迎撃し、壁の向こうへ撃ち落とす。
ケイとその付近の兵士にそういった真似は出来ねぇから、そこは俺が。
「どうなってんだよ⁉⁉ 結界を張ってたんじゃ―――⁉⁉」
そう言ったのはジェイドだっただろう。後に続く文句は聞き逃した。
俺も同じ疑問にぶち当たっていたからだ。
どうなってる⁉
通路を塞いだ壁は高さや範囲を妥協したとはいえ、物理敵にも精神的にも干渉を拒む強力な結界だ。
よっぽど確実な情報でもなきゃ見抜けるはずがねぇ。
そして、それらを蓋するように音を遮断する結界も張ってある。
俺達の話声が外に漏れただなんて間抜けなこともねぇだろう。
だったら――ッ⁉
あまりにも予想外な出来事に動揺を隠せねぇが。
ここが、どういう場所か。
忘れていなければ、原因にはすぐに気付いたことだろう。
そう。ここは”建造物に囲まれた路地裏”である。
建造物に囲まれた―――。
建造物・・・。
人が生活する建物であるならば、当然。
窓は存在しているわけだ。
壁を乗り越えようとする敵を撃ち落とす最中、近くにあった窓を見つける。
そこには、俺達を見下ろす眼がいくつも並んでいた。
1箇所なんかじゃぁない。
この空間が見える窓という窓から、数多もの目で観測されていたんだ。
納得と同時に理解する。
確かに、この都の民全員が出来に操られているんだと。