作品タイトル不明
沈黙
俺達のパーティーの始まりは俺とクライフの2人。
学園卒業と同時に冒険者になった。
本当は他に3人ばかり声を掛けてはいたんだが、親に逆らえないと中等部に進学した。それが普通で、俺達が異端だった。
教官にあれやこれやと面倒を見てもらって、その後。初めての依頼でアンナと出会った。
その頃だ。
爺さん・・・いや、当時はまだ大司教だったおっさんグレアムと俺がギフトの効果を検証したのは。
なにかにつけて同じ時間を過ごし、結果として大司教グレアムの加護レベルは4から5にあがり、それを決定打に教皇になったんだ。表向きには修道の旅の成果ってことにして、な。
それから俺達は皇都を後にした。
3人で2年程旅をしてC級になった辺りで、一度皇都に戻った。
理由は何だったか・・・。
アンナの里帰りとか、そんな理由だった気がする。
ついでだからってクライフと2人で学園をひやかしに行った。
卒業から3年弱、進学したやつらはなにしてんだろうなって。
そこで、卒業を間近にした旧友達からエリックのことを聞いたんだ。
もうすぐ卒業だってのに、幼少部で未だにくだらないいじめがあるってな。
庶民の子供が不正で成績を手に入れてるだったか・・・。
調べりゃすぐわかるような正確性のない完全な中傷で、よくそんなことを恥ずかしげもなく言えたなと感心すら覚えたぐらいだ。
エリックは間違いなく男爵家の息子で庶子ではないし、成績についても不正は認められなかった。目を疑いたくなるような飛びぬけた才能だったから、嫉妬したんだろうな。
それを俺達が糾弾して、卒業を待たず旅に連れ出したんだ。
そこから、さらに3年。
6年ばかりの冒険者生活を通して、そろそろA級になってもいいんじゃないか? なんて、言ってたところに最後の仲間が現れる。
それが、フェリシアだ。
急に教皇から手紙が届いたかと思ったら、そいつを届けに来た本人を預かってくれと書いてあったんだ。
修道学院で大問題が起きて、その当事者だった年端もいかない少女を見捨てることも出来ない。
だから、仕方なしに最年少だが冒険者ギルドに登録して送り出す。後は任せた。ってな具合でな。
当時10歳だったフェリシアを追い出すなんざ、出来るわけもねぇ。
目出度く5人パーティーの出来上がりとなった。
これが今から遡ること9年前の出来事。
そして、このフェリシアは俺のギフトを知る人物でもある。
俺から教えたわけじゃない。
俺から話したのは親友のクライフと恩人のグレアムの2人だけ。今ではここにヨハンとリミアが加わったが、当時は間違いなくその2人にしか話したことはなかった。
なんなら、アンナとエリックは今でも俺のギフトの詳細は知らない。知らなくても問題にならねぇからな。
にもかかわらず、一番最後にやってきたはずのフェリシアは俺のギフトについて知っていた。
当然、クライフが・・・という可能性はない。
ずっと一緒に冒険の旅をしていて、皇都の、しかも修道学院の娘と突然文通しだすなんざありえねぇ。
だから抗議の手紙を送ったんだ。
この爺さんに。
「あいつは俺のギフトを知ってた。出会った時からな。その時、俺はアンタに手紙を出したはずだ。どういうことだ? ってな・・・」
「あぁ。覚えとるとも。皇都を離れたくないというあの子を説得するために、お主のギフトのことを話したんだ」
フェリシアは生まれつき加護レベルが高かった。
親は騎士爵。
貴族なのは親だけで爵位を継ぐことも出来ない。
戦功で爵位をもらっただけだから領地も貯えもない。
そんな家だから加護のレベルだけで生きていける教会に娘を出した。
真面目で、敬虔な娘を。
そんな娘だ。なにかあったからって教会を離れるなんて、考えられなかった。
あいつは賢い。自分に非がなければそんな仕打ちには耐えられない。
だから教えたんだ。
神のような存在がいると、そのものに仕えよ、と。
「そうだ。致し方なかったってなぁ・・・だが、そんなアンタが、同時期に、今度はうっかりで口を滑らす? そんなこと、あるわけがねぇ」
なぜか?
それは、
「そんなうっかりをやるような奴なら、俺の噂を聞いて会いに来たりなんざしねぇ・・・・・・そうだろ?」
学園の幼少部に入ったばかりの加護を持たないガキに、教会の大司教が興味を持つか?
加護が絶対の教会で立場を持つ人間が、うっかりで口を滑らせるような人間が、教会の教えからほど遠い、異端のガキなんかに構うかよ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
なにも言わず、ただ俯く爺さん。
この沈黙は・・・肯定でいいだろう。
まさか、こんな形で恩人の裏切りを知ることになるなんて、思いもしなかったな。