作品タイトル不明
被るは自ららの陰
「どういうことでしょうか? 父の行動は・・・母のためにした行為は全て、無駄だったと・・・?」
「いえ、リミア様。そのようなことはありません。少なくともルーフロンス領で蔓延っていた不正は明かされなければいけなかったものだと思いますし、摘発による領内の浄化はお母様の精神を労わったものだと言えるはずです。決して意味がなかったわけではありません」
「ただ、それが波及しなかった・・・」
「そうです。そして問題になるのが、お爺様がどういう考えだったか・・・それを波及させないために教皇という立場へ就いたのか、もしくは就任したことで波及しなかったのかということです」
「その2つにそれほどの差があるとは思えないのですが?」
「そうでもねぇさ。前者であれば、爺さんは教会の存在を脅かされないように立ち回ったことになる。つまり望福教の存在や、その理念を知っていての行動を取ったってことだな」
「はい。ですがお爺様は―――」
「あぁ、知ってたとは思えねぇ。内情まで知ってたなら、今回こんなことになる前に対策の1つや2つは用意してたはずだ。まぁ、動きがない間に忘れちまってた可能性は残るが・・・それならそれで、どっかで思い出してても良かっただろう」
隠し事なんて出来るような人柄じゃなかった・・・なんてことはねぇが、教会と相反する宗教があるっつーことを隠すべき理由もない。
当時の俺が教会と反発していたならまだしも、俺と爺さんは秘密を共有し、悩みを打ち明け合った間柄。下手な宗教にハマったり、不信感を理由に教会から離反したりする心配はなかったはずだ。
忘れてた可能性については、否定もできねぇが・・・忘れたままってのは引っかかる。いくら歳でも、そこまで焼きが回ってたか?
「だとするのであれば、後者ということになるのでしょうけれど・・・」
「単純に話題で比較すりゃぁ地方の不正と新教皇の就任。どっちがデカいかなんざ言うまでもねぇ」
「ですが・・・それだけで、悪評を封殺できるものでしょうか?」
「そうなのです。普通ならばあり得ません。ですから、そこに教会の意思が反映されていたと思うのですが・・・」
「出来そうなのは枢機卿辺りか。爺さんと交代する直前まで教皇だったんだ。従う人間も今以上に多かっただろう」
リミアの疑問に答えながら憶測を走らせる。
爺さんはただ、頃合い良く利用されただけの場合もある。
つまり爺さんにその気がなくとも、前者として動かされた可能性だ。
その場合の発起人は枢機卿。
望福教の存在と不正の公表を一早く知り得、その上で周囲を自由に動かせただろう人物が他に居ない。
その過程で何かを知り、ユノを鍵と呼んでいるのか・・・。
だがそうであれば、何を知ったのか?
それが今にどう繋がり、なぜユノが鍵となったのか。15年以上前だぞ? 関係性に気付こうにもよっぽどのことがなけりゃ無理だ。
それを確かめる術がなさすぎて、憶測としても成り立たねぇ。
ユノが鍵になるなら、もっと直近の。直接的な何かだと思っていいはず。
流石にあの枢機卿が内通者ってことはねぇだろうしな。
実は全部裏で手引きしてました――とでもならない限り、この憶測が想像の限界だ。
つっても、後者だと・・・やっぱ教皇の交代だけじゃぁ話題をかっさらうなんざ不可能に思える。
「・・・ぁ―――なぁって‼‼」
3人で蚊帳に籠っている間に、爪弾きにされていたジェイドが声を荒げて話しかけていた。
「あー・・・悪い。どうした?」
「どうした? じゃねぇよ‼ この俺様が話しかけてんだ‼ 気付けよ!」
「まあいいじゃない。それで、話を聞いていて気になったことなのだけれど、聞いても大丈夫かしら?」
「あぁ、なんだ?」
「今悩んでるのは、当時。教会にまつわる噂が他になかったから・・・?」
「そうだ。寄付金の着服なんざ一大事だからな。それと同時に加護Lvの低下なんて話までされちゃぁ、教皇が変わったぐらいの話題じゃ掻き消せねぇだろ?」
「それはそうですわね! むしろ、そんなことがあっては。なぜこの状況で教皇が入れ替わるのか⁉ そう勘ぐる人が教会に殺到してしまいますわ‼ ですけれど・・・他に話題があればよろしいのですわよね?」
「・・・? まぁ、そうだな」
「それであたしら気になってたんだけどね。それってアンタのことなんじゃないのかい?」
「―――は?」
ジェイド、エイラ、ケイト、キューティー、その上ケイまで。
順番に話を続けながら、こいつらは何を言ってるんだ?
本気で意味が分からなかったが、
「だから‼ 当時アンタは駆け出しになったんだろ? それが話題だったんじゃねぇかって―――言ってんだよ‼‼ 俺様達は‼」
駄目押しの言葉で気付かされた。