軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――ダミアン5

空虚だ。

とてつもなく空虚な時間を過ごした。

「こんなものか・・・・・・」

親を追い落とし手に入れた地位は、権利と権力こそ伴ったが、私の欲したものを与えてはくれなかった。

爵位の繰り上げを辞退し、薬の開発方法も他所へ明け渡し、着服の事実で教会を緩やかに排し・・・それでも。

リーリャに笑顔は戻らなかった。

ああ、いや。

気を使って笑ってはくれるのだ。

けれど、それでは駄目だった。

陰りが消えないそんな笑顔では、彼女の幸せを感じられない。

私の人生とは、生きがいとは、彼女の幸せを感じること。その隣に居られることこそ、私にとっての至福だと気付いてしまったが故に、それを得られぬ現状を満たすものがなかった。

金も、自由も、称賛の声さえ。

遠く色褪せた滑稽な風景画にしか見えない。

これ以上どうすればいい⁉

時折、頭の中から追い詰められた叫びが聞こえた。

他でもない、自分の嘆きだ。

彼女になんと声を掛けたところで、その答えが得られることはない。

『私は幸せです』『今のままで満足しています』『あなたのおかげで、私は―――』

それらを偽りと断じるつもりはない。

彼女は噓を吐いてなどいない。

それが痛いほどに伝わるからこそ、私は焦燥するまでに至る。

それほどまでに、彼女の過去は満たされていたのだ。

周囲にも、家族にも。

嫌なことが多少あったところで、それを塗り替えてしまえるほど、充実した日々を過ごしていたのだ。

今の彼女は裕福であり、教会での奉仕もしておらず、時間も自由に使える。

人によっては、これ以上の何を望む? と、贅沢を咎めるかも知れない。

しかし、幸せというものがそれらだけに収まらないということを、私自身も知ってしまっている。

だからこそ、だからこそだ!

私の自我が叫ぶのだ。

どうすればいい⁉ 満ち足りた日々戻すためには‼ これ以上‼‼

繰り返しになるが、そんなものに答えなどない。

なぜなら、それは既に失われていて。

そして、同じものは存在し得ないからだ。

人との関係―――・・・だけではないか。

その人物自体に代わりなど居らず、記憶に刻まれた事象は消えてなくなりはしない。

もし、全員と和解出来たとしても。しこりは残る。

あの時は・・・あの瞬間は・・・と、どれだけ繕っても。消えない傷だ。互いに。

許すというのは勝手だが、許してくれと乞うには傲慢過ぎる。

それがわかっているからこそ、もう二度と元には戻らないのだと。理解してしまったのだ。彼女も。私も。他の誰かも。

張り裂けんばかりの日々を必死に繋ぎとめ、保つ内に。

私達家族へ。大きな転機が訪れる。

彼女の懐妊である。