作品タイトル不明
side――ヨハン2
驚きは連続する。
「―――っ⁉」
なんとも言えないような感覚がしたかと思ったら、魔力が満たされていく。薬を使った時より早く、しかもこの感覚は・・・魔力が、普段よりも多く⁉
なにより、今日は既に限界まで魔力を回復した後。本来なら魔力酔いの中毒反応が出るはずなのに。そんな感覚も一切ない。
今なら―――今の状態なら、どんなことだってできるんじゃないか・・・そんな幻想さえ抱いてしまえる。
この喜びを誰かに伝えたい衝動に駆られるけれど、なぜか先生へは言わなくていい気がした。
何も言わなくても、この感情を共有出来ている。そう思ったんだ。
でも、驚きはまだこんなものじゃない。
なんでもできる気がしたんだ。
だから思いついたことを実行した。
もちろん余計なことなんかじゃない。
ただ自分のやるべきことを続行しただけ。子供の動きを止めるための魔法を継続した。
それだけなのに。
本当に。文字通りの意味で。思いのままに魔法が使える。
普通は違うんだ。
理想はあくまで理想。
動きの速さ、角度、大きさ、効果、威力、範囲、持続時間。
どうやったって完璧にはならない。
現実に動く魔法を見て、その想像を修正していくんだ。
そこには当然ながら時差があって、その時差を埋めるのが魔法使いの技量だったはずなのに。
正しく、理想のままに魔法が働く。
いや、むしろ。
いつもの感覚で使う魔法よりも、未来の軌道を描く。
まるでお手本のように。
それは楽しいに溢れていた。楽しくないわけがなかった。
魔法を一度でも使ったことがあれば、そう感じずにはいられないほどの快感があった。
目の前で人が亡くなっていく戦場で、その原因でありながら僕は―――、込み上げてくる快楽に笑っていた。
罪悪感なんて消し飛ぶくらい。
この瞬間だけは、確かに。自分のために行動していた。
後で思い返せば恐ろしくなるけれど、後悔はなかった。
そして、驚きはそれだけに留まらなかった。
圧倒的距離間の掌握。
掌握。把握ではなく、掌握だった。
止めようとする子供達への距離? それとも倒れていく大人達との距離? あるいは、先生やその後ろにいる領主との距離?
どれも正解だけど。どれも正解じゃない。
それだけに留まらなかったんだ。
僕に分かったのは2つだけ。
1つは元溜め池の工場。もう1つは僕の手元にある罠の魔法道具。
たぶんどちらも、一定以上の出力で動いている魔法道具だ。
その位置と力の流れが手に取るように分かった。
だからこそ、快楽に飲まれるほどの理想の魔法を実現できたんだと思う。
止めどなく流れる魔力の道を、邪魔しないように、無理のないように。
そう思えば思うほど、自分の周囲に縦横均等な線が引かれていくような、マスで埋まるような感覚が広がっていった。
そのマスを数えるだけで、簡単に距離を測れた。
全てが思いのままに。
そのために収束していくかのような。
そんな気がするのも納得でしかなかった。
先生はいつも、こんな感覚だったのかな?
だとしたら、よく我慢できるなって。
未熟すぎる僕はそう思ってしまった。
それぐらいに、この感覚は万能だったように感じられた。