作品タイトル不明
悪夢を冷ます方法を3
何をどう考えてこんなことを――ッ⁉
なんて、悠長過ぎる。
そこまで子供の気は長くねぇ。
「ジャマするなッ‼‼‼」
振り上げられた銀の刃が光を放つ。
俺へ向けられるはずだった凶刃は、託すべき未来へと襲う。
しまったという表情を見せるのはヨハンだ。
キチンとそんなことまで考えてはいなかったという証拠だろう。
盾でも、籠手でも、鎧でも。
防ぐ手段はあるはずなのに、咄嗟がゆえに間に合わない。
「~~~~~ッ⁉⁉」
ガ・・・・・・。
それは音だったのか、あるいは声だったのか、声だとしたら誰のか。
わかりゃしねぇが事実は変わらず。
刃は突き刺さる。
何もないはずの空間に。
ヨハンの胸と刃の間に歪んだ虹が掛かる。
「先生‼‼」
まるで花でも咲いたかと思わせるほどの笑顔。
戦場に似合わないその顔が、一気に形勢を傾ける。
「―――あのガキを狙え‼‼」
そう、理由は明白だ。
俺がヨハンを守った。
この事実だけで十分すぎた。
ヨハンは俺の弱点たり得る・・・そう示すには、十分すぎたんだ。
ワァ‼‼ と群がる警備と暴徒と子供らと。
それらをさばく俺とヨハン。
とはいえ、波のように一斉に襲い掛かられてりゃ取れる手段なんざ数えるほど。
そこから更に速さを求めれば、選べたのはわずか1つ。
「ヨハン‼ しゃがめ‼」
言うや否や、即時に反応し身を屈めるヨハン。
それを認識して、一閃。
大人と子供の一番の違いとは何か?
人により答えが分かれることもあるだろう。
だが、この場において重要なのは、より分かりやすい記号的な解答である。
ならば、その回答とは何か?
決まっている。
体の大きさ。もっと言えば、身長の高さだ。
この領地でなにが起こっていたのか、その詳細までは知らねぇが。それがヨハンの去った後から始まったのは間違いねぇ。
そして、あの工場地帯で見た子供達は全員、ヨハンより数年分は幼かった。
だから立っていたヨハンの頭の位置に合わせて、横なぎの魔法を放った。
風さえ切り裂く音速の刃。
首をバッサリ落とされる奴もいれば、胸や頭に当たった奴もいる。
魔法での抵抗を予測して被害を抑えた奴はまだ立っているが、そうでない連中は・・・・・・。
このことが、ヨハンのあの笑顔を陰らせないかと不安になる。
こんな醜い争いなんぞ知らなくてもいいのにと。
だが止めるわけにもいかず。
2度、3度と刃を飛ばす。
不注意な奴から倒れ、どちらでもない奴はいずれ、 要注意な奴だけが身を屈めて生き残る。そいつらへは足元から飛び出る針を贈りつけることで対応。
幸い、それ以上は出てこない。
ただし子供は別だ。
遥か頭上の更に上空を通過する刃なんぞ、どこ吹く風と直走る。
それを見つけてはヨハンが罠に手を伸ばし、影を捕らえる。
どれだけ遠くに居ても、どこへ向かっていても、1人たりとも逃がさない。
徹底的に。正確に。
見逃さない目も、魔法の操作も、その速さも、捕らえた数も、優秀過ぎる成果を上げている。
だが、だからこそ。
「・・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
限界も早くにやってくる。
ヨハンの問題点は俺と同様、魔力量の少なさにあった。
見ている限り、あの魔法は常時魔力を供給する必要があり、操作にも別途魔力を使うようだ。その代わりに強度と範囲を維持できてるんだろう。常時発動を罠に任せることで、操作の正確性を上げる工夫まで。
これ以上ないくらい。よく考えられている。
成長を目の当たりにさせられる。
ならばこそ、
「ヨハン! 最後まで付き合ってもらうぞ‼」
「ッ! はい! ・・・でも!」
「大丈夫だ。魔力なら―――俺が送ってやる」
頼りにしてもいいんじゃねぇかと。
そのための力だったんじゃねぇのか・・・なんて。
奪うことばかりに気を取られ、分け与える事ができることさえ忘れていた。
誰かと、何かと、繋がるようなこの感覚は。
このためにあったんじゃねぇかと、そう思えた。