作品タイトル不明
動かざる時
「でしたら! まずは教会へ向かいますわよ‼」
パン! と手を叩き、思い立ったことを口にしたのはキューティーだ。
まるでここまで出番がなかったことの鬱憤を晴らそうかというような提案。
「え・・・教会まで行くの? 私達も?」
しかし、それに異議を唱えるのはケイト。
「もちろんですわ! 私達は仲間ですもの‼」
「そうかも知れないけど・・・ここの本、まだ読みたい」
「本なんていつでも読めますわ‼」
「ここの本は、いつでもは無理!」
離したくないと本を抱くケイトとそれを引き離そうとするキューティー。
それをエイラが辞めさせようと立ち上がろうとした時、
「アンタが居れば、今から行っても入れるのか?」
ジェイドが俺に尋ねる。
「別に俺が居なくとも入れるだろ? 教会に休みはねぇんだから」
「いや、そうじゃなくて! だって忙しいだろ?」
「忙しい? なにがだ?」
「なにがって・・・・・・・――」
なんとなく、本当になんとなく返した言葉に。ジェイドは面食らったような顔で固まってから、
「――葬儀の準備だよ」
至極当然の事を告げる。
葬儀。
誰の?
他の誰でもない。
教皇グレアムの葬儀に決まっている。
そんなことを、俺は教えられるまで忘れていた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・本当に大丈夫なのかよ?」
「・・・・・・さぁな」
「さぁなって・・・―――あ、おい!」
その問いの答えは、直接確かめるまでわからない。
だから行こう。
教会へ。
俺は振り返らずに歩き出す。
ヨハンやリミア、ジェイド達も追いすがる。
豪華な部屋を出て、立派な屋敷を抜けて、絢爛な貴族街から簡素な下町を通って寂しい町外れへ。
途中からは何度となく通った道だ。
舗装された石畳から、踏み鳴らされた砂利道へ。
質素な門は関係者が通るための裏口だ。
ここを抜ければ――いつも。
いつかも来た扉を叩く・・・・・・・・・――――反応はない。
少し力を入れて扉を押せば、ゆっくりと扉は開く。
施錠されないまま、誰の来訪も拒むことはない。
いつからか見慣れた屋内。
毎度くだらないことばかり。
秘密だなんだとかこつけて、よくよく顔を突き合わせた部屋がある。
最後のこの一枚を超えてしまえば、取り返しがつかないような・・・。
けれど、止まることはない。
キィと押し退けられた扉の向こう。
そこには誰もいない―――・・・・・・はずだった。
2人で挟んだ机に、1人で突っ伏す姿があった。
一瞬の混濁。
だがそれも長くは続かない。
突っ伏した影が振り返る。
「―――ッ‼ ゼネス様ッ‼‼‼」
俺を見るなり、飛び込んできたのはグレアムの孫娘ユノだ。
その胸元には、帝国へ出張る前。身代わりだと言って爺さんへ渡した首飾りがあった。
なぜかそれを見た瞬間に、現実なんだなと悟ってしまった。