軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

短くもない時間が

タンからの有難い言葉を受け取った後、もうやれることはないと俺は皇国へ戻る。

そのためにありったけの魔力をかき集め、意識を集中する。

そうすることでいくつかの扉を感じる事ができる。

これはジーナが作った転移扉であり、その1つは皇都にあるジーナの屋敷で鎮座している。いや、正確には1つ以上存在するが、使うのは1つだ。

感じ取った扉を手繰り寄せ、目の前で開く。

すると、

「・・・ここは? どこかの部屋のようですが、いったい?」

一瞬にして周囲の景色が変わったことにライザードが困惑している。

マーテルに至っては、意識をなくしたままのローランにしがみ付いて縮こまっている。

――っと。

「大丈夫ですかッ⁉」

説明しようと前へ出ようとして、足がもつれる。

魔力を使い切った弊害もあるだろうが、多少の安堵も原因か。

倒れそうになったところをマルチナに支えられる。

そうこうしていると、ガチャリ・・・と扉が開き、

「君達は人の屋敷でなにをしているのかな? うん?」

屋敷の持ち主たるジーナが登場する。

「別に何もしていませんよ? 気にしないでいただけますか?」

「君には聞いてないよ。そうだろう? ゼネス。君が私の屋敷になんの用もなく訪れたりはしないだろう? つまり、今のはそういう質問だよ。勝手に割って入ってくるのは辞めてくれたまえ」

なぜか左右で火花を散らし始めるジーナとマルチナに辟易しながら、あらましを話すためにも用件を提示する。

「陛下へ謁見したいんだが・・・」

「なるほど。報告だね。すぐに準備しよう。ほら、君も早く離れたまえ‼ 動き辛いだろう‼」

「ゼネス様はお疲れなんです‼ 私が支えるんです‼」

などと、移動で苦労させられた。

ローランはマーラグ家の使用人が運んでくれたようだった。

「まさか、これほど早く返ってくるとは・・・流石に驚いたぞ」

「慌ただしくしてしまい誠に申し訳ございません。しかし、凶報を聞き及んでは黙ってもおられず、こうして押しかける形となってしまいました。謁見いただき恐悦至極に御座います」

朝っぱらからの失礼な謁見要求にも、陛下は迅速に対応くださった。

「そう畏まらなくともよい。ライザードも無事で何よりだ」

「はい! お爺様! ご心配をおかけしました‼」

「うむ。それで、どうであった? 帝国は」

「・・・あまり、皇国との違いは見受けられませんでした。声高に叫ばれる悪魔など、どこにも・・・」

「そうか。そうであろうな。しかしそうすると、この国でも王が暗殺されるような事態になってしまうな」

「あ、いえ‼ そういう意味では―――ッ⁉」

「ならば、安心しろと。そう申すのか? ライザードよ」

「・・ッ‼ いいえ。詳しくはその者よりお聞きいただければと思います」

ひとしきり孫と会話をし終え、本題に入る。

この場にいるのは4人。

俺とマルチナにライザード。そしてジーナだ。

ローランとマーテルはジーナの屋敷であるマーラグ邸へ置いてきた。

「して、首尾はどうであった?」

「最低限の目的は果たせました。しかし、大きな問題も残す形となってしまいました」

「大きな問題・・・というのに、我が宮廷魔導士は関係するか?」

「はい」

「それが彼の者を連れてこなかった理由だな?」

「その通りでございます」

「何があった?」

「端的にお伝え致しますと、精神の乗っ取りを目撃しました。暗殺はそのすべてが精神を乗っ取られた後の自殺。それを誤魔化すために陛下の宮廷魔導士は使用され、結果として意識不明のまま眠っています。精神乗っ取りの恐れがあるため、この場には連れて来ず、更には感染の危険も考慮して、現在は隔離状態としています」

「精神の乗っ取り・・・だと⁉ マーラグ公爵‼」

「聞いたことはありません。ですが―――・・・」

驚く陛下の問いにジーナが短く答え、さらにそのまま視線をこちらへ送る。

「この状況で謀る意味はない――と、そういうか?」

「はい。3人で口裏を合わせてまで陛下を謀ってどうなるでしょう? 冗談であればまだしも、本気であるなら意図が見えません。それで得られるものがあるとすれば、最高権力者を騙したという少しばかりの優越感や達成感くらいのものでしょう」

「だが、精神の乗っ取りだぞ? そんなことが、本当に可能なのか?」

「人であれば不可能でしょう」

「・・・人でなければ、いったい誰が?」

「―――竜ですよ。陛下」

当然の疑問に行きついた陛下へ解答する。

「竜・・・とは、ドラゴンのことか?」

「はい。おっしゃる通りかと」

「・・・待て。なぜ竜がそのようなことを?」

「わかりかねます。竜の思考など人の身には追えません」

「ではなぜ竜の仕業だと?」

「眼です」

「眼・・・?」

「犯人はいずれも竜の眼をしていた。それも後天的に・・・そんなものは人の所業ではありません」

「竜の眼・・・確か、この皇城の門前でも―――」

「はい。ですがその者も、もう生きては居ないでしょう」

「それも捨て駒であったと?」

「恐らくですが・・・」

「帝国の王や、教会の教皇でさえもか?」

「・・・・・・――――」

ただ首肯する。

「捨て駒に選ばれる理由は・・・わからんか?」

「申し訳ございません。私の力不足により、尋問には失敗しました」

「・・・・・・そうか」

陛下は僅かに俯き、ひじ掛けの上で拳を握る。

きっと、陛下にとってもグレアムの爺さんは・・・・・・。