作品タイトル不明
引きずられつつ、引っ張られる
「色々と世話を掛ける」
「まったくだ。でも悪い気はしない。冒険者は頼られるのが好きだからな」
「俺はそうでもなかったがな」
「そう思ってただけさ」
話をつけている間、マーテルとローランの相手をしてくれていたサンに。改めて礼を言う。
蒸気の騎乗者は皇都で有名なA級パーティーだったこともあり、マーテルとも面識があった。だから、落ち着かせたりだのを手伝ってくれていた。
俺はそんなマーテルとローラン。後はライザードとマルチナを連れて先に皇都へ帰ることを伝えに来たっつーわけだ。
「けど、本当に大丈夫なのか? ここから皇都まで。一瞬で・・・なんて」
「4人も引き連れて無事に移動できるかは多少不安だが、まぁ大丈夫だろ」
「安全もそうだけど、魔力の方も。ここまでで結構消費したんじゃ?」
「どうにかするさ。戻ったら戻ったでやることもあるしな」
「途中で魔力中毒を起こして倒れたりしてくれるなよ? 俺達じゃどうにも出来ないんだからな!」
「そういう移動法じゃねぇから問題ねぇよ」
スイとマーテルは歳が近いからか仲が良く、別れの挨拶が長引いている。
お互いに勇気付け合うように抱き合う現状は、まだしばらく続きそうだ。
これ以上何を話すか・・・? と思っていたところへ。
「ちょっと話がしたい。すまないのだけれど、構わないか?」
「タン? ゼネスさんになにか用があったのか?」
「そんなところだ」
「俺は構わねぇが―――」
サンに視線を向ける。
「邪魔かな?」
それに気付いたサンは席を外すべきかタンに聞き、
「いや、いい。このままで。私達の話でもある」
返答を聞いて私達? と首をかしげながら残る。
「単刀直入に言う。私は南の辺境伯領主の娘だ。貴方は私の先達に当たるな。色々な意味で」
「い、いいのか⁉ 言って⁉」
「構わない」
唐突に凄まじいことを口走るタンと驚くサン。
つっても驚くのは内容にじゃなく、それを伝えるという行為についてだ。事情は知っててのことだろう。
「なるほど。とんだ馬鹿も居たもんだな。国を守るべき辺境伯領主の子供が冒険者なんぞに」
「その通りだと思う。特に軍事色の強い北側ともなれば尚更」
「それで? 馬鹿同士で伝えたいことがあると?」
「そうだ。1つは感謝を。私は自分の生き方を選ぶ時、貴方の存在が大きな助けとなった。だから――ありがとう」
「南の領主様には殺されねぇように注意するよ」
「そうだな。そうしてくれ。それともう1つは従妹のことだ」
「従妹?」
「鼠の王とか呼ばれている」
「鼠の――」
と言われて思い出したのは貧民街のまとめ役をしていた女だ。
「あの女が従妹ッ⁉」
「父の噂はご存じのことだと思う。しかし、父は領主として多くの面を演じている。その全てが真実というわけではない。厳粛さも、その一端に過ず。代わりというわけではないが、周りに補填させる傾向にある。従妹もそう」
「どういうことだ? スラム街の管理が飴と鞭ってことか?」
「言い得て妙というか、面白い表現だ。厳しく取り締まる傍ら、手助けしているのだから遠くはないだろう。言ってしまえば、全ては計画通りなんだ」
南の領都に限っては――とタンが付け足す。
「こっちも。気になることが山ほど出来たが・・・敢えて言うなら、それがどうした?」
「貴方は内戦の赴くんじゃないかと思った。だから、伝えたくて――」
だからなにを? と怪訝に構えるよりも早く。
「貴方の味方は居る。それを忘れないで欲しい」
「――ッ‼」
俺はそんなに1人で戦っているような顔をしていただろうか?
まさか、こんなところで気を使われるなんてな。
「なにより、皇都軍は私達のために北の辺境伯領に多く待機しているはず。そのせいで皇都は手薄。増援も遅れるかもしれない。そうならないために、従妹に伝えて欲しい。私からの頼みだと。そうすれば、南の領都からも軍が動かせる。きっと、役に立つ」
「・・・・・・忘れずに、そうさせてもらう。感謝する」
奴を殺すことばかりで頭がいっぱいになっていた。
そういえば、この帝国へ来る前に兄上と話して、なにかあった時のために待機してもらっていたな。
それは皇王陛下も知ってのことだ。なら、皇都軍の人員も割かれていると考えて然るべきだった。
望福教が旗揚げをしたのは皇都の守りが手薄だから。
なにも俺を遠ざけるためだけに、こんな手の込んだことしたわけじゃねぇ。
なのに俺は――・・・全てをわかった気になっていた。
危うく、また性懲りもなく足元を掬われるところだった。