軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

煽情ここにありて。

予定調和とでも呼ぶべき沈黙が訪れる。

「ですが、ゼネス様? 教祖様が人の身体を乗っ取れるのならば、直接的な動きをした方がいいのではありませんか? それこそ、王様の身体に乗り移るとか・・・」

「そうしたんだよ。だが、上手くいかなかった。当然だな。眼の色が変わるどころか、眼そのものが別物になるんだ。信用なんてもんは吹き飛ぶ。そうならねぇようにするには、生まれつきそうだったっつーことにするしかない。現に、皇都での演説ではそう言ってただろ? それが一番使いやすいってのを学んだんだろう」

「つまり、その失敗を学んだのがこの国だったと・・・・・・?」

「さぁな。今もまだ、実験の途中なのかも知れねぇだろ?」

「流石に失礼過ぎでしょ? アタシはただ、自分の順番が回って来たから王位を継承しようっていうだけなのよ? それを失敗だとか、実験だとか――証拠ぐらい出してもらわないとね?」

マルチナとの問答に割って入る女。

「誰も、てめぇのことだなんて言ってねぇはずだがな?」

「言ってるでしょ? その殺気・・・ちょっとは隠したらどうなの?」

「なら、てめぇも。証拠を隠す努力ぐらいしたらどうだ?」

そう言いながら俺は指差す。隠す気の感じられない証拠を。

「アタシの付き人がどうかしたの? もしかして、好きになっちゃった? でも残念! アンタにはあげないわ! だって、アタシの味方になりそうもないんだもの!」

「・・・いいや。勝手に貰っていくさ。そういう約束なんでな」

あからさまな挑発。衝動的に殺しそうになるが、まだ早い。

確かめなきゃならねぇことがあるからな。

「その人が証拠ってことでいいんですよね? この僕達が帝国へ来る原因となったその人が」

「ああ。野郎には必要だったんだ。誤魔化しがな」

「誤魔化し、とは?」

「竜の眼は隠せない。精神を乗っ取った時点で眼に変化が現れる。だがそうすると目的のための信用を失う。そのせいで精神を乗っ取ると駒として使えなくなる。同時に、自身が国の頂点に立つことも出来ない。眼の異常はそれぐらいの影響がある」

「確かに。お爺様やお父様が急に竜の眼になり、普段からかけ離れた言動をし出したら、この僕でなくとも王位の継承に乗り出すでしょうね」

「それがこの帝国で起きた事件のあらましだと俺は踏んでるが、そこはどうでもいい。その欠点を覆すにはどうすればいいか? 誰だってそう考える。精神の乗っ取りなんつー都合のいい能力があればな。そこで思いついたのが、再度精神を書き換えること。自身の精神が直接その身体を乗っ取っることが、竜の眼を反映する引き金になってるんじゃねぇかと考えたんだろう」

「え~?? 精神の乗っ取り自体があり得ないのに、そんな曲芸みたいなこと出来るわけなくない? アンタの中では、アタシどんだけ化物なの?」

白々しいほどの台詞だが、答える義理はない。

「だから、宮廷お抱えの精神魔法使いを連れて来た。そういうことですか」

「皇王陛下を狙ってついでなのか、あるいは陛下こそがついでだったのか、いずれにせよ。精神魔法の使い手が必要だった。ローランはその中でも有数の実力だったから、この場にさえ選ばれた。そんなとこだろう」

「で? アタシはどうやって操られてて、あの子が証拠になることの証明はどうするつもりなの??」

「・・・・・・精神魔法の中には感応と呼ばれる魔法がある。感覚や記憶を共有できる魔法だ。それをローランに使い、乗っ取り先となった人物の元の人格を複製し、乗っ取った体に精神操作かけて上書きする。精神魔法はその性質上、元々相性に大きく左右される魔法だ。ともすれば、器と精神が本来同一のものであれば、引き寄せ合うような反応があってもおかしくはない。異物であるお前の精神は上手く隠されるってわけだ」

「そんな方法よく思いつくわね? つまり、アタシはアタシであってアタシじゃないってわけ? 意味わかんないじゃない? それに、あの子が証拠になるって証明はどうしたのかしら? それともアンタには無理だった?」

「この方法の一番の被害者はそこにいるローランだ。感応魔法で人格の複製なんつー無茶をやらされ、更にはその人格を精神操作で動かすことを強制させられてる。だから、てめぇが動けと命じない限りはピクリとも動かねぇ。そうだろ? 今も、違うなら否定出来るはずだ」

「ですって! 言われてるわよ?」

「はい。もちろん。違います」

なんの意味もない。ふざけたやり取りだ。