作品タイトル不明
side―――カーナ・Y・ヨーギフリード
「なぁ自由騎士。アンタの部下、どこ行った?」
不意に放たれたその問い。
違うのッ‼ 皆ここへ来るまでに―――ッ‼
そう声に出そうとして、でも出来なかった。
「この場には不要であろう」
「だったら、なんのために連れて来た? 道中、それほど手間取ったのか? 俺達の方には100をゆうに超える人数の兵が居たわけだが・・・それでもアンタの部下、全員を失うほど? この階に待機してる奴さえ居ねぇのは、そういうことでいいんだな?」
そういうこと・・・って、どっちの意味よ?
アンタの言う通り苦戦したからってこと? それとも、ミレお姉様の言葉を真に受けたの? この混乱をフリードリヒが画策してただなんて・・・。
そんなわけないわよ。
だって・・・フリードリヒがそんな、恩人を裏切るような人のわけが――。
「どう取ってもらっても構わんさ。私達に必要なのは力だ。なにを信じるかまでを強要するつもりはない。我が軍の部下達は、求められる働きをした。その結果ここへ至ることはできなかったが、そこに思惑などありはしない」
「下手な言い訳よね~? 邪魔だから置いて来たって言えばいいじゃない。アタシ達との会話から、真相を知られちゃったら敵になっちゃうものね? だから仲間割れなんてものを起こさせて置いてきたんでしょ? やらされた子も可哀想よね。将軍様の言葉を信じて非道な真似までしたのに、実は――なんて・・・ああでも、もう死んじゃってるんだっけ? じゃあ、いいのかしら?」
そうだ。
ここへ連れて来た兵達の人選はフリードリヒが自ら進んで行った。
その中から、裏切者が出たのは事実。
でもそれはフリードリヒ自身が追っていた、あの症状に関係してて。
だからこそ、なにかあった時のために手元へ置いておきたかったはずなのよ。
フリードリヒは、アタシには全部を話してくれた。
この国で起こっていること。帝王や前将軍達の最期。あの症状について。
そして、あの症状が国民達にも出ていたんじゃないか? という疑念も。
その上でアタシに、新しい帝王になって欲しい。この国を正しい方へ動かして欲しい。そう言われたから、私は―――。
「なるほどな。裏切りによる仲間割れは必要で、仲間自体は必要じゃなかったわけだ? にもかかわらず、俺をここまで引っ張ったのは力が欲しかったからだぁ? ふざけるのも大概にしろよ?」
そう告げる顔に表情はなかった。
けど、ただ痛いほどの怒りだけが這い上がってくる。
いったい・・・なにがあったのよ?
「この国は危機に瀕していた。ここ数年・・・ずっとだ。この帝都でさえ、賑わいというものを忘れるほどにな。しかし、その原因がわからなかった。なのに、今になってその熱が戻っている。ゼネス。貴公にはこの帝都がどう見えた? 屍の都のように見えたか? それとも、華やぐ都に見えたか? どちらであったとしても、それは幻だ。誰かによって操られているのだ」
「誰かって誰のこと? もしかして~それが教祖の仕業だって言いたいの? でもそれなら、ここでこんなことしてる場合じゃないわよね? だってここに教祖はいないんですもの‼ それとも~? この中の誰かが教祖だって言いたいの? その証拠は?? どうやって正体を隠してるのかしら??? 言っとくけど~、望福教はなんの関係もないからね~? つまらない演技は辞めましょう? ね??」
「そうだな。これ以上くだらねぇことに時間を費やすつもりはねぇ。さっさと話を終わらせるぞ」
ゼネスがフリードリヒを睨む。
どうしてこうなってしまったのか・・・アタシは、私としては―――。
お互いに前を向いて、手を取って歩んでいきたかったのに。
争いだなんて望んでなかった。話し合いに来たのに。
帝王になんて、成れなくてよかったのに。
「幕引きの時間だ。トカゲ野郎。いい加減、お姫様ごっこは辞めやがれ‼」