軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

根持れ、亜我れ

「ゼネスさんが迷ってしまうのも納得ですガ、どうしましょうカ? どちらにせよ、ここに残っているわけにもいかないかト・・・上階を目指すにせヨ、脱出を選ぶにせヨ、ココは行き止まり。来た道を戻らなくてハ―――」

「そうじゃねぇから迷ってんのさ。上へ繋がる階段はすぐ近くにある」

「そうなんですカ⁉」

「ああ、この階の形は変わってるだろ? 客間を並べるだけにしては入り組んでる上、途中から廊下の角度が変わってる。そのせいで部屋の形や広さにも差異がある」

「その通りですネ。しかし、それはあえて客間に差を設けることで、お客様に格付けを理解してもらうための工夫だと思っていたのですガ・・・」

爵位や、当主かの違いを部屋の広さや形で表し、その中では誰が格上なのかを知らしめるための配慮。

「それも間違いじゃねぇんだろうが、地図をよく思い出せ。最終的に廊下の先が階段の直ぐ近くに来てただろ? しかも、廊下と部屋と階段の間には、これ見よがしな隙間まで用意されてやがった。まず間違いなく通路がある。この階段は上り切りで、且つ出口の周辺が壁だったからな。裏に上り階段があっても不思議じゃねぇ」

「よくそんなところまで覚えていましたネ」

そう言われればそうだ。なぜか頭に焼き付いたように覚えている。異様にあの空間が気になったというか・・・。

「ミーにはそこまで詳細な図面の記憶なんてありませんカラ、確かニ。とは言えませんガ・・・だとしたら、なぜ迷っているのでしょう?」

「・・・言ったろ? 安全の保障ができねぇんだよ。サン達が居るつっても、この人数だ。全員を見れるわけがねぇし、部屋の広さもそうだ。50人も入れとける部屋はねぇ。それができるとすりゃぁ下の階だが・・・」

「今度は守るべき箇所が多くなりすぎるト。そういうことですネ」

「サン達がいくら強かろうが、50人を防衛しながら本領を発揮できるとは思えねぇしな。ここにいる全員の安全を考えりゃ、抜け道から脱出が硬い」

「デハ、我ら部族の安全を無視して上へ向かった場合はどうなりますカ?」

「ローランが居る、居ないにかかわらず教祖との対面になるな。ついでに、どういう形であれ、なにかしらの決着がつく。カーナ側が勝てば、大手を振っての帰還ができる。部族の保護は最初に確約させたからな。それが破られねぇ限りは、これが一番の安全策ではある」

「そうでなかった場合―――望福教側が勝利した場合ハ・・・?」

「どちらにせよ教祖の奴は始末する。だから憂慮すべきは、上に到着した時点でカーナ側が敗北していた場合だろう。その場合は勝者無しで事態の収拾が付かなくなる可能性が高い。ここからの脱出にも注意しなきゃならねぇが、それ以上に皇国までの道程がどうなるかだ。俺達が城にいたことがバレりゃ、誰から命を狙われてもおかしくはねぇからな。そういう意味じゃ両極端だ」

他国の継承戦争に居合わせるだけでも面倒なのに、その最中に継承者が共に消えてみろ。国家転覆の容疑を掛けられても文句も言えねぇ。

「一カ八カ・・・と言っても。そうしなければ本当の意味での全員にはなり得なイ」

「そっちを選んだとしても、確実にローランを救えるとは限らねぇがな」

「そこは信じるしかありませんカラ。仮にローランを救えなくとも、理由もなしに見捨てたりはしなイ。そうではありませんカ?」

「そうだな。逆に、理由さえあればこの手で殺すこともある」

「そうならないことを精霊に祈りますヨ」

穏やかな顔でヤーレンが返す。俺も、そうであればいいとは思うさ。

「トいうわけなので、ゼネスさんは上を目指してくださイ。我ら部族は仲間を望みます。そのためならば安全や危険ナド、無視できますカラ」

それでいいのか? と問う必要はなかった。

ヤーレンとの会話は聞かれていた。そして、それは部族同士で伝達され、共有されていた。それをヤーレンは知った上でそう言ったのだ。

仲間を選ぶと。

「わかった。サン! ここの守りは任せるぞ!」

「それはいいけど、大丈夫なのか? 魔力は。随分と消費しただろ?」

「どうにでもなるさ。それよりライザード、お前はどうする?」

「連れて行く気か⁉」

「本人次第だ。だから聞いてる。なにがあっても後悔しねぇって言えるなら、置いていく理由はねぇ」

「・・・この僕に、なにを見せるつもりです?」

「現実だよ。これはあくまでも王位継承戦だ。他人事じゃねぇよな?」

「さっきの言葉もそうですが意地の悪い解答ですね。なにがあっても・・・ではなく、なにを見ても。王位継承戦を現実というのは、この僕が劣っているか、あるいはこの僕を凌ぐ優れた誰かが現れる想定じゃないですか?」

そう言いつつ、やれやれとライザードは首を振る。

「ですが、貴方がそう言うのであれば付いて行きますよ。必要のないものに、貴方はどうするかなど聞かないでしょうから。例えそれが誰かの死の瞬間であったとしても、きっちりこの目に刻んでやります。きっといつかのためになると思うので」

「もちろん私もゼネス様にお供します! もう一度。教祖様をこの目で確認して、その上でやっぱりゼネス様の方が正しいと言ってみせます‼」

予想通り廊下の奥には通路があり、その先は階段で。

それ以上迷うことなく、俺達は上を目指した。