作品タイトル不明
side―――サン
・・・らしくない。
ライザード様のそう言った理由がなんとなく理解できる。
ゼネスさんはなんというかこう、大胆だけど慎重に考えた結果に従ってるというか、煮詰めきった案で余裕をもって遂行しているというか・・・。
安心感があるんだ。
無茶苦茶を言っているように聞こえても、実はちゃんと考えてたんだなって、そういう実績みたいなものがあるからか、付いて行っても大丈夫なんだなって納得できた。
今までは―――・・・・・・。
でも、今はどうだ?
急ぐ必要が出てきたのは聞いた。
皇国でも望福教がまた動いたみたいだから。
ただ、どうもそれだけじゃないような・・・?
階段を駆け上がる背中には焦燥感が滲み出て―――いる、ような気がする。ほんの少しだけど。
むしろそれ以上に感じるこれは・・・・・・怒り、かな。
3階を通過する方法が力押し一辺倒なのもそうだけど、さっきの言葉。
『それじゃぁ俺の気が済まねぇからだよ―――』
何に対して気が済まないのか?
答えはそこに在る・・・と思う。
どうしてそんなに怒っているんだ? なんて、聞いたって答えてくれないだろう。
そこまでの仲間意識を持っていてくれてるとは思えない。いや、仲間意識というよりは信頼関係を築けなかったというべきか・・・。
俺達はゼネスさんに凄くよくしてもらったと思ってる。
ここ帝国での生活でも、俺達の事情や都合を考慮してくれたし、ガルドナットでの事だってそうだ。色んなことを教えてくれて、俺達の問題点にも遠慮せずぶつかってきてくれた。
そのおかげで、俺達は前より、もっといいパーティーに成れたし、全員が個人A級というところまでこれた。
もっと遡れば、蟻が大量に発生したあの事件の時から。A級パーティーまで躓くことなく駆け上がって、調子に乗っていた俺へ現実を見せてくれたあの時から。お世話になりっぱなしだ。
だからもし、ゼネスさんが相談してくれたなら、出来る限り力を貸したいと思ってる。
けど・・・。
振り返ることなく、止まることもなく、階段を突き進むその背中から――そんな可能性はないと、感じ取れてしまう。
そして、それは間違いない事実なんだろう。
それが明確化したのは3階へ入ってからだ。
廊下を突き進む俺達の姿は、舞踏会用の広い部屋から丸見えで。当たり前すぎるけど、一番大きな出入り口を前にする頃には、かなりの数の兵士達に待ち構えられていた。
そのまま突っ込むわけにもいかず、立ち止まれば最後。
窓や別の出入口から出てきた兵士達に廊下で挟まれる形になる。
これは分かってたことだ。
ここまでは、分かってたんだ。
分かってなかったのは、ここの兵士達には自我がなさそうだということ。たぶん精神操作の魔法をより強く受けてしまったせいだ。
それとなによりも、ゼネスさんが本気だということを・・・それだけ本気で怒っていたということを。
俺は、俺達はまだ、理解してなかったんだ。