作品タイトル不明
帝国へ。五壁
周囲を警戒しながら、フッチが発見した階段を使って1階まで降りる。
3階が静かなのはもちろん。2階からも慌ただしさは感じられず。
しかし、流石に1階まで来るとあちこちから音が聞こえてくる。
うおぉぉぉぉおおっ! というような叫び声や、走る足音、応援を呼ぶ声。
ほとんど無かった人の気配さえ、そこら中から感じられ、そのまま階段に留まるのも、廊下を下手に歩き回るのも、発見の危険が高いと判断。
直ぐに直近にあった窓から外へ。
壁に張り付きながら、城の中と外を同時に警戒する。
「暗くて気付かなかったけど、あの窓からの景色って最悪だったんね。窓の意味がないんじゃない?」
「日光を取り入れるための窓なんだろ。こうも城壁が近いんじゃぁ、それもどこまで役に立ってるのかって感じだが・・・」
城の中を先行して窓まで全員を誘導。そこから最後まで見張りに立ってから合流したフッチが、外へ出て早々に城壁を見た感想を述べる。
「おかげで外への警戒を緩めていいのは助かるけどさ。お城ってもっとこう、華やかなものじゃないんだ? 木とか草とか花とか」
「庭じゃねぇんだぞ? 侵入者が身を隠せるような場所を作るわけねぇよ」
「それもそうなんだろうけど、こんな目の前に壁があるんじゃあんまり意味ないよね? 壁の頂上から飛び移れるんだし・・・」
「その分、下に見張りを置く必要がなくなるって考えたんだろうさ。城壁も、コレ1枚とは限らねぇしな」
「でもそうなると、この壁――どこかでお城と繋がってたりしないかな?」
「・・・渡り廊下だといいな」
壁の上を警戒するなら、そこに兵を置くのが一番早い。
そうするために城と城壁を繋げること自体は珍しくもねぇんだが、そうなると城の外側を回って反対まで行こうっつー算段が潰れる。
その辺りの事も。もっと突っ込んで聞いときゃよかったのかもしれねぇが、時すでに遅しっつーか・・・地図があるから――と思ってたんだが、生憎。城の外のことまでは載ってなかった。
壁までの距離も、あるであろう庭のことも。
なんなら、5階部分にあると聞いたテラスのことも書かれてはいない。
城の内側しか載っていない完全な間取り図だ。それでも、地図と呼ぶほどにデカくて広いのが厄介極まりねぇ。
なぜかと言えば、
「――走るぞ‼」
それだけ移動が面倒だからだ。
身を屈め、窓から落ちる光と影を頼りに素早く動く。
人影があるときは止まり、それ以外の時は走る。
子供のライザードが遅れるかと思っていたが、その小柄さが逆に功を奏し、屈む必要がなかったことと、子供らしい溢れる体力で全然ついてこれた。
むしろ遅れたのはヤーレンとマルチナ。そして、サンとホウだ。
「リーダー! 情けないです‼」
「仕方ないだろ⁉ 俺の身長だと、どうしても走り難いんだから‼」
「ホウも、もっと運動するべき。普段から」
「そんなこと言われましてもね! 魔法職なんですって!」
パーティーの男共が不甲斐なく、タンとスイが嘆くように揶揄する。
とはいえ、この中腰は確かにキツイ。
窓より低く身を屈めなきゃならねぇわけだからな。
普段、そんな恰好をすることがねぇ非戦闘職のヤーレンとマルチナはもう虫の息だ。
それでも疲れを誤魔化しつつ進んで聞くと、
「案の定―――・・・だね」
「ライザード。地図、出せるか?」
バッチリ正面に壁が現れた。
窓がなくなったことで警戒してなきゃ顔面から突っ込んでたかもな。
「それはいいんですが、ここがどこだかわかるので? この暗い中で目印を探すのは難しいかと思いますが・・・」
そう言いながら寄こした地図を壁にあて、魔法で照らして位置を確認する。