軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝国へ。五合

「客間へ行くためには1階まで降りるしかねぇんだな?」

「はい。もしくは5階まで登ってしまうか・・・ですが、ゼネス様はこの地図が将軍様からライザード様へ手渡された時の言葉を覚えていらっしゃいますよね?」

「あまり真に受けるな・・・だったか?」

「そうおっしゃっていたはずです。なのでもしかしたら・・・・・・」

「さっきまでの話が全部的外れだった時の予防線なんざ必要ねぇよ。恐らく、気にするほどのことでもねぇだろうしな」

大胆な推理を披露してみたものの、いざとなったら自分の間違いが怖くなったのか、表情を陰らせていたマルチナが首をかしげる。

「アイツが真に受けるなっつってたのは、部屋名や数、大きさや内装なんかのことだ。敵が占拠してる城なんだ。配置換えや間仕切りの追加ぐらいはあって当然だと思えっっつー警告でしかねぇよ」

そういう意味じゃぁ地図に書かれてねぇ通用口みてぇなもんもあるかもしれねぇが、使ってきた隠し通路同様、それがわかってちゃ意味がねぇからな。

探す手間と無駄に終わった場合の時間を考えりゃ無視でいい。

「わざわざ1階まで行く必要が? さっきの階段のように、壁を変質させてしまえば良いだけでは?」

尤もらしい指摘がライザードから入るが、

「それも考えたんだがな。よく地図を見てみろ」

「どういう・・・? ッ! これって‼」

この城の設計は本当によく考えられているんだろう。

「俺達が居るこの場所から壁を壊して繋がるのは、舞踏会用の広すぎる部屋。ただでさえ多い出入り口、外にまで出られる大窓、流石にここが無人なんてことはねぇだろう。強行突破も出来なくはねぇが、結局は階段で詰まる」

上下階から応援が来てしまえば、それだけで階段の通行は難しくなる。

「2階を分断してる壁も、部屋が背中合わせになってやがるせいで気付かれないで済む可能性は低い。侵入する部屋が両方とも無人、且つ廊下でも目撃されない場合のみだからな」

「2階と3階で廊下の位置を入れ替えるだなんて・・・なんのためにそんなことを・・・」

「この部屋もそうだが。3階のこっち側には、ほとんどが物置みたいな部屋しかねぇだろ?」

「そうですね。それが?」

「2階と4階はどうだ?」

「普通の部屋が多いですね・・・廊下や部屋の位置もほとんど同じ」

「そう、3階はその2つが干渉しないための緩衝材なんだろう」

「どういうことです?」

「4階より上で寝泊まりするのは王族と国政を担う貴族様だろ? 2階以下には兵士やそれを指揮する貴族士官。それこそ暗殺事件なんかあった日にはどうなることか――」

「そういうことですか。寝静まった後の時間に、この廊下を歩くようなことをすれば・・・」

「上下階から気付かれやすくなってるってことだな」

その甲斐空しくも暗殺は起きたわけだが、抑止力としての意味はある。

現に俺達も困らされているわけだしな。

「ではやはり1階まで行かなければならないと。そういうことですか・・・しかし、1階には兵が集まっているのでしょう? しかも中央には大広間があるわけですから、状況は変わらないのでは?」

「フリードリヒが作戦通りに外を動かしてあるなら、ちゃんと騒ぎになってるはずだ。その分、紛れられるだろ。なにより1階だからな。回り道はやりやすい方だ。それにもし見つかっても。下から上がる分には、それほど苦労しねぇよ。応援として降りてきた奴らを先に片付けるわけだからな。上層階に置いておける兵力には限界がある」

「それはそうかもしれませんが、1階にも兵は居るでしょう? 囲まれたらどうするつもりです?」

「狭い廊下で囲むのは無理だ。精々挟む程度。それも有効じゃねぇ。挟んだところで身動きできねぇからな。一番面倒なのは階段での待ち伏せだが――まぁ、どうにかするさ」