作品タイトル不明
帝国へ。五光
「どういう意味だ?」
「そのままの意味です。このままでは私はただのお荷物。この帝国へ付いて来た意味がありません‼ 私もゼネス様のお役に立ちたいのです‼」
「それはいいが・・・なんの役に立ちたいってんだ?」
ある程度ライザードを見ててくれるだけでも良かったんだが・・・、なにかできるって言うんなら聞くぐらいはしよう。
「ライザード様。お城の地図をお貸しいただけますか?」
そう言って手を伸ばし、マルチナはライザードから地図を受け取る。
「ゼネス様のお考えをご指摘させてもらったのは、私の発言に説得力が欲しかったからです。ただ言葉にするだけでは、闇雲に出ただけと思われてしまうのではと危惧いたしました」
そしてそれを全員に見えるよう、床へ広げながら話す。
「ですが、これはただの勘などではなく。望福教の元信者として、さらに言わせていただけば、信頼できる洞察力を持った人間の発言として提案したかったのです」
間取り図というにはデカすぎる城の内側を詳細に記したその紙の、
「このお城は籠城戦になることも想定されているのでしょう。城塞としての機能も多分に持ち合わせていて、1階には兵士の方々が待機する場所などがあちこちに点在しています。武器庫もありますね。ですが、それとは反対に。居住としての機能や政治のために人を集める区画も用意されています」
該当する場所を指で示しながら、マルチナは話を進めていく。
「それらが密接した関係を保ちつつも、お互いに干渉しないよう緻密な計算の基に、このお城は建てられているのでしょう。よく見たら同じ階でも直接通じていない場所がたくさん。廊下や部屋の壁1枚ですが、その効果は絶大なのが見て分かりますよね。なぜなら、客間と会議場が隣り合っているのですから」
そうして指を動かしていった先が、俺達が向かうはずだった4階の会議場と、それと隣り合う客間となっている部屋だった。
この会議場っつーのは、この帝国の政を決める場所であるらしい。
そのため、王が生活をする最上階である5階にほど近い場所へ設けられていると、将軍から聞き取りをしていた。
そのこと自体に不審はない。
王政であれば、政の中心は王で。その王に近い場所に議場があるのは然るべきこと。
だが―――、その重要な政を決める会議を行う部屋の隣が、外から来た客を招く部屋ってのは・・・確かに気掛かりだ。
しかも、
「それにこの部屋なのですが・・・客間というには広すぎませんか?」
そうだ。これじゃぁ客間っつーより広間だ。
会議場とほぼ同じ大きさだぞ。
「帝国には宗教信仰が根付いていない。そのせいか礼拝堂やそれに近い行為を行える空間がこの部屋以外には2箇所しかありません。1つは舞踏会を開くためと思われるこの円形の部屋。もう1つは1階奥にある大広間。ですがこの2つは出入りできる箇所が多いので、私は信者が集められているのなら。広く、それでいて入り口が1箇所しかないこの不自然な客間だと思います」
そう言い放つマルチナの眼には確信の籠った強い光があった。
「ちょっと待ってくれ。信者っていうのは―――・・・・」
「もちろん望福教信者のことです。あるいは、その信者に利用されている人達。つまりヤーレンさんと同じ部族の方々ですね。別行動をする理由を共有済みとゼネス様がおっしゃっていたのは、最低限の目標として、あらかじめ全員で意思統一していたから。焦らせないようにということや、雰囲気作りというのも同じことですね。焦燥に駆られてしまっては、失敗してしまうかもしれませんよね?」
「なぜ・・・わかったのですカ? ゼネスさんは注意しろとしか言っていなかったかト・・・」
サンは戸惑い、マルチナは笑い、ヤーレンは驚く。
「ゼネス様のことはよく見ていますから」
「それで洞察力を証明したつもりか?」
「どこか間違っていましたか?」
「いや、間違っちゃいねぇよ。こっから先は手探りのつもりだったのが、多少ながら信憑性のある話程度にはなった。それぐらいの力があったってのは認めるさ」
「ああ‼ ゼネス様に褒められ―‼ 恐悦至極という言葉はこのために⁉」
「別に褒めてはいねぇよ」
マルチナの意外な力によって、目指す先が決まった。