作品タイトル不明
帝国へ。五指
「――うむ。ならば、突入開始だ」
列が停滞して数分。
前方からの報告を聞いたフリードリヒ将軍が告げる。
その決定を折り返し、最前線へと伝わった頃。列が再び動き出す。
「姫様。いよいよです」
「・・・・・・わかってるわよ」
前の背中に遅れないように俺達も続く。
螺旋階段の終点は部屋の床。
つまり、登り切ったら自然と部屋へ出るような床穴となっていた。
出てきた部屋は物置か? 宝物庫というには煌びやかではなく、書庫というには物々しい。兵士用の装備などが、まばらに保管されていた。
「廊下にも人の気配はありません」
「予定通りだな。我らはこのまま上層階を目指す。障害は最小限の力で突破する。小隊は各々の順番を今一度確認し、時が来たならば速やかに遂行せよ。良いな?」
「「「はっ!」」」
大きくならないように絞った声で、一致団結した返事をする。
順番ってのは敵の足止め役のことだろう。
必要となった時に1人、また1人と。敵を引き付けつつ本体から離れる。そうすることで、少ない戦力で敵陣を突破しようという考えだ。当然ながら、戦場で孤立すれば生存率は著しく低下するが・・・それも覚悟の上か。
カチャリ――と静かに扉を開けて廊下を覗き見る兵士。
異常がないことを確認して先頭が進攻を開始。
その兵士の合図をもって、続々と進んでいく。
初めこそ作戦通りに誰にも見つからずに居られたが、
「侵入者を発見‼ 応援を‼」
3階から4階へと続く階段を前にして、城内の兵士と初遭遇を果たす。
「皆さん! ここは―――」
そう言って前に出ようとしたのは、下水道で俺達を将軍フリードリヒの所まで案内した青年。
だが、
「ここは俺達が受け持つ。先に行け」
俺は青年を手で制して背中を向ける。
「どういうことだ? 貴公らをここに置いていくわけには―――」
「事情が変わった・・・っつーより、お前の失策だぞ。装備に目印をつけなかっただろ。どっちも同じ帝国軍の装備じゃ見分けがつかねぇよ」
「いや! 鎧の形が若干違うだろう‼」
「見慣れてねぇ鎧の違いなんざ、遠目で見て分かるかよ‼ 色なりなんなり、もっと工夫できただろうが‼ とにかく! 元々、戦力不足なんだ。同士討ちの可能性が出た以上、俺達は後から向かう! 上層階を制圧しろとは言わねぇ! その代わり近付く奴は片っ端から捻じ伏せる! それでいいな?」
「~~ッ‼ 致し方あるまい。ただし、この階段から敵が登ってくることは想定せんぞ? 任せていいのだろうな?」
「この階段は崩す。地図も持ってるから迷いはしねぇ。構わねぇよな?」
「――よかろう‼」
「だったら、さっさと進みやがれ‼」
最後まで心配そうな表情を浮かべていた青年を見送ると同時に、石の階段を砂のように変質させて消し去る。
これなら騒音も鳴らさず、破壊するのと比べても、魔力を消費せずに済む。
「それで? どうするんだ?」
「取り敢えずは、目の前の敵に対処するしかねぇだろ」
「その後は?」
「目標の達成を優先するさ」
サンと軽口を叩いている間に、俺達を見つけた兵士とその応援は、合わせて20人程になっていた。流石に敵の本拠地。一瞬で集まる人数が違う。
適当に痛めつけていけばその内、欲しい情報が手に入ったりしねぇかな?
なんて、甘いことを考えながら、ライザード、マルチナ、ヤーレンの3人を背中に庇って構えた。