軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝国へ。四進

そろそろ真夜中に差し掛かろうという頃。

慌ただしくしていた将軍も、激励を声に出すばかりとなった。

いよいよ軍が動き出すようだ。

「少し早いが、寝ているものが居たら起こしてくれ。姫様を迎えて最終確認の後に隠し通路へ向かう」

そう言われて、ライザードやスイ達を起こして待つことしばらく。

「ちょっと遅れたかしら? 待たせて悪かったわね。慣れない格好のせいでちょっと動き難くくて・・・」

聞いてもいない言い訳を携えてカーナが登場する。

その言い訳となった格好は豪華なドレスに一見飾りにしか見えない胸当て、頭上には風格を感じさせる冠まで頂く、まさに王族然とした衣装をしていた。

「わ! すごく綺麗ですよ‼」

「ええ、職人の本気が窺えます。まぁ、これから王の座を奪いに行くのですから、当然と言えば当然ですが・・・」

起き抜けに感心するマルチナと、欠伸まじりとは言え皇族のライザードが、そう評するぐらいには本気度が窺える格好。

「奪うとか言わないでよ。せめて上品にいただくと言ってほしいわ。不正を働いているわけでもないんだし」

「いただくというのなら、それこそ前王から譲り受けていなければならないでしょう。直系であっても、継承順位はただの数字ですからね。王の気分次第で幾らでも反故にはできますし、現にそう言った例も少なくありません。方法など、選んでいては王になどなれませんよ?」

ねぇ?と俺に同意を求めるライザードの視線。

その言葉遣いに拒否反応を示したカーナだったが、当のライザードはそんなことを歯牙にもかけず、まるで見てきたかのように、自分に降りかかった不幸だとでも言うように、俺へ向けて発言する。

それは1つの宣言だ。

自分は例え奪い取ってでも王になって見せるという。そういう意思表示。

「別に俺だって不正を行ったわけじゃねぇだろ。それにあの話は断ったって言ったじゃねぇかよ。根に持つようなことか?」

「いえ、あくまでもこの僕の心情の話であって・・・貴方にどうこう言ったつもりはありませんよ。ええ、全くありません」

したり顔でしらばっくれるライザードになんて言ってやろうかと考えていると、

「ちょっ、えッ⁉ アンタも王族だったの⁉ 地方の貴族って言ってなかった⁉ それとも私と同じような出生だったわけ⁉ だからフリードリヒが――」

などと、見当違いな方向に話を飛躍させるカーナ。

「俺は陛下の血は引いてねぇよ。公爵に嫁いで間接的な親類者になってから王にならないか――・・・って陛下から打診されただけだ。生憎、きっぱりとお断りさせていただいたが」

それにこんなもん冗談の類だろう。やるにしても、王にするならジーナの方だ。アイツはあれで皇族の血を引いている公爵だからな。

そうなったらそうなったで最悪だなとも思うが・・・。

「アンタ、そんなに優秀だったの・・・? なんかもっとこう、色々悪い奴だと思ってたんだけど・・・だからフリードリヒからアンタの名前を出された時も、まあいいかで納得したのに」

「お前。人のことをまぁいいかで巻き込みやがったのか?」

「どうせそっちからも用があったんだからいいでしょ⁉ 別に!」

違うとは言い切れねぇが、名指しさえなけりゃ帝国なんぞへは来なかったがな‼ と心の中では抗議する。口に出さないのは優しさではなく不毛だからだ。

「はっはっは! ですが心強い限りではありませんか! 姫様‼ 王位を託されるような実力者と、王へなるための心構えを説いてくれるものが味方してくれているのです! 恐れず参りましょう! それが帝国の、皆のためになります故‼」

将軍は高らかに笑い、

「ま、まぁ? 実力は知ってたしね? そこは疑ってないわよ・・・でも、奪うて言うのはちょっと・・・申し訳無く感じてしまうわね」

対照的にカーナは姫らしく、しおらしい態度となる。

これから女王になろうってやつに今更しおらしくなられてもな。普段通りにしてりゃぁいいのにと。

俺達は直前まで、そんなことを考えていた。