作品タイトル不明
帝国へ。四方
「これで大方の話は済んだが・・・決行はいつになる? 伝達や準備も考えると、数日はかかるか? その間どうするか――・・・」
この発言に一番嫌そうな反応を示したのはライザードだった。
こんな場所で数日も暮らすことには耐えられないと言いたげな表情。
しかしそうなると身を隠す方法を――なんて考え自体が、結論から言えば不要だった。
なぜなら、
「決行は今夜だ」
将軍があまりにも意味不明な事を言い出したからだ。
「は?」
思わず耳を疑った。
「聞こえなかったか? 城への強襲、及び攻略作戦は今夜、決行する」
あんぐりと口を開けていたのは俺だけじゃねぇと信じたい。
「聞こえなかったんじゃねぇよ。あまりにも馬鹿過ぎて聞き返したんだ」
「そうか・・・可哀想にな」
「俺が馬鹿だっつってんじゃねぇんだよ‼ 作戦の伝達、統率の徹底、準備や再確認の時間だって必要だろうが‼ どうするつもりだ⁉」
「言っただろう? ここにはここの、だ。この休憩所は1つしかないわけではない。浄化装置もな。故に、同じような街は他にもある。姫様はそちらに居られるが、この休憩所同士には連絡が取れるように仕掛けがある。それがこの天井の穴だ」
指し示す動きにしたがって見上げれば、天井にはいくつかの穴が開いているのがわかる。説明によれば、それぞれが別の休憩所へと繋がってり、魔法で起動していれば、声はその先へと届くらしい。
尤も、遠すぎればその限りじゃねぇらしいが、どうにもここは中央に近い休憩所のようで、指揮官に該当する全員へ今回の作戦変更は伝わっているということだ。
「ここへ来てくれてよかった。場合によっては姫様が出迎えていた。そうであったならば、しばらく聞くに堪えない会話が続いたやもしれんからな」
はっはっはと笑うが、それならそうと初めから言っておけよとも思う。
隠すほどの事情も、無くはねぇんだぞと、心にだけ留めておく。
「この中じゃぁ時間感覚だけで正確な時間はわからねぇが、今何時だ?」
「もう日も暮れているが、まだ夜半には遠い。夕食頃だろう。可能であれば仮眠でもとっておくがいい」
「夜襲はそんな真夜中から動くのか?」
「いいや、元より明け方が狙いだ。日が昇る1時間ほど前に討ち入る」
それならまぁ仮眠はしておくべきだな。むしろ早起きをするのに近いが、時間はある。あくまでも、俺達には・・・だがな。
陽動部隊は真夜中から動くだろうし、最初の突入部隊も似たようなもんだろう。
それと、
「本気で付いてくるつもりか?」
「もちろんです。この僕が決めて良いのでしょう?」
ライザードにとっても。
「そうは言ったが直ぐに決行だ。覚悟を決める時間もねぇぞ? 大丈夫なんだろうな?」
「覚悟なんて、この帝国へ入る頃には既に決めていましたよ。今更ですね」
そう言い切る顔に嘘は感じないが、かといって誠実さも感じられない。
つっても、まだ死ぬことの意味や、その現実が正しく理解できてねぇだけかもしれないが。
「本当だろうな? 死んでも文句言うなよ?」
「死んでしまったら文句は言えませんよ。それに、この僕の前で死んだふりなんて言う趣味の悪い行為をした人の言葉とは思えませんね?」
そういえばそんなこともあったなと思い出しつつ、
「今回もふりで済むかはわからねぇぞ?」
「ならそんなこと、しなければいいのでは?」
「それで済むならな」
「済ませて貰います。それとも、初めから出来ないと諦めているとでも?」
それを許さないと言ったのは誰だったか? そんな表情で挑発するようにライザードは言う。
そんなことを言ったかどうかは問題じゃぁねぇ。こんな態度を取られるような接し方をした。それが答えだ。その責任が問われるのならば・・・俺はただ、果たさなければならないのだろう。