作品タイトル不明
side――フリードリヒ
本当のことを言えば、それほど期待していたわけではなかったのだ。
所詮は他国のこと。しかも敵国だ。少なからず昔の俺と関係があっても、そこまで踏み込んで協力してくれるなどとは思っていなかった。
最悪でも情報のかく乱だけでもと、それぐらいでも構わないはずだった。
しかし。帝都まで1か月半。途中で姿を眩ませるようなこともなく、なによりこちらの要望通りの仕事までしてくれた。
その上で、だ。
俺は彼らを戦力として見ていた。
ここまで十分に協力してもらっておいて尚、それ以上を求めた。
こちらからは頼まれた仕事の1つも完遂できていないというのに・・・。
なんと業の深い。
だが、期待したくなるのだ。
それだけの働きをする。
そして、間違いなく強い。
皇都の迷宮でのこと、冒険者ギルド本部でのこと、ドラゴンとのこと。
どれをとっても並び立つものなどいないのではないかと思うほどの力を持っている。
そればかりか、会って話すたびに感じさせられる勘の良さ。
『苦労したのはお前じゃねぇだろ? なぁ、将軍?』
『望福教は精神操作の魔法を使う』
『貧民街の連中か。戦力に数えてるのか?』
『強襲。つまり、城はすでに占拠されている』
必要な情報の選別や、そこから下す状況の判断の的確さ。
極めつけは、
『――断る』
一切の迷いを感じさせない否定。
その後に続いた交渉の優位を確保する言葉。
相手の嫌がる所を悉く引き当てる能力には舌を巻く。
まるで、絶対が存在しているかのような感覚であろうか。
舌戦で勝てるとは到底思えやしない場の掌握力、制圧力。もし手詰まりでも起こそうものなら、もはや笑うほかにない。
だからこそ、味方につけると心強い。
特に、敵が精神操作などという不遜極まりない魔法を使うのなら、この上ない。なぜなら、あれだけの精神力をそんな狡い魔法で捻じ曲げられるとは思わんからだ。
無論、こちらの思い通りに動いてくれるとも思わんが・・・・・・。
ただ、今のところは大きく逸脱したことはない。
偽装のために連れてきた行商人のためか、あるいは皇王陛下のお孫様のためか。
行商人はミョヒリー共和国から、同じ部族の仲間を探しに来たんだったな。その詳細な情報こそが頼まれた仕事の1つなのだが、不思議なほどに。それらしい情報はついぞ得られなかった。精々が真偽不明な噂程度。
もしかすれば・・・敵の中枢に組み込まれているのやもしれん。
では、お孫様の方はどうだろうか?
この帝国や望福教に因縁があるかと言えば、そんなことはないだろう。
まだまだお若いのだ。しがらみなど数えるほど。その中に親しい人物が居たり、宗教に強いこだわりがあるとは考えづらい。
その上で、あの即断。
お孫様を未来の皇王として期待している――? だからこそ、経験のために連れてきたということだろうか? そしてあわよくば、平和という財産すら与えようと・・・?
なるほどな。あの小さかった子供が、見上げるほど大きくなったものだ。果てを見るには切りがないほどに、偉くなったのだな。