軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝国へ。二夜

「それで、報告とやらはどうだったんです?」

「問題なく完了はしたさ」

「完了はした・・・ということは、何か気になることがあったんですね?」

「まぁ、色々とな」

「なにがあったんです?」

宿でそれぞれ今日の報告を行う中で、ライザードがおもむろに聞く。

結果として俺は、報告の報告というものをやらされる事になる。

「今回の件は唐突に始まったもんだと思ってた・・・あくまでも、こっち側の視点で、だけどな」

「この僕らが加勢している陣営、いわゆるカーナ派閥側から見た場合・・・ということですね? いきなり仕掛けられたものだと、そう思っていた」

違うんですか? と返されるが、明確に返す事ができない。

「・・・今日、連絡役として来たのは、恐らく公爵家の従者。メイド長とかそういう立場の人物だった。仕草も態度も、失礼に当たらないように、研究され尽くした振る舞いをするような、そんな人物だったわけだ」

「それはまた・・・随分ですね」

「そうだろ? そんな人間を、おいそれと外に出すような家はねぇはずだ。だが、そうだとすれば―――」

「公爵家が彼女、カーナ姫を擁立しようと協力していることになりますね」

「ああ。けど、おかしいだろ? 急遽始まったことだったら、こんな素早くは動けねぇ。カーナを預けられた公爵家ってのが領地を持ってるのか、そうだとしてどこに領地があるのか、俺にはさっぱりだが・・・事前の準備無しに軍との連携、ましてや俺達みたいな外部の人間と協力なんざ出来るとは、到底思えねぇ」

「あのカーナ姫が溺愛されてる可能性は?」

「考慮してねぇよ。確かめる術がねぇからな。だが、お前が似たような立場で養子に出されたとして、溺愛される自信があるか?」

「場合に寄りますね。よほど子宝に恵まれなかった家でなら――まあ」

「その程度だろ? 可能性としちゃ限りなく低いはずだ。そもそも本来なら、女に継承の機会はねぇと、あいつ自身が言ってたわけだしな。厄介者と思われてる方が妥当だろう」

連中としても俺達に必要以上のことは教えたがらねぇ。

カーナが出された公爵家の家名も、当主の名前も、その現状さえ・・・聞かされちゃいねぇ。

つっても、それ自体はおかしいことじゃない。

協力するだけの理由は既にある。だったらそれ以上は不要だと言われても食い下がれねぇ。

それを理由に協力を断っても、碌な結果にならねぇことが確実だからだ。

「ちょっと待ってください!」

そう言って止めたのはマルチナだ。

「その公爵家が、私達にどう関係するんです?」

「さぁな? だからこそ面倒なんだ」

「なぜでしょう? 関係の仕方がわからないなら、関係ないのと同じなのではないのでしょうか?」

「そうとは限りませんよ。なにしろ王権が絡んだ問題ですからね。後見人ともなれば、莫大な利権を得られるでしょうし、その中には捕虜の扱いなども含まれるかもしれません」

「捕虜・・・ですか? 私達が捕虜になると?」

「そうじゃねぇ。事が終わって俺達が捕虜になってんなら、俺達は負けてる。捕虜になるのは当然、負けた側だ。俺達が勝てば、望福教に付いていた連中が捕虜になる」

「それがどうしたのでしょうか?」

「あのな・・・忘れたのか?」

俺は少し呆れながらヤーレンを指し示す。

「俺達の目的は、帝国内で起きてる暴動の鎮圧と、それに参加させられてる身内の回収だ」

「事態をややこしくしてしまイー、申し訳ありませんネー」

「いや、構わねぇよ。ここまで順調なのはアンタのおかげだ。それに・・・俺自身にも、多少関係のある話だからな」

宮仕えをしていた魔法使いのローラン・C・トー。それと、冒険者ギルドの新米受付マーテル・トー。

この2人は個人的にも探している。

「す、すみません!」

「イエ、話がどんどん大きくなりますからネ。わからなくなっても仕方ありませんヨ」

「あ、ありがとうございます・・・正直その、さっきのメイド長? が来たからおかしい。というのも、わからないくらいで。本当にすみません」

しきりに頭を下げるマルチナに、ヤーレンが少々困り顔になりつつある。

これ以上謝罪が長引いても面倒なので、マルチナの声に応えるとしよう。

「メイド長が来るのはおかしいっていうのは単純な話だ。貴族学園にお前が赴任した理由と一緒だよ」

「私が―――ですか?」

「忘れたわけじゃねぇだろ?」

「はい、もちろんです。なにも知らない信者の中で、私が教職に就いていたからです」

「つまり、お前は都合がよかったってことだ。こうして望福教から離れても、命を狙われたりはしてねぇだろ? その程度の方が使いやすいんだよ。幾らでも代えが利くからな。技術や知識を修めようと思うと、どうやっても時間がかかる。時間を設けるにも金がかかる。だから、どうでもいいようなことなら、普通は使い捨てになってもいい人間を使う」

「それが、私・・・」

「望福教から見れば、な。なにも知らない信者の中で、っつーことは・・・なにかを知ってる信者もいるんだろう。そのなにかが都合の悪いことかもしれねぇ。それを避けて、補充しやすいのはどういった人間か? それだけのことだ」

「なら、今の私はどうでしょうか?」

「これから次第だろうよ。まだなにもやってねぇんだからな」

辛い現実を突きつけたはずだが、なぜかマルチナは楽しそうに笑っていた。

取り敢えず、話の腰が折られることは防げたが、なんでそんな表情になるんだよ。