作品タイトル不明
帝国へ。二問
「どうだ? モンスターの特徴は。もう慣れたか?」
「そんなに早く慣れるわけないだろ? 買った情報を精査してるところだよ。というか、見てたんじゃないのか?」
「見てたさ。お前が見てろって言うからな。だから、だろ? 苦戦はしてねぇようだし、早くもなにか掴んだのかと思ってな。なにしろ個人A級だ」
「別にみてろとは言ってないだろ? それに、からかわないでくれ。ゼネスさんだって個人A級だったじゃないか」
「ま、そうだな。で? 情報の方はどうだ? 掴まされてなかったか?」
「割高には感じるけど、嘘はなさそうだ。あの値段なら、もっと詳細な情報が欲しい所だけど・・・」
「あの感じじゃぁな」
「そうなんだよなあ・・・・・・」
何度目かのモンスターからの襲撃を捌いたサンとの会話。
皇国と帝国。国が違えば、生息するモンスターの種類や強さも違って当然。
そこで帝国のモンスターの情報を求めて冒険者ギルドに・・・と思ったんだが。
どうやら帝国では冒険者っつー職業は人気がないらしい。
概念や存在は届いているようだが、実在まではしていなかった。
っつーのも、だ。
ここまでに経由した町に冒険者ギルドは存在せず、ついでに立ち寄った村に小屋が1つあっただけ。
しかもその小屋ってのも、冒険者ギルドってよりは、村付きのハンターが使ってる小屋って表現がしっくりくる有様。
個人商店の方がはるかに立派だったと言わざるを得なかった。
これは予想外だったと言っていい。
なにせ元S級冒険者がいる国だ。もっと普及しているもんかと思うだろ? 普通。
こんなことなら、その本人から――あるいは軍からモンスターに関しての情報も貰っておけばよかった。
軍は基本的に、人やモンスター相手を問わず、少数戦をしねぇから参考にならねぇと思って、先入観を持たせねぇために聞かなかったんだよな。
「特徴からモンスターの種類は分かるんだよな?」
「それはもちろん。性質っぽいのもなんとなく書いてはあるんだけど、実戦数が少ないのかあやふやなんだよ。さっきの帯鹿も、雷の魔法を使ってくる――かもしれないって書いてあったから待ってみたんだけど、そんなこともなかったし」
「昨日のデカい毛虫も毒がどうとか麻痺がどうとか言って、解体の時に調べてみたがわからねぇままだったな」
「そうなんだよ! どこまで本当なのか・・・」
「かといって、嘘を書く理由もねぇんだよな。あっちも別に、遊びってわけじゃねぇだろうし」
「そうなんだよなあ・・・でもそうなると、変異種が大量発生してるってことになって・・・」
「そんなわけがねぇって思うよな」
「・・・そうなんだよ」
サンも途中から、そうなんだよ以外に言葉を失くすぐらい難しい問題だ。
原因がわからねぇから安心なんぞできるはずもなく、かといって無視してしまえるほど小さなことでもない。下手をすれば命にかかわるんだから仕方がねぇ。
リーダーとして、サンは頭を悩ませるしかなかった。
「幸い、もうすぐ1つ目の大都市だ。進捗の報告のために小間使いが接触してくる手はずになってる。そこでモンスターについても聞いてみるさ」
「是非そうして欲しい。今回の主眼がモンスター討伐じゃないのは分かっているつもりだけど、長い移動期間を疑心暗鬼で乗り越えるのは難しい」
「いざとなりゃ俺も参戦するが・・・」
「護衛対象に守られるんじゃ本末転倒だろう? それに、主眼じゃないのは分かってるって言ったはずだ。俺達だって、戦争なんて望んじゃいないんだ。それを回避するために心血を注いでくれ」
「当然そのつもりなんだが・・・こっちも慣れねぇ環境のせいか、どうにも落ち着かなくてな。相手の考えを読もうにも、勘さえ鈍ってるように感じるほどだ」
「らしくないな・・・? けど、頼れる相手が居ない状況じゃ無理もないさ。なにせここは帝国。俺達にとっては敵地に他ならない。都合よく考えるよりはいいんじゃないか?」
「・・・そうだといいんだがな」