軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝国へ。一端

「確認が済んだなら、聞きたいことがあるんだが・・・いいか? こっちからじゃぁ、どうしても分からねぇことがあってな」

「今の状況の話ね? 帝国は今、次代帝王の継承権で争ってるの。で、そこに望福教が割り込んできて――いっそのこと、その望福教をどうにかできた派閥が帝王位に就くのはどうかって話になった。私達はその一派って所」

「よく纏まってて分かりやすい説明だがそうじゃねぇ。もっと手前の話だ」

「手前?」

「この町は、ゴウガ帝国にとってどういう立ち位置なんだ? お前の役職。南端戦線指揮総司令官って名前は、どう考えても皇国への対策本部だろう? その前線基地がこの町より南側にないのはどういうことだ? この町はなんなんだ?」

「え? ああ、そういう・・・」

奇しくも、なにを当たり前のことを? と言った表情をしたカーナから事情を聴く事ができた。正直、期待はしていなかったんだがな。

「文化の違いよ」

「文化の?」

「ええ、そう。この国、ゴウガ帝国の歴史は侵略の歴史でしょ? でもだからって理由もなしに、一方的に攻め込み続けたら、ただの蛮族よ。そんなの誰も納得しないし、周辺諸国に一致団結されたら敵わないのは明白。侵攻を繰り返すには大儀が必要だった。そのための町なのよ。ここは」

「つまり、囮・・・? いや、餌の方が近いか」

「そんなところね。国境に発展した町があるのに、防衛拠点はそれより向こう側にしかない。緩衝地帯というにはおいしい標的。相手は侵略を繰り返す野蛮な国家。手を出したところで諸外国から突かれる心配もない。そう思わせるための存在。だから、この国の軍事施設は貴方達から見れば、変な所にあるかもしれないけど、気にしなくていいわ」

「この町の連中はそのことを知ってて住んでるのか?」

「知ってる人もいるでしょうし、そうじゃないのもいるんじゃない? ほら、子供なんかは知らなくても、それが普通でしょうし」

親がわざわざそんなことを伝えるかって話なら、まぁそうだろうな。

「ちょっと! 不誠実だなんて思わないでよね‼ 言ったでしょ! そういう文化なの! 仕方ないじゃない⁉ 私が決めたんじゃないんだからね‼」

「そんなことは思ってねぇよ。よくそんなこと知ってたなと思っただけだ」

「余計失礼じゃない‼ 私はこれでも一端の帝国貴族よ⁉ なんなら元王族なんですけど⁉ 当たり前でしょ‼」

「そんなやつは、あんな馬鹿な真似はしねぇよ」

いつだったかの行動を思い返して、傍らに立つ将軍へ視線で同意を求めると、当たり前だと言わんばかりの頷きが帰って来た。

「なによそれ‼」

頭から湯気でも出してるかの如く怒って見えるが、取り繕う意味はない。なぜなら真実だからな。

それはそうと、

「お前は帝王になりたかったのか?」

保留しておいた件に触れる。コイツの場合、女帝になるか。

「・・・本当のことを言えば、ガラでもないわ」

少しばかり声を絞り、外へ聞こえないように気を配った声だった。

すかさず将軍の方を見るが、渋い顔で首を振った。

「都合よく祀り上げられた・・・ってところか」

「どうかしら、チャンスであることは間違いないのよ。私にとってもね」

「どういう意味だ?」

「言ったでしょ? 私は公爵家の娘。そもそもが帝王位に相応しくないと、追い出された娘。正確に言うなら、私に限らず女は外へ出されるのだけど。そんな私達にさえ、帝王の座に就く絶好のチャンスが訪れた・・・まるで、狙ったかのようなタイミングでね」

「不審に思うことがあるんだな?」

「ええ。だから、アンタに頼ることにした――といっても、消去法だけどね。国内で頼れるのは、このフリードリヒと・・・その部下ぐらい。他はもう、誰かの下についてる。かといって、戦力としては足りない。全くと言っていいほどに、足りないのよ」

「そこで俺になった理由は?」

「フリードリヒの提案よ。アンタはよほどの手練れだからって。それについてはあの要塞で私も見てたし、呼び出す方法についてもそう難しくないって話だったから・・・」

涼しい顔で黙っちゃいるが、グラーニン家の事情を知ってやがったな?

つっても、知ってて当然か。コイツは自由騎士として、皇国でも活動してたんだ。皇城にも顔を出してたみたいだし、御父上とも顔ぐらい合わせたことはあるんだろう。

だが、そこまでするか?

国内の人間と比べりゃぁ下手な事情がない分、引き込みもし易いだろうが、絶対に協力するっつー保証はねぇ。なにより敵国の人間だ。裏切りがないとは言い切れねぇはず。

それを差し置いてまで戦力を欲しがる理由があるとすれば、敵側の戦力か。

この帝国でなにが起きて、どうなろうとしてるんだ?