軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝国へ。一歩

「行商? ここは南側だぞ⁉」

「ハイ。そうですヨー。普段は東側を通りますガー、今は通れませんカラ。それでは荷物の確認、おねがいしてもよろしいですカ?」

「それはいいが・・・こんなご時世に、よくのうのうとしていられるな」

「ミー達商人も商売が出来ないと食ってけませんネ。家族のためですヨ」

「で? そっちの連れがその家族なのか? どうにもそうは見えないが」

「あちらの方々はお世話になってる商会から預かっているだけですヨ。家族ではありませんネ。これもお金のため仕方ありまセン」

ゴウガ帝国、南端の関所にて俺達は検査を受けていた。

兵士達は荷物を確認しながらも、決して俺達から目をそらさない。

そこには確かな用心深さが残っていた。

それもそのはず――この皇国との間を行商人が通ることは稀中の稀だ。

全くないというほどではないが、数年に一度。今回に至っては10年近く経っているとか。

それほど帝国と皇国の交流は薄いのだ。

しかも、それらの中には俺達同様、密偵のような連中もいた。当然、それが露見した者もだ。

だから、細心の注意を払って偽装しなければならない。

例え―――、どこかで迎えが来るのだとしても。

「・・・ライザード様。関所の中をじろじろと見るのはおやめなさい」

「ん・・・フフッ。いいじゃないですか。減るものではありませんよね?」

「減るかもしれませんよ? 我々の寿命が。ここは国の外。不審者として罰せられる可能性はいつだってあると、教えたではありませんか」

「そうでしたね。すみません。この僕としたことが、ついはしゃいでしまったみたいです。なにせ初めての外国ですからね。心も踊りますよ。ええ」

「ライザード様! 十分にお気を付けください!」

「もうわかりましたよ・・・というかですね。それほど輪をかけて念押しされると、余計に不審がられるでしょう? 貴方も当会の使用人なのですから、その辺りはしっかりしてほしいのですが・・・」

「す、すみません・・・ライザード様」

俺がライザードを注意し、ライザードがマルチナを叱責する。

少々おかしな構図に見えるが、世話役とドジな使用人だと思えば普通か。

それと、偽名を使うのはやめておいた。

理由はいくつかあるが、一番の理由は”その必要が無いから”だ。

俺は帝国の、もっと言えば帝王の近親者なんぞ、知りゃしねぇ。

渓谷に隔てられているとはいえ、敵国である帝国と隣接する領地を持つ家に生まれた俺でさえ、知り得ねぇんだ。そこらの一兵卒が皇族の名前なんか知るわけがねぇ。国民にしても同様だ。

皇太子であるライザン様なら、あるいは知っていたかもしれねぇが、その息子までは無理だろうという判断。

現に、兵士たちの目つきが変わるようなことには成っていない。

あとはまぁ、ボロを出さねぇようにってところだ。咄嗟に本名を言って怪しまれるぐらいなら、最悪身分がバレても、カーナが寄こす迎えと合流できればいいと考えた。

「荷物の確認は終了だ。不審物はなし。通行に問題はない」

「ありがとうございマス」

「次は身元の確認だ」

「どうゾ、これをー」

「ヤーレン・イー。それが貴様の名前で間違いないな?」

「エエ。間違いありませんネ」

「所属は・・・南東大陸行商組合。印にも問題はなし」

トンチキ行商人が手渡した資料を睨む兵士の言葉で初めて知った。

コイツ――そんなところに所属してたのか。

南東大陸行商組合。

その名の通り、大陸全土に及ぶ行商を支援する組合だ。

ほとんどの国を通過できる権利と、各地で商売を許可される程の認知度を持つ一大組織。

つっても、所属するのが難しいわけじゃない。

この手の巨大組合への所属は、申請用紙に不備がなければ簡単に行える。

問題があるとすれば、金がかかること。いや、かかりすぎること。

格安と言われている冒険者でさえ、A級ともなればそれなりに収めなきゃならねぇってのに、商人だとどうなるのか・・・俺には見当もつかねぇな。

だがそうか。コイツが扱うのは所謂一種の禁制品。危険物じゃなく敵国からの商品だが、一般には出回らないような高級品。金にはなるのか。

それに、それなりの後ろ盾も持っているはず――・・・。

トンチキ行商人ヤーレン。

コイツは俺が思っていたよりも、意外と大物なのかも知れねぇ。