作品タイトル不明
落ちる日を待つ
「お役に立つ事ができず、申し訳ありませんでした・・・」
「仕方ねぇさ。聞き込みもしてみたが――該当なし。じゃぁな」
翌日の昼過ぎ。
くだらねぇ争いで無駄に時間を浪費した昨夜から。マルチナの努力もあり、なんとか朝早くに起床。その足で朝市へ顔を出したものの、成果は0だった。
一瞬、マルチナが真面目に探してねぇんじゃねぇのかと。結局別部屋へ追いやられた昨日の報復なんじゃねぇかと疑って、言葉通り。店を並べる商人達にも聞いて回ったが、東へ出入りしている商人は見当たらなかった。
たったの1人もだ。
明らかにおかしいが、望福教の撤退に合わせて皇都を出た可能性もある。
市場の需要としても、比較的安全なガルバリオ東部の商品は安定した値が付くものの、儲けは薄く。皇都は行商の対象外になりがちだと言える。
それに拍車をかけるのが、皇都からは名物となるものがほとんどない事実。
そうなると行商人はミョヒリーの商品を皇都まで運ぶ意味がない。東部でミョヒリーの名産を高値で売りさばき、東部の安い食料など、旅の必需品を買い込んで次を目指す方が効率的。
結果として、皇都へミョヒリーの名産を売りに来るのは、東部に根を張る商人達。そして東部に根を張るってことは望福教の息がかかっていてもおかしくはなく、そいつらが姿を消しても不自然じゃねぇと。
つまりはそういうことか?
「まだ探しますか?」
「既に店仕舞いを終えた所もある。これ以上粘っても成果は上がらねぇよ。帝国行きへの反応もよろしくなかったしな」
万一の場合を考えて、見込みのありそうな連中にその気はないか? と、帝国行きを仄めかしてみたが・・・どれも良好な反応は帰ってこなかった。
当然と言えば当然だけどな。今でこそ睨み合いになっているとはいえ敵国。幾ら帝国産の商品が高く売れようと、そんなもんを大手を振って売ろうもんなら、最悪の場合は牢屋へ入れられる。
そこまでの危険を負う意味が分からねぇ――という意見が大半だった。
「でしたら夜までどういたしましょう? マンサ商会以外にも当たってみますか?」
「そこまでの不義理は出来ねぇよ。あのトンチキ商人でなくても、サンパダから借りるさ。商会所属の有無に関わらず、反応は悪かったしな。よほどの物好きでもなけりゃぁ上から言われねぇ限りは、帝国へ行こうなんて言葉に同調はしねぇだろうからな」
「とすれば、夜まではお暇ということでしょうか? でしたら、そのお暇な時間をご一緒したいのですが‼」
「どうするかは部屋で考える。流石に暑くなってきたからな」
傾く日差しは尚も照り付ける。俺の思考を妨げるかの如く、強く。
「おや? これはまた偶然だね?」
「・・・部屋で待ってた奴が偶然を語るんじゃねぇよ」
「なに、最近暑くなってきただろう? だから、しばし休憩をね」
部屋へ戻るとなぜかジーナが我が物顔で涼んでいた。
「素材は? もう揃ったのか?」
「ああ。予想通り売れ残っていたよ」
そう言いながら部屋の隅へ置かれた袋を指さす。
「確かに、全部あるみたいだな」
「お使いくらいできるに決まっているだろう? 子供じゃないんだからね」
「そう言うなら、余計なもんを買ったりもしなかったんだろうな?」
「もちろんだとも! 私の研究に必要なものだけを購入したさ‼ 君の付けでね‼」
「お釣りでお菓子買っていいからね――じゃねぇんだよ。勝手に金額を上乗せするんじゃねぇよ」
「いいじゃないか。どうせ金額なんて気にしてないだろう? 私も気にしない。この件は貸し1つだ」
「それを断るために金額で管理しようとしたんだろうが‼」
「君が断ろうとするのを断る‼」
「また私だけ除け者ですか⁉⁉ 折角の好機だったのに⁉⁉」
袋の中身を確認し終えた俺は。マルチナ介入により、またも混沌を成す場をジーナに押し付け・・・もとい放り投げ、夜までを魔法道具製作に当てた。