軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝国への白羽

「それを説明するには・・・協力要請の内容を話す必要があるな。ダンデよ。このまま進めるが構わんな?」

「ハッ! もちろんです。帝国からの使者が出した要請とは、我が辺境伯家への支援要請。帝国で起きた事態を治めるための応援が欲しいと言ってきた。より正確に言えば、その人員にグラーニン家の人間を要求してきたのだ」

「それで、俺に白羽の矢が立ったってわけだ。グラーニン家の人間は領主の兄上夫妻、その息子バロン、皇都で将軍職に座る御父上と放浪している母上。領主は論外、その妻もだ。将軍も出せない。バロンは子供で、母上は・・・どこにいるのかさえ。だから、一番動きやすい俺が出向くことになった」

「ゼネス様は一切の説明も無しに、なぜそれだけのことが分かったのです? 先程からその全てを理解していたのでしょうか?」

「そのくらいの予想はできて当然だね。まず、バロン君を連れて来れたこと、そして帝国からの使者。更には協力要請とまで言われれば、彼になら自分が呼ばれた理由くらい察せるだろうさ」

なぜかジーナが横からこともなげに答えるが、なんでお前が? それと自慢気なのを辞めろ。

「バロン様を連れてくることに意味が・・・?」

「皇王陛下との謁見は貴族であってもそうは出来ねぇことだ。そこに年端もいかねぇ子供を連れていく許可が出た。なら、なにかしら理由があるはずだ。俺とバロンの共通点は血統。となれば、家に関するなにかがあったってことだと考えられる。ジーナは言わなかったがもう一つ。ライザードの存在も考慮すれば、俺が教師であることも関係あるかもしれねぇ。この2つを組み合わせた可能性は俺に皇都を離れさせる必要がある場合だ。これを素早く認識、了承させるためにこの2人の同行が認められたって考えれば納得もいく」

「まさか御2人を連れてくることにそれだけの意味があったなんて・・・」

「それだけでこちらの意図を完全に汲み取れる人間など、滅多と居らぬがな。話が早いことには助かるばかり。して、連れていく人材だが、どうする?」

恐れ多くも皇王陛下直々の問いかけ。

ある程度の重鎮であっても構わない。なんなら軍を動かしても良いという宣言なのだろうが・・・。

「そうですね。帝国側の事情に詳しい商人を。その護衛に手練れの冒険者が居れば心強いでしょうか」

「・・・・・・・・・それだけか?」

「帝国側の状況がわかりませんから、名の知れた人物や軍隊を動かせば余計な騒ぎになりましょう。最悪の場合、帝国側の混乱を察知して攻め込んだと思われる可能性もあります。そうなれば戦火が広がってしまいます。それは陛下の思われるところではないでしょう」

「それはそうだが、危険ではないか? 相手はあの帝国であるのだぞ?」

「私が相手取るのは国ではなく人です。あるいは、人が巻き起こした事態。大事ならば北の要塞に居られる兄上へ私から協力を仰がせていただきます」

「そなたがそう言うのであれば、頼む立場の私からは止められぬ。しかし、皇国はそなたの協力を惜しまない。必要なものがあれば言うのだぞ」

「そのお言葉こそを、なによりも心強く感じます。それと確認なのですが、この者はどう致しましょうか?」

俺はそう言いながらマルチナを示す。

「連れては――行けぬか。不安要素はなるべく少ない方が良いだろうしな」

「いえ、この者に偽りはございませんでした。極短時間での判断とはなりますが、過剰な敬愛に辟易するほどの熱量です。これが演技ならば国民は全て詐欺師に違いないと言えるほどで・・・」

「それほどか・・・⁉」

「はい。ですので、私を信用していただけるのであれば、より詳しい学園の調査へ参加させても良いかと思います。時期尚早である。又は、まだこの短時間での判断は信用できぬと思われる場合は、帝国への道行に連れて行こうかと思いますが、いかがでございましょうか?」

ふむ・・・と顎に手を当て、いや顎髭を撫でて? 思考する陛下へ、恐れ知らずもマルチナが進言する。

「私はゼネス様とご一緒したく存じます‼ 帝国と皇国の関係は良くないと聞きます‼ なにかあった際にはこの身でゼネス様をお守りしなければ‼」

「しかし、その命には敵の情報も含まれている。我が息子の盾となられても困るのだ。陛下はそのことを思案なさっておられる。今しばらく待て」

その姿はやはり迫真。陛下や御父上もこれを見て演技と疑ってはいないようだ。

そして、陛下の出した答えは――、

「もうしばらく様子を見よう。帝国へ連れて行き、その者の心根を確認せよ。ただし、北の要塞からの応援が必要となったならば、その者は要塞へ留めよ。良いな?」

「了解いたしました」

大胆とも慎重とも取れる、両方の意見を反映したド真ん中な答えだった。