作品タイトル不明
side――ベルザフォン・C・ノクアッド2
驚いた。
驚いたが、まずい‼
俺はすぐに平静を装い、さらには。ここにいることが当然であるように振舞う。
なぜなら、ゼネスが集めていた視線が将軍へ向かってくるからだ。
結果として隣に立っている俺も視界に映ってしまう。
そのことに疑問を持たれてはいけない。
幸い軍服であるから、将軍の側に居ても違和感はないはずだが、急に増えた人員だということに変わりはない。
それで少しでも雑念が入れば、ゼネスの努力が水の泡になってしまう。
それだけは避けなきゃならなかった。
だからただ・・・置物のように、その隣に立ち続けた。
けれど、ただ立ち続けるだけのことが、こんなにも難しいことだとは・・・今日まで思いもしなかったよ。
そこから続いた話が全て、驚愕の連続だったから。
加護無し。
確かに聞いたことのある言葉だった。
それも当然だろう。
俺達の代に産まれていたんだから。
なにかと悪さをすれば、母や執事などの使用人からよく言われたものだ。
『良い子にしないと加護を失くしてしまいますよ』と。
これは多分、俺だけじゃない。
同じ年代に生まれた子供達は皆言われてきた言葉だろう。
そして、今なお残り続ける言葉だ。
その起源、あるいは元凶が直ぐ近くにいただなんて・・・知りもしなかった。
アイツはそういうことを話さなかったし、当時から教会には出入りしていたから、むしろ加護のレベルが高いものだと思っていた。
それがまさか―――・・・・・・。
でも、将軍も肯定してしまったのだから嘘ではない。
しかも追い打ちをかけるような幼少期の生い立ち。
学園に入って来たばかりの子供が、なぜあれだけ非常識な存在になったのか。僅かな言葉からでも理解できてしまった。
貴族としての教育も受けず。かといって、人としての生活すら許されず。
それでも強さだけは勝ち取れと。
そんなことがあるのかと。
しかし将軍はこれも否定しなかった。
それどころか、必要だったとまで・・・・・・。
復讐。
それを胸に抱くのも無理のない話だ。
アイツにとって、生きてること自体が理不尽なことだったのかもしれない。
人ならざる物と蔑まれて生きることの苦痛など、俺には分かりそうもない。
だから例え、逃げることを選んだとしても、誰にも文句は言えないはずだ。
その経験から復讐がなんたるかを語るのも、それをできていない今の相手を逃げと評するのも、納得のいく話ではある。
けれども、だ。
そこで終わってしまっては、なんのためにそんな話をしたのか、わからないまま。
ということは、ここで話は終わらない。
うまく言葉に出来ないが、途轍もなく嫌な予感がした。
友人が。賭けがえのない悪友が。どこか、手の届かない場所へ言ってしまうような。
そんな感覚があった。
そして、それは現実になるはずだ。
なんでって・・・アイツのあの口振りで、負ける姿が想像できないからだ。