作品タイトル不明
離間の刻12
「確認するが・・・望福教も宗教団体ならば、身分を証明するモノは持ち合わせているはず。その口ぶりから、加護のレベルも記載されているのではないかと思っているのだが・・・どうだ?」
「それは・・・・・・ッ‼」
所謂ステータスカードだな。
商人で言えば名刺や組合員証明書だったり、その人物がどこの誰かを証明するための品。
教会では加護レベルや役職を保証するためにそれが与えられていて・・・望福教も、その教義から。自分達の加護レベルが低いことを証明するためのなにかは持っているはずだと思っていた。
そして、この反応を見る限り持ち合わせていると考えてよさそうだ。
「定期的に更新もしているはずだが・・・見せてもらおうか? 私のはすでにその手にあるのだ。不公平ではないか?」
グレンゼーはゆっくり。渋々といった態度でカードを寄こす。
ついでに俺自身の冒険者カードも回収した。
「最終更新日は?」
「・・・昨日になります」
これも予想通りだ。
下手に期間が空いてたら言い訳されそうだったが、こんな会場を用意するんだ。色々と準備は綿密に行ってくると、ある意味で信頼していた。
神の怠慢を証明するために、直近で情報を更新してくると。
「加護レベルは1。望福教に入信して何年になるかは知らないが、昨日までの時点でこのレベルを上げることはできなかったということだな」
「確かに私は望福教に入って10年以上。加護のレベルは上がりませんでしたが、それでも望みは叶えられてきたのです‼ 加護のレベルが上がらなかったからといって! それで望福教が嘘であるなどと――」
「――誰も。嘘などとは言ってはいまい。ただ、本当の願いは叶えられなかったというだけの話だ。神にならば、それができるとな」
「例え神であったとしても‼ そんな今更・・・・・・‼‼」
「本当にそう思うか? 一生このままでいいと。見下され、蔑まれ、嗤い者にされたままでいいと?」
「・・・本当にできるというのなら証明を‼‼ ここで今‼‼ 私に‼‼ 加護をお与えください‼‼ こんなところでは! カードの更新さえ出来ないでしょうがね‼‼」
ついに引き出したその言葉に、俺は心の中で拳を高く突き上げる。
「その心配は不要だ。そのための道具は持ち合わせているのでな」
サンパダに協力してもらい作った鑑定の魔法道具を取り出し、かざす。
するとどうだ? 種も仕掛けもありゃしねぇのに、1だった加護レベルの項目が、なんと3まであがってるじゃねぇか。
「そんなッ⁉⁉⁉ ・・・・・・そんな。・・・こんな、ことが・・・?」
「すまなかったな、これまで。貴公らのように苦しんでいるものがいるとも知らず、加護が与えられなかったことを謝罪しよう。それらは確かに、私の怠慢でもあったことだろう。しかし、見ての通り。私も人の身だ。教会の教えで神と崇められようとも、だ」
そう言って、項垂れるグレンゼーの肩に手を置く。
カードを両手に持って額へ当て、泣き崩れるように膝から砕けるグレンゼーを前に、観衆を支配していた異様な雰囲気は薄れていた。
一丸となる姿は既になく、散り散りに動揺が伝播していく。
だがまだ甘い。
「さぁ。宣言するがいい。今回の顛末を」
「・・・・・・――私のぉ‼ 私の! 加護レベルが‼‼ 教皇候補の息子として産まれたくせにと‼ 虐げられる原因となっていた私の加護レベルが‼ 修道の旅へ赴こうとも‼ 決して上がらなかった私の加護レベルが‼‼ 1から‼ 3へ‼‼ 上がっています‼‼ 上がって・・・いるのです‼」
ぐしゃぐしゃになった顔でそう宣言する。
その瞬間だろうか。
周囲に沈殿していた嫌な雰囲気が、一気に集束していくのが感じられた。
その理由の1つは、俺が神として認知されたことによる精神魔法への影響。俺の方が信憑性を得ることで、教祖からの操作を無効化できたせいだろう。
そして、もう1つは―――。
それらを一身に受け取った人物がいたからだろう。
突き刺さるは視線。あるいは眼光。
人ならざるその竜の眼に、敵愾心や憤怒、嫉妬、羨望、果ては殺意までがごちゃ混ぜになったようなドス黒い激情の炎が宿っていた。