軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

離間の刻11

「やはりそうか! では、貴公は己が野心のために属する団体の立場を使い、故意にこの場を設けたというわけだな?」

「お優しい教祖様が私の望みを叶えようとしてくれたのです。立場を使ったなどといわれるのは侵害ですね」

「であればそうなのだろう。だが、目的は復讐に違いなかろう?」

「先ほど申し上げた通り、これは私のために用意された復讐の場・・・嘘偽りなどあろうはずもございません」

「ならば、先の質問に答えてもらおう。貴公の加護レベルはあがったか? それこそが一番の復讐になろう?」

「いいえ、そうとは限りません! 加護こそが重要だという教えそのものがおかしいと分かった以上、それに拘るなど馬鹿のやること。私はそれを証明するためにここへ至ったのです」

まだ粘るか。

けどまぁ、これでグレンゼーの加護レベルは望福教に入ってからも上がらなかったってことで良さそうだ。

だったら、後はうまく話の流れを持ってって事実を突きつけてやればいい。

「本当にそうだろうか? その物言いではまるで、逃げているように感じられるが?」

「逃げ・・・ですか?」

「そうだ。鼻を明かすこと、見返すことを復讐と呼ぶのなら、教会の教えをそのままに、自分がいかに優秀であったかを証明しなければならないはずだ。そうでなければ、反省も後悔も得られないだろう?」

「・・・やけに詳しいご様子ですが、思い当たる節でも? それがなければ、それはただの思い込みになりますが・・・」

グレンゼーとしても俺の言っている事の意味は理解出来ているようだ。

論争で勝てないなら暴力で黙らせる――などと、それが認められないことは言うまでもない。

あくまでも、同じ土俵で戦わなければ。

だからこそ、どうにかして話を濁そうとしているだろうが、そうは問屋が卸さねぇ。

「恥ずかしい話になるが・・・思い当たる節もなにも。私の人生がそうして逃げてきたものだったからな。それが復讐に当らないことは証明済みだ」

「貴方の人生が・・・?」

「そうだ。こうして今、2つの宗教の間に立ち話を聞く役などをしているが、私にとっても教会の教義は具合の悪いものであり。それ故に、貴公と同じく父に期待などされぬ人生であった」

「・・・・・・それは違う」

「と、貴方のお父上はおっしゃられているようですが?」

俺の言葉に。なぜか御父上が反応するが、

「口ではなんとでも言える。そういったのは貴公ではなかったか?」

そんなことに意味がないのは、もう言うまでもないだろう。

「では、そうである証明を。この場ではそうするべきなのですよね?」

「よかろう。これを」

グレンゼーに俺の冒険者カードを渡す。

冒険者は引退したがカードは持ったまま、更新もしてねぇとはいえ、必要なのはそこじゃねぇ。

「――これはっ⁉ まさか、そんな⁉⁉」

「聞いたことはないか? 北の地で加護無しという忌み子が産まれたという噂を。それが私だ。教会の定義によれば、加護は万人に与えられるものであり、それを持たないものは魔物と呼ぶそうだ。つまり、加護信仰の教義の上で、私は人ですらない。その人生がどんなものであったか、想像できるのではないか?」

「想像など、できるはずもありません。レベル1でさえ爪弾きだというのに、加護が与えられなかった人生など・・・・・・ッ‼ いえ、騙されませんよ。これは捏造! そうに決まっています‼ そうでなければ――ッ‼」

「・・・・・・いいや。嘘ではない。ゼネスには・・・加護が与えられなかった」

思わぬところからの援護が飛んでくるが、都合がいいならそれでもいい。

「奇しくも本人からお墨付きをいただいたので続けるが、それを理由に私は幼少期に地下へ幽閉された。窓も無い、家具はおろか、碌な寝具さえ存在しない部屋へな。その後は軍団長による直々の可愛がりだ。連日連夜、立てなくなるまで打ち据えられた。そこにおわす父は、当時から北部の軍事総司令。軍団長はその父から命令を受けてそうしていたはずだ。これが人の扱いか? 反意を持ってしかるべきだろう?」

「・・・・・・ゼネス。お前にはそれが必要だった。現実を生きるために」

「御父上。貴方からすればそうだったのでしょう。私にとっては最早そんなことなどどうでもいいのです。それが事実であり、私には反意があった。復讐をするのなら、反旗を翻すのなら、私は軍へ入っていたでしょう。それこそが最も意味のある行為だと知っていたから。立場も、権力も奪い去り、地面へと引きずり倒してこそ、その惨めさを目に焼き付けてこそ、気が晴れるというもの。しかし私はそうしなかった。逃げたのだ。復讐することに価値などないと知ったから」

それを教えてくれたのはクライフだが、その話まではしなくていい。

「つまり、この場が本当に復讐を目的としているのであれば、貴公は教会にとって優秀な人間でなければならず、それを実現するのに最も簡単な方法が加護レベルの上昇だ。人の望みを叶えられると宣う宗教の教祖ならば、長年望み続けた加護レベルぐらいは上げられたはずだ」

「―――いえ! いいえ‼ それは間違っています‼ 望福教は人の望みを叶えますが、それは人の手に届く範囲のもの。加護が神から授けられるものであるならば、教祖様の手には余って当然‼ 加護レベルが上がらないのは仕方のないことなのです‼ しかしそれでも! 人の望みの1つさえ叶えぬ神より遥かに優れていると言えるでしょう‼」

これで、どうにか場は整ったか。

急に御父上が介入してきたときは驚いたが、ベルがなにかやったのか?

いつの間にか隣に立ってなにかやってるようだが・・・まぁいい。

仕上げといこう。

「では、そこにいる教祖に加護レベルを上げるのは不可能だと認めるのだな?」

「教祖様とて人の身に違いはありません‼ ですが! 神よりも人を救える‼ その力がある‼ 加護レベルなど・・・‼」

「ならば今、貴公の・・・・・・いや、この場にいる望福教信者の加護レベルを私が上げてみせれば、私はそこの教祖よりも優れているということになるな?」

「・・・・・・・・・なにを、馬鹿なことを・・・」

心底。

心底そう思っている顔で零す。

なにをいっているんだと、理解できないといった表情で。

「どうした? 貴公の物言いに合わせてみれば、私の言うことは認められるはずではないか?」

「貴方の方こそ理解していないのですか? そのようなことができるのであればそれは、貴方自身が神だと言っているようなものですよ?」

「そうだな。教会の教義に照らし合わせればそういうことになるな」

グレンゼーはあまりのことに教祖へ助けを求めるように視線を送る。

送られた教祖も答えには悩んでいるようだったが、

「・・・あり得ない。そのようなことは・・・・・・あり得てはいけない」

なにかを覚悟したような顔でそう返す。