作品タイトル不明
離間の刻4
「・・・言い分は理解しました。教祖様にお伺いを立てようと思います」
選択を迫られたグレンゼーは少し物思いにふけった後、どうやら教祖を呼ぶことに決めたようだ。
これでようやく。こんな面倒なことをしでかしてくれた張本人と相まみえる事ができる―――そう思った矢先、
「ですが! 私がここを離れてしまえば‼ 私が居ない間に、ここへ集まっている我ら望福教の信者を弾圧、排斥されかねない。もちろん、貴方がそのような行いをするとは思いませんが、貴方の後ろに立っている教会の関係者は信用にあたいしません。そのため、私はこの場を離れることが出来ないのです」
グレンゼーはどうにかして、まだ足掻こうする。
だが、
「そのようなことはしない・・・と口で言ったところで信用などできないのであろうな」
「その通りです。貴方は知らないかもしれませんが、その男には碌な情などないのです! 自分に不都合なことは無かったかのように消してしまう! 私はそれが心配で―――」
「で、あれば・・・そちらの英雄をこの場に残してはどうだ?」
「――は?」
あっけにとられるグレンゼーを他所に、俺は御父上を差して続ける。
「その者は老いていてもこの国を救った英雄に違いない。目の前の蛮行を止めることくらいはできよう? 貴公の言う信者の中には、軍属の者もいるようだしな。不足はないだろう?」
しばし目を白黒させていたグレンゼーだったが、
「な、なるほど・・・では、将軍様! ここにいる国民を。不当な迫害からお守りいただけますか?」
まさか俺の提案に、こうも素直に乗ってくるとは・・・・・・。
そして、問いかけられた御父上の答えはというと、
「・・・いいだろう。それがこの私の望みでもある」
こちらもあっさりと承諾したようだった。
その返答を聞いたグレンゼーは一礼を残し、外套をはためかせ走り去る。
尚も足掻くつもりだったなら、後日に改める方針を仄めかしつつ、至急とはなんのことだったのか? という方向で責めるつもりだったんだが、当てが外れてしまった。
あの様子だと、本気でグレアムの爺さんが弾圧や排斥を行うかもしれねぇと思っていたんだろう。
あの親子になにがあったのかは昔、爺さんから聞いたが・・・まだなにか隠してる事でもあるのか、あるいは一方的な見方だったのかもしれねぇな。
まぁそれも気になりつつ、運よく転がり込んできたこの好機を生かしたい。
できることなら、ほぼ確実となった御父上の精神操作を解きたいところなんだが―――・・・・・・正直に言おう。
無理だ!
不可能だ‼
理由は幾つもある‼
幾つもある・・・が‼‼
思い出してほしい。
精神魔法の特徴の1つを。
よほど関係の近い人間でもなければ、精神操作を掛ける事ができない。
その理由は信頼がないからだ。
より信頼を置けるものからの言葉に、目を覚ましてしまうからだと。
そういう魔法だと、知っている。
だから不可能なんだ。
グレンゼーの去り際の願い。
恐らくは国民を守って欲しいという所に反応したんだろうが、今の御父上の目には使命の光が宿っている。
俺の姿は、その瞳に映ることがなかったってのに。
俺の声では、その瞳を揺るがすことさえもできなかったってぇのに。
今、その瞳には確かに―――光が宿っていやがるんだ。
だから、こんな俺が目を覚まさせようなんて・・・そんな事ができるだなんて些細な思い上がりや、淡い希望は。
捨てるべきなんだ。