作品タイトル不明
俗世間の行く末
ごちゃごちゃしゃべってる2人を他所に、机とその周辺を粗方調べ終わる。
「ジーナこの魔法道具。起動できねぇか?」
「ん? やってみようか」
「ベル! お前はこっちの通達内容をさらってくれ。所々暗号化されてやがるせいで読めねぇ」
「分かった。ここに人が居ない理由でも分かればいいんだが・・・」
2人に適当な仕事を振りつつ、用済みとなった傀儡兵士を監視室の中で拘束。後ろ手で縛った後、机の脚に括りつけて、気絶させれば完成だ。
ジーナの魅了もそろそろ解ける頃だからな。騒がれても面倒になる。
「ゼネス。これは予想通り遠見の魔道具だったよ。地下の映像が見れるようだ。これをこの黒い板に投影することで監視しているんだろう。他のは呼びかけ用の拡声や念波の魔道具のようだね」
そう言いながら、現在の映像を壁へ映す。
そこには相変わらずの異様な光景が写し出されるが、その端には倒れた兵士4人の姿もある。
「まだ集会中なのはいいんだが、警備が倒れてるってのに気付きもしねぇな。まぁ周囲の反応がねぇのは仕方ないにしても、この外套の男は気付いてもいいんじゃねぇのか?」
「そうしたら私達はまた地下送りかもしれないけど、それがお望みかい?」
「まさか。ただ、普通は出入口の警備以外にも護衛ぐらい付けるはずだ」
「それならその護衛が気付くだろうって話だね? でも、それが普通なのは貴族や上流階級だけさ。この外套を纏った彼らは宗教団体。言ってしまえば庶民の味方だよ? お仲間の前に出るだけだというのに、物々しい護衛なんかをつけていたらどう思われるだろうね?」
「だが教皇の爺さんは護衛に囲まれてなかったか? それに、そのせいで警備がやられてちゃ話にならねぇぞ?」
「アレは修道者――れっきとした教会側の人間だからね。軍のような部外者じゃないから、目くじらを立てられないんだろう。むしろ、都合がよかったと喜べばいいんじゃないかな? 最悪、あの状態の士官軍人を差し向けられていたかもしれないんだよ?」
「どっちにしろ信者と構成員って分け隔てがあるはずなんだが・・・そうか。階段さえ抑えときゃ人数なんざ関係ねぇが、こんな悠長にはしてらんなかったかもな」
「そうだろう? それに信者にとって重要なのは、自分と同じ立場の人間が優遇されないことと、自分達の存在が認められてるって意識だけだからね。組織に貢献したいわけじゃない。ただ一方的に報酬を求めていると言ってもいいね。そういう意味じゃあの場面、私達を報酬の引換券にされなくてよかったと思わないかい? そんなことになったら、どうなっていたか・・・考えたくもないね」
考えるまでもなく、聞くだけで面倒なのが理解できた。
「よし、わかったぞ! 下の集会が始まる少し前、軍全体へ向けて招集がかかってる。正確には正規部隊全体への招集命令だな。警備が新兵なのはこれが理由みたいだ」
そうこうしているとベルが通達内容を解読できたようだ。
「全体に召集?」
「ああ、といっても。段階的に呼び込んでいるみたいで、ここの監視員は集会が始まった後に呼び出されてるな。集合場所は皇城の前? 私服で集まるように、とも書いてあるな」
「怪しいにもほどがあるな」
「軍人なんだ。制服ならともかく、私服にはなんの価値もないはずだが」
「下で教えただろ? 仕込みだ。軍人にこそ、価値がねぇのさ」
「取り囲んだら勝ち・・・ってやつか?」
「多分な。相手の意見を封殺するための外野を用意したかったんだろ。けど、そうすると―――」
「――皇城の前では既に。なにかが始まっている可能性が高いね?」
「急ぐしかねぇな」
より多くの意見だと見せかけるための動員・・・だとすると、現教会との正面衝突でもやらかしたか。
グレアムの爺さんは対策するっつってたけど、大丈夫なんだろうな?
意見の押し付け合いで負けるのが論外なのは当然として、その場で精神魔法を使われて1人でも寝返ったら終わりだぞ⁉ 持ち堪えてくれてりゃいいけどな‼
俺達は血相を変えて部屋からも、軍の施設からも飛び出した。
道中に人の気配はなく、誰かと鉢合わせることも、咎められることもなかった。
それは施設内だけでなく、町に出てからも同じだった。