作品タイトル不明
間隙の衝撃
なにが厄介かっつーとだな。
「ギルドへ入りそうな人間じゃなく・・・」
「入ってから狙われてるってこったろぉなぁ。申し訳なくなってくるぜ」
ということだ。
つまり、件の人物達は冒険者ギルドへ関わったせいで目を付けられ、なにかしらの接触を受け、結果として失踪までさせられちまったわけだ。
「けど、失踪者は戻って来たはずでしょう? そのマーテルってのは、どうしてるんです? 様子は? おかしなところとか・・・」
「それがな・・・マーテルはまだ失踪したままなんだ」
「失踪したまま? いつから?」
「半月ほど前だ」
「それって・・・」
「そうだ。他の失踪者達と時期がズレてやがるんだ。だから、もしかしたら――」
望福教とは別の事件? いや、だが・・・・・・。
「半月ってんならベルもそうですよ。この手帳の持ち主。そいつも、それぐらいから連絡が取れなくなったって、実家の執事が言ってました。最後にした話では、特別な指導だかがあるって話だったそうで」
「そのまま行方知れず、か」
「えぇ。しかも、軍の士官・・・正確には宿舎の士官ですが、そっちもごっそり居なくなってましたからね。組織的な犯行だって考えるべきでしょう」
「だが、軍人なら囲う意味もあるだろぉが、マーテルは・・・」
「確かにそこは疑問ですけど、デカい組織が動いてる隣で、別の組織が動いてるとは考えにくい」
「本当にそうか? そのデカい組織を隠れ蓑にってっ連中も――」
「そりゃぁ無くもないでしょうがね。逆に、なんでギルドへ絡んできてたのが望福教だってわかったんですか?」
「だからそれについては失踪者が出てだな」
「それで、他の被害者同様に同じ時期に帰って来たから・・・ですよね?」
「ああ、そうだ」
「ってことは、そのデカい組織である望福教がこの冒険者ギルドを狙ってるわけです。そこへ小さな別組織が手を出せば、どうなると思います?」
「そぉか、隠れ蓑にしようっつーデカい組織の不興を買って、目の敵にされちまうな」
「もちろん、それこそが目的の別組織がいる可能性もあるでしょうが、今は考慮しなくてもいいでしょう」
言ってて気付いたが、教会側からの干渉って線もあるか?
狙われてたから保護したとか、注意を引き付けるために協力してもらったとか。
後で確認だけでもしておくか。
「なんでまぁ、現状では望福教の仕業だと思って進めるしかないですよ」
「そぉだな。だが、マーテルが帰ってこない理由はわからねぇままだ。お前さんが言っていたように精神魔法で操るってんなら、帰した方がなにかと都合もいいだろうに」
「なんでもいいんで引っかかることとかないんですか? 特別な才能があるとか、一際精神魔法耐性が強いとか、実家が太いとか」
「そんなこと言われたってな。まだ子供だ。才能がどうのと言われてもな。事務作業を覚えるのは早かったぞ。人柄的にも、突出したところはなかった。むしろ、協調性を大事にしてる印象で周囲に気も配れるいい子だ。それに、事務方の魔法耐性なんぞ調べとるわけなかろう」
「それもそうなんですがね・・・」
「後は実家・・・と言っても出身になるか」
「なにかあるんですか?」
「いや、なにもないんだ。情報がな。というのも、マーテルはこの国の出身じゃなくてな」
「よく身元もわからないまま抱え込みましたね」
「お前さんらも大概だったろぉが! それに比べりゃぁ東の国出身ってだけなら可愛いもんだ‼ なにしろ無駄に批判もされねぇからな‼ なんの理由があったかまでは知らねぇけどよ。こっちに来たはいいものの、働く先がねぇって泣きそうになりながら困ってたんだぞ? それを放置なんざできるかってんだよ‼」
教官の面倒見がいいところは美徳にあたるが、まったく失礼な物言いだ。
俺達の身元はハッキリしてただろ。ハッキリしすぎてたかもしれねぇが。
ん? いや、待てよ?
「東の国出身って言いました?」
「そぉだが、それがどうした?」
「氏族だったりしませんか?」
「よくわかったな? 田舎の方ではそれが当たり前なんだと言ってたが」
「氏族名は⁉」
「確かトーだとか言ってたな。ああ、わかり辛かったか。”トー”だ。トー」
「それじゃねぇかよ‼‼」