軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間際の表明

「さっきから黙って聞いていれば、不遜な物言いですね。この僕を誰だと思っているんです? 未来の皇王ですよ? 蚊帳の外にされるわけがないでしょう?」

俺の迷いもなんのその。

ライザードがらしい切り口から話題を広げる。

「それに、貴方にしたってそうでしょう? その望福教とやらを持ち上げているのは貴方の父親なんですから、巻き込まれると考えた方が自然では?」

「残念ながら、そうはならねぇんだよ。俺も――お前もな・・・」

「なぜそうまで言い切れるんです?」

「権利がねぇからさ」

「権利?」

「ああ。俺は領主でもなければ、国の要職についてるわけでもねぇ。だから、声を上げたところで信用もされねぇし、注目もされねぇ。取り上げる価値がねぇんだよ。続く人間がいねぇからな。で、それはお前も同じだろ? お前は確かに皇族だが・・・皇族ってだけなら何人いる? お前の皇王位継承権は何位だ? 重視する必要があるのか?」

情勢って言葉にわかる通り、勢いが大事なんだ。

勢いを作るには流れが必要で、流れを作るのはいつだって数だ。

そうなりゃ行きつくところは権力を持つかどうか。そいつの言葉や態度で人が動くかどうかだ。

俺が声を掛けて動かせる人数なんざ高が知れてる上、こんな状況じゃ声を掛けたところで動いちゃくれねぇだろう。

だからこそ南の辺境伯を引き込みたかったんだが・・・敵、いや望福教の動きの方が速かった。

ライザードにしても同じだ。

皇族であることは違わないが、皇族だというだけなら他にいくらだっているんだ。

皇王様のご兄弟は既にこの世を去っておられるが、その子や孫は健在であらせられる。

全員を含めれば100人は超えるだろうし、皇族を血縁に持ち、皇王位の継承権を持つ公爵家まで含めればもっとだ。

そして結局は、その人の言葉にどれだけの人間が従うかっつー問題に戻る。

その点で言えば、ライザードは皇都貴族の当主以下だろう。

皇族の言葉に従うものは多いが、その中でもライザードの言葉に優先的に従う人間は極一部のはずだ。

こういうのは付き合いだからな。

幾らライザードからの信頼が厚くとも、それより長く付き合ってきた皇族が居れば、そちらを優先するのは明白だ。

そんな時に有力になるのが皇王位継承権の順位。

これが高ければ今後の立場を考えて、多少の不利や不義理をひっくり返せたかもしれねぇが、現状のライザードの順位は下から数えた方が早い可能性すらある。

それじゃぁ話にならねぇ。

「貴方は・・・本当にこの僕が蚊帳の外にされると思っていると?」

「間違いなくな。人がついてこねぇんじゃどうしようもねぇんだよ。現に、俺達は道具類と一緒に、監視も無い状況で馬車に押し込められてるだろ? 危険視されてりゃこんなことにはならねぇよ」

「であれば、エイラスはどうなんです? 彼女は商会頭の娘でしょう? 商会頭が動くのであれば、商会全体がそれに続くはず! それなのに彼女もここにいる。単にあの不審な男が能力不足なだけなのでは?」

「逆だ逆。アイツらは商会を動かさないために、エイラスをここに置いてるんだよ」

「私ってそんなに危ない?」

「私にはわかりませんわ! ですが、先生のおっしゃる事の方が正しい気がしますわ! だって年の功ですわ!」

俺達の会話に中てられるように、思考を引っ張られるエイラスにビューティーが適当なことを言う。

「商会ってのは単体じゃ勢力としてはそこまで大きくねぇっつーか、正確に言うなら、全体で見れば大きいが一枚岩になり切れねぇんだよ。商会同士は基本的に連盟や協定で繋がってる。だがそれは、お互いの利益を確保するためだ。一商会だけならそれほど問題にはならねぇ。店の1つに出禁を喰らったところで別の店に良きゃいいだけだろ? それと同じだ。だから、マンサ商会だけで見るならエイラスは大した駒じゃない」

そう。単体なら、だ。

「問題なのは、皇都の商会全体から敵として認識されること。もちろん全体を味方につけられるならそれに越したことはねぇが、エイラスに手を出すとなると、敵に回す可能性があるってことだ。商人は不利益に敏感だ。自分達の邪魔になると思った存在に、商人達は手を貸さない。それどころか金が回らないように干上がらせに来る。強請るって行為には、それだけの危険性がある。損切りが早いってのは、見切りをつけるのが早いってことでもあるからな」

上手くいった時の利益と、上手くいかなかったときの損益。これは誰しもが考えるが、やり手の商人になればなるほど、その線引きは早くなる。

望福教の頭脳も、それぐらいは知ってるらしい。

マンサ商会を引き込む利益と、商会全体を敵に回す不利益。

単体じゃ大して効果のない商会は結束が固く、かといって1つ取り込んだところで全体を釣れるとは限らない。なら、どっちを選ぶかは一目瞭然だ。

「だから、指をくわえてみていろと? 国が傾くかもしれない一大事を?」

「それを理解した上でどうするかを決めろって言っただろ? 関わるな、動くな、ただ見てろ、なんざ言ってねぇよ。関わるにしろ、動くにしろ、どう関わるのか、どう動くのかを考えるべきだ。自分1人の力がどの程度か見極めて、どこまで手を広げるか・・・・・・誰に頼るのか、誰に頼れないのか、誰を切り捨てるのか、それを決めなきゃいけねぇんだよ」

「それで貴方はどうするんです? 噂では教皇とも仲がいいんでしょう?」

よくもまぁそんなことまで知ってるなと思うが、答えはまだ・・・。

だから、

「決まってるだろ? 好きなように抗うさ」