軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

仲間の登場

「お戻りになったんですね。思っていたよりも遅いお帰りですが、なにかあったんですか?」

宿の受付前で振り返り、俺を迎えるのは隣の教室を担当している女教師のマルチナ。

それはいい。

それはいんだが・・・。

「そいつは誰だ?」

「それはこちらの台詞でもありませんか? 人に名前を聞くときは――」

「てめぇには聞いてねぇんだよ!」

「おっと、怖いですねぇ?」

「こちらは去年まで私達と同じ学園で教師をしていた先生ですよ? 私達にとっては先輩にあたりますね」

などと、笑ってぬかしやがる。

「というわけで、この方が先程までご説明させていただいた、私と一緒にこの子達を預かっているもう1人の先生です」

今度は名前も知らねぇ不審者に向かって俺の紹介まで。

「この宿は現在貸し切りだ。部外者には出て行ってもらおうか?」

「話、聞いてませんでした? 私も去年までは貴方と同じ立場だったんですよ? それがどうして部外者になるんですか?」

「てめぇが今、学園に所属してねぇからに決まってんだろ? ふざけてんのか?」

挑発するようなしゃべり方をする不審者は特徴のない優男。

あえて言うなら、男にしては珍しく、真っ直ぐ伸ばした長髪をうなじあたりで結んでるのが特徴か。

「お2人共。出来れば落ち着いていただきたいのですが、可能でしょうか? でなければ、お話が進みませんので」

割って入るマルチナは、続いて俺に問いかける。

「先輩を勝手に招き入れてしまったことは謝ります。ごめんなさい。ですが、貴方がこんなに遅くなるとは思っていなかったので・・・町の方でなにかありましたか? でしたら私もお手伝いしますよ。もちろん名前を読んでいただければ、ですけれど。それとも、必要な情報が手に入りませんでしたか? 私にわかることで良ければお話ししますよ?」

その表情を見て痛感する。

コイツは望福教の人間だ。

なぜならそこには――善意しかなかったからだ。

なにも悪いと思っていない表情だった。

当然のことをしているという、圧倒的な自信が垣間見える。

「どうしました? やっぱり先輩のことが気になりますか? だったら一度、席を外してもらうこともできますよ?」

「え~? 面倒じゃない? もうこのまま行っちゃおうよ~」

「それはダメです。この人には納得してもらわなければいけません」

「どうして~?」

「それはこの人が教祖様の言っていた人かもしれないからです」

「へぇ? それは興味深い」

教祖なんつー言葉まで出てきやがった。

これで、この不審者も望福教関連の人間ってことで確定だな。

・・・・・・それにしても、もっと警戒すべきだったか?

無理にでもマルチナとは距離を置いておけば―――・・・だが、そうしたところでなにができた?

ゴブリンの討伐自体は出来ただろうが、今の形より良くなったか?

いや、それはないだろう。

マルチナを遠ざけるってことは教室間の交流も遠ざけることになったはずだ。

そうなってりゃ、俺は死んだふりなんて出来るわけもなく、もっと俺がでしゃばる結果になってただろう。

子供達の成長を考えれば、今より良くなったとは到底思えねぇ。

それならこの状況の方がまだマシか。

「聞きたいことはいくつかあるが、行くって言ったな? そいつはどこへ、だ?」

「そんなのはもちろん皇都だよ? わからないはずがないよね?」

俺の質問に答えたのは男の方だ。

癪には障るが、まぁいい。

それより、だ。

「わからねぇはずがねぇってのはどういう意味だ?」

「だってマルチナちゃんが言うには、貴方は選ばれた人みたいだから」

「選ばれたってのはてめぇらの教祖様にか? 会ったことも見たこともねぇはずだがな?」

「そうだろうね? でも、その必要はないんだよ。だってさ、それが教えなんだもん」

当たり前のように男は言う。

疑う余地など、ありはしないと示すかのように。

「疑問があるなら私が答えます。だから是非、名前を呼んでください」

そんなやり取りをどう思ったのか、マルチナが押しを強める。

いったいなにがどうなってんだか・・・すっきりしねぇが、取り敢えずは生徒達をどうするつもりなのか。そこだけはハッキリさせとかねぇとな。