作品タイトル不明
合間の出来事
国の一大事って話をしている最中に、自分の生活を気にするのもどうかとは思うんだが、逆を言えば・・・それほど大きく、そして多くの人の生活に影響が出るってことでもある。
その末に得られるのはなんだ?
望福教は国の支えという強力な地盤が手に入る。
各地方へも時間をかけてとは言え進出できるだろう。
だが、御父上はどうだ?
行方不明者が戻ったことで軍の力は回復したかもしれねぇが・・・。
それだけじゃないか?
それとも、軍の力を回復させるために仕方なく?
行方不明者はまず間違いなく望福教の信者。
教祖の言葉なしでは軍に戻らなかっただろうからな。それを交換材料に?
いや、それもおかしな話だな。
軍の機能が完全に死んでいたならともかく、御父上は自分が軍中央に君臨することで皇都軍の存続を図った。
そしてそれは成功していたはずだ。
現に、軍力の低下で皇都が荒れた記憶はない。
なにより――なぜ一度、姿を消す必要があった?
なんでこの今になって反逆を起こした?
印象付け、心象操作・・・確かにその効果はあると思う。
思うが、それだけのためにそんなことをするか?
行方をくらませるってのは、信用を失う行為でもあるはずだ。
与えられた役目も果たさずに姿を消すわけだからな。
しかも、春先なんて暇な時期に、だ。
夏や秋の忙しい時期になら混乱を引き起こした上で、より強い効果を得られたんじゃないのか?
それほど失踪という事象の重さと、該当人物の発見、保護する行為の価値が違う。
なにかが引っかかる。
なにかが・・・・・・―――。
「今度はだんまりかい? いや、まあ・・・わからなくはないけどね。あたしだって聞いたときはあんたみたいに頭を抱えたもんさ」
不意に女の声が頭上から落ちてきて思考が止まる。
そういえば、ここは瓦礫町の秘密の一角だったな。
「あぁ、悪いな。色々と考えこんじまって」
「仕方ないよ。けど、どうするんだい? あんたは放蕩息子だって話だけど、皇都へは帰りにくいんじゃないかい? あれならこっちで居場所ぐらい用意できるよ? なんなら、領主様に口利きしたって構わないけど?」
「いや、どっちにしても帰らなきゃならねぇ理由がある。御父上の仕業だって言うんなら、責任の一端は俺にもあるだろうからな」
「親のしたことだろう? それのどこに、あんたの責任があるってのさ?」
「曲がりなりにもそれが家族ってもんだろ。それに―――・・・」
「それに?」
「加護教の教えは俺と相性が悪くてな。もしかしたら、それが原因なのかもしれねぇって・・・・・・・。あり得ねぇとは思うんだがなぁ・・・・・・絶対に、なんて切り捨てられねぇんだよ。そのあたりに、我ながら未練がましさを覚えるぜ」
俺の自嘲じみた言葉に女は首をかしげるが、それも仕方のねぇことだ。
俺に加護レベルが存在しねぇことを知ってるのは、北の辺境伯領民を除けば極一部だ。
もしかしたら・・・なんざ、自分で言うハメになるとはな。
未だに俺が冒険者であったなら、もしなんてもんはねぇと切り捨てられていただろうか?
御父上に、親心なんてもんはねぇと。
あるだけの情報をいただいた俺は、鼠の王を名乗る女に礼を言って瓦礫町から離れた。
それほど時間をかけたつもりはなかったが、もう既に日が傾きかけている。
早く宿に戻って・・・――それからどうしたもんか。
皇都での反逆のこと。
子供達にはどう説明するべきか。
そんなことに頭を働かせながら宿へ戻る頃には――事態が急変していた。