作品タイトル不明
態度にして
俺とエイラスの怪しいやり取りに目もくれず、捲し立ててくるのは女教師。
「失礼ですが! 貴方は責任というものをきちんと理解していますかッ⁉ あの場で子供達の命を守れるのは貴方しかいなかったんですよ⁉ なのに、思い付きで軽はずみな行動をとって、万が一のことになっていたら――‼」
言いたいことはわかる。
だが、
「その万が一になったのか?」
これが全てだ。
「それは―――・・・・・・」
そう。女教師も言葉に詰まる。
なぜなら、そうはならなかったからだ。
バロンは自分を責めるほどの失敗をした。ジェーンは無理をして怪我をした。それらは確かに事実だが、結果として大事には至らなかったし、親玉と思われるゴブリンの討伐にも成功している。
ライザードが率いる形での法撃支援とは言え、残りの生徒全員も戦闘には参加したし、その手ごたえに興奮し、満足もしている。
なにより、もしそうならなかったとしても、俺の怪我はすぐに回復していた。全員の注意が敵に向いた瞬間に岩から抜け出していたのも気づかれちゃいなかったし、最悪の場面が来たとしても、そこに介入することはできた。
「だとしても! せめて私には相談なりしてくれても良かったんじゃないですか⁉ そんなに頼りないですか⁉ 同じ新任の教師でしょう⁉ もっと協力してもいいじゃないですか‼ それを貴方は、1人で‼」
「それはあの程度でどうこうなることはねぇっつー信頼があってのことで・・・」
「そんなおためごかしは聞きたくありません‼ そんなのが嘘だっていうのはすぐにわかるんですよ‼ 私は女ですから、この教師という立場になる時、嫌というほど値踏みするような目で見られました。もっと言えば昔から、女としての価値を測るような目で見続けられてきているんです‼ でも、貴方のそれはもっと遠い・・・冷たい視線です。信頼なんて、ありえない‼‼」
鋭すぎる指摘に思わず固まる。
その通りだ。
俺はこの女教師を信頼なんざしちゃいねぇ。
ましてや使い道があるのかどうかすら気にしてねぇ。
俺が気にしてたのは、この女教師が”望福教と繋がってるか”だけだった。
だっておかしいだろう?
他は引っ張り出されたご隠居達ばっかの中、見覚えのある領地から採用された若い女。
なにかなきゃ嘘だ。
だからずっと疑っていた。
訝しんでいた。
どこかでボロを出すんじゃねぇかと、見張っていた。
ただ、そのことを悟らせるような行動をとったつもりはなかったんだが・・・どこで気付いた?
視線つっても、ほとんど見ないようにしてたはずなんだがな。
「どうしました⁉ 図星ですか⁉ そうですよね! 丸分りでしたからね‼ だって! 私のこと全然見ないじゃないですか‼ あんなので信頼なんて笑っちゃいますよ‼」
どうやら見なさ過ぎたのが原因らしい。
女は視線に敏感だとかアンナ達が言ってたが、見てねぇことまで見てるのかよ。
面倒くせぇな。
「あぁそうだな。信頼ってのは言葉の綾だ。俺が信頼してたのは俺が受け持つ生徒達の方・・・アンタじゃない。それは悪かったな」
「・・・・・・いいえ、私の方こそ。なにも出来なくて申し訳ありませんでした。貴方がライザード殿下を使えと言ってくれなければ、私は子供達を避難させるだけで終わっていたでしょう。最前線で戦うあの子達だけを置いて・・・そうせずにすんだのはその信頼のおかげですし、そうすることの意味は説明してくださったので理解も出来ました。関わりの薄い私や、私の生徒を信頼しろっていうのが難しいのはわかります。でも、これからは是非、協力していけたらって思うんです・・・・・・。ダメ、でしょうか?」
そんで急にしおらしくなるなよ。
対応に困るだろうが!
「まぁ、出来る限りで善処する」
「ありがとうございます! ところで、なんですけど」
「・・・なんだ?」
「私の名前ってご存じですか?」
「・・・・・・・・・」
「やっぱり、そんなことだろうと思いました」
またコロコロと態度を変えて、しかも今度はズイッと顔まで近づけてから、
「マルチナです。忘れないでくださいね」
鼻先数センチで名乗られる。
別にここまでしなくとも忘れねぇよ。とか思っていると・・・。
「貴族として複数の女性と関係を持つのは結構ですが、あまり扱いに差をつけると刺されるらしいですよ? 気を付けた方がいいでしょうね?」
などと、そういえば一部始終を隣で見ていたライザードにからかわれた。